はじめに
慶應義塾大学文学部では2年生から専攻に分かれます。
文学部で17個ある専攻の中で、英米文学専攻について知っている人は多くないですよね。
実はイギリス・アメリカの文学だけを学ぶ訳ではありません。
英米文学専攻は約80人が所属する専攻で、その大変さから英米文学、図書館情報、心理学の3つからなる「エグ専」に入っています。
今回はエグ専・英米文学専攻に所属する筆者がその実態に迫ります。
慶應義塾大学文学部英米文学専攻の3つの特徴
【英米文学専攻の特徴】①必修と試験がとても大変
英米文学専攻の特徴の1つ目は、必修と試験が大変であることです。
まず、単位を取得できないと卒業できない必修科目が英文学史、米文学史、現代英語学、英語史、基礎英文講読、古代中世英語学、音声学の7つととても多いです。
また、成績はほぼすべての科目で、レポートではなく試験によって決まります。
試験範囲がかなり広く、難易度も高いことが、英米文学専攻がエグいと言われる一因でしょう。
例えば「音声学」は、発音記号や、調音器官(発音する時に使う体の器官)について学ぶ授業ですが、あまり馴染みがありませんよね。
英語の発音記号をゼロから暗記しなければならず、また科学的な視点や正確さが求められるため、文系の学生にとっては苦手意識を持ちやすく大変です。
【英米文学専攻の特徴】②日本で唯一古代中世英語学を学べる
実は英語は昔から今のような形だったのではなく、古英語、中英語、近代英語、現代英語の順で変化してきました。
特に古英語、中英語は文法や単語が現代の英語と全く違います。
例えば、今現在使われている英語で名詞に性別はありませんが、古英語には男性名詞、女性名詞が存在しました。
英米文学専攻では、古代・中世に用いられていた英語の文法や発音を学ぶ古中世英語学という授業を日本で唯一受けることができます。
世界的に見ても、古代中世の英語を学べる大学は数えるほどしかなく貴重ですよ。
【英米文学専攻の特徴】③教材と卒論がすべて英語
英米文学専攻では、教材がほぼ全て洋書です。
まず英米文学専攻に入ったら、文学史上の主要作品の抜粋がまとまっているNorton Anthology という教科書を、イギリス文学とアメリカ文学のシリーズで計8冊購入します。
そして1冊1冊がかなり分厚いため、筆者の家の本棚のスペースの大半はこの8冊によって占められています。
また英米文学専攻では、他の専攻と異なり、卒論を日本語ではなく英語で卒論を書きます。
3年次に「アカデミックライティング」という論文を書く練習ができる授業が開講されているため、それを履修して英語での論文執筆に臨む人が多いですよ。
慶應義塾大学文学部英米文学専攻で学べること
英米文学専攻では、2年生で基礎を学んだ後に、3年次からゼミに所属し、教授の下で卒論執筆の準備を始めます。
ゼミは大きく分けてイギリス文学、アメリカ文学、言語学の3つの分野に分かれます。
【英米文学専攻で学ぶ内容】①イギリス文学
シャーロックホームズや不思議の国のアリス、ハリーポッターなどが有名なイギリス文学のゼミでは、ただ作品を読むだけではありません。
作品を通して、紀元10世紀頃から現在までのイギリスの膨大な歴史や社会と人々の関わりを見ることができます。
例えば、近代イギリス文学では、シェイクスピアの戯曲が有名ですよね。
シェイクスピアの四大悲劇の1つ『ハムレット』では、当時の宗教改革という社会背景が反映されており、当時の人々の「死後の世界」へのイメージが揺れ動いていたことを読み取ることができます。
また、現代のイギリス文学で有名なのは、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロです。
ドラマ化もされている代表作『わたしを離さないで』は、臓器提供という目的で生まれたクローン人間たちが、自分の生まれた環境に抗いながらも自身の存在価値を見出していく様子から、社会がいかに不条理なものであるかを窺うことができます。
これらのように、作品からそれぞれの時代背景を読み取れるところが面白いです。
【英米文学専攻で学ぶ内容】②アメリカ文学
1776年に独立したアメリカは歴史が比較的短いため、イギリスとは異なって文学作品の数がそこまで多くはありません。
アメリカ文学を通して、アメリカがイギリスから独立してから、現在の姿になるまでの歴史や文化などを学ぶことができます。
例えば、アメリカ文学の代表作品『白鯨』では、アメリカにおける捕鯨文化について、『アンクル・トムの小屋』では、アメリカの奴隷制度と南北戦争の背景について、『怒りの葡萄』では、1930年代という不況期における農民の苦しみについて読み取ることができます。
ここでも、一つの国の文学に着目して学ぶことで、教科書では分からないより深くリアルな知識を文学作品から得ることができて非常に面白いですよ。
【英米文学専攻で学ぶ内容】③言語学
英米文学専攻では言語学も学ぶことができます。英米文学専攻には、言語学を研究する英語学と英語史の2つのゼミが設置されています。
そもそも言語学とは、言語の成り立ちや文章の構造、語の構成などについて学ぶ学問です。
歴史言語学で英語史を学ぶことで、英語の文法に対する疑問を解消できるかもしれません。
冠詞の a とan は、母音から始まる単語のみ an (例:an apple)と学校で習いますよね。
これは、a (an) はもともと one であり、oneの音が弱まって an に、子音の前ではさらに n がなくなって a に なったという背景があります。
実際は an が先に出来て、その後 a が使われるようになったのですね。
言語学を学ぶと、身近な英語が実は〇〇だった!というような発見が沢山あって、英語に対する見方が180度変わりますよ。
慶應義塾大学文学部英米文学専攻の雰囲気
【英米文学専攻の雰囲気】①英語が得意な人が多い
やはりこの専攻では、英語で文献を読む機会が多いことから英語が得意な人が多いです。
また、ただ英語が得意なだけではなく、英語が好きな人も多く、大学に入学後もTOEICでの高得点の取得や英検1級を目指す人も周囲には多い印象を受けます。
【英米文学専攻の雰囲気】②友人から良い刺激を受けられる
英米文学専攻の良い点は友人から良い刺激を受けることができることだと筆者は思います。
これまでに紹介してきた通り、課題が多く試験も多い英米文学専攻だからこそ、1限から教室の前の席で受けるような真面目な学生が多く、そんな友人を見るたびに自分も頑張らなければと気が引き締まります。
筆者も専攻に入るまでそれほど読書が好きではありませんでしたが、専攻の中で仲良くなった友人が読書家であったことから、本を読むようになりました。
【英米文学専攻の雰囲気】③団結力が強い
エグいと言われる英米文学専攻の学生はとても団結力が強いです。
課題や試験勉強を友達と一緒にやるために、カフェなどに集まって勉強会を開いたり、オンラインで話しながら夜通し勉強することもあります。
また試験の過去問や試験に出る範囲のまとめプリントが先輩から代々受け継がれるなど、同期だけではなく先輩とのつながりも強いと言えます。
おわりに
いかがだったでしょうか。文学部の中でも大変と言われる英米文学専攻の実態について見てきました。
英米文学専攻という名前からのみでは想像できないことをここでは学ぶことができます。
ぜひ興味を持った人は文学部英米文学専攻を検討してみてください。