東大生は「教養学部前期課程」で何を学ぶ?内容と魅力を現役東大生が本音で解説!

はじめに

東京大学の1・2年生は全員、「文学部」「工学部」などの専門的な学問を学ぶ学部ではなく、「教養学部前期課程」に所属するって知っていますか?

この「前期課程」、本当に必要か疑問に思われることも。専門的な勉強を始めるのが遅れてしまいますからね……。

しかし、東大で1年半を過ごした後、「前期課程は必要だと思う?」という問いへの筆者の答えは間違いなく「YES!」です。

この記事では、そんな現役東大生が教養学部前期課程内容と魅力を詳しく解説します。

東大についての基礎知識

東大で過ごす4年間の流れ

まず、1・2年生は文系・理系合わせて6つの科類のいずれかに所属し、教養学部前期課程で学問の基礎となる教養を学びます。

そして、「進学選択」を経て各学部に分かれ、3・4年生は後期課程として専門的な学問に携わります。

「科類」とは?

東大「理三」「文一」という言葉を見聞きしたことはありますか?

これらが、いわゆる「科類」
「理三」は「理科三類」、「文一」は「文科一類」の略称ですね。

科類は前期課程の中でのざっくりしたジャンル分けのようなものです。

この科類ごとに、後期課程で進む学部がおおまかに想定されています。

対応関係はだいたい以下の表のとおりです。

    

科類によって、前期課程でどの分野を重点的に学ぶか異なります。

たとえば、法学部に進む人の多い文科一類では法学・政治学系、農学部や薬学部に進む人の多い理科二類では生物学系の比重が大きいです。

前期課程ではどんな授業を受けるの?

東大の文系・理系1年生の時間割

東大の前期課程の学生はどんな授業を受けるのでしょうか?

文系・理系1年生の前期(Sセメスター)の時間割を実際に見てみましょう!

   

   
(オレンジ色のコマは必修=あらかじめ受けると決められている科目です。)

理系の1年生は必修のコマが多いですね。

文系の1年生は、前期から自分で何を取るか決められる枠が比較的多く、「人類科学」や「社会システム工学」といった理系の授業も受けていることがわかります。

必修科目と選択科目

上で「必修」という言葉が出てきましたが、東大の授業科目は大きく必修科目選択科目に分けられます。

必修科目

科類ごとに初めから時間割に組み込まれている科目です。

東大の前期課程では、第二外国語・情報・体育・英語がこれにあたります。

理系科類の学生はさらに数学や力学などの科目も必修で、幅広い理系分野の基礎を学びます。

文系科類にも「社会」や「人文」といった大きい分野の指定枠はありますが、その中からどの授業を取るか自分で決められるところが理系とのちがいです。

選択科目

これこそ前期課程の醍醐味!
バラエティ豊かな授業の中から受けたいものを自由に選ぶことができます。

「後期課程の各学部での学びを試しに覗いてみよう!」という感覚ですね。

選択科目は「思想・芸術」・「国際・地域」・「人間・環境」などとジャンル分けされていて、科類ごとにどのジャンルの授業をどれだけ受けることが必要か決まっています。

文系科類の場合はもちろん文系ジャンルの割合が大きいのですが、同時に理系ジャンルの授業も受ける必要があるんです。

理系の場合もまた同様。

つまり、東大の1・2年生全員が、後期課程に進む前に文理問わず幅広いジャンルの授業を受けることになるということですね。

前期課程で受ける授業の形式

東大生は「教養を学ぶ」ためにどのような形の授業を受けているのでしょうか?

主な3つの授業形式を紹介します。

①単独の教授による講義形式

一貫して一人の先生が講義をする授業形式です。

というと、教授がただ淡々と専門分野の説明をするものと思われるかもしれません。

しかし、東大の前期課程では、講義を通して具体的な知識よりもその学問分野での考え方を重視して教えてくれる先生も多いです。

たとえば、筆者は古典文学の授業を受けて、作品の内容以上に「文学者はこんなふうに考えを深めていくんだ!」ということを学びました。

一人の先生の話を数カ月間じっくり聞くことで、その学問のベースとなる考え方を習得できるんですね。

②オムニバス形式

テーマを設け、それに関して複数名の先生が週替わりで講義をする形式です。

この形式の授業は、時に東大内部の先生だけでなく学外で活躍している人の話を聞くレアな体験もできるところが特徴です。

さまざまな専門を持つ人たちの話を聞くことで、一つのテーマをいろいろな角度から検討できます。

「こういうことを研究する分野もあるんだ」「この学部を出てこういう仕事に就けるんだ」などという発見もありますよ!

③ゼミ形式

30人以下の少人数で、学生も意見を出しあいながら実践的に学ぶ授業形式です。

東大の1年生は「初年次ゼミナール」という形で一度は必ずこの形式の授業を受けます。

この授業では、データ解析や文献調査などを通して、学生も一人ひとりが実際に手を動かして学問に関わります。

そのため、後期課程の各学部で行なわれる研究を現実的に体験できるというところがゼミ形式の授業の特徴です。

興味のある学部のゼミを受けると、その学部が自分に合っていそうか・今後もその学問を追究していきたいか考えるヒントになりますよ。

前期課程の魅力って?

筆者は東大で1年半を過ごした今、教養学部前期課程に大きく3つの魅力を感じています。

①多彩な授業と教授陣に出会える

東大の前期課程で開かれる授業の数は、毎学期400以上

「ジェンダー論」のように誰もが興味を持てる授業から万葉集を論ずるマニアックな授業まで多種多様です。

そして、それを教える教授陣も学問に対して人並外れた熱意を持っている人ばかり。

そんな先生たちによる盛りだくさんの授業をどの科類の人でも受けられるところが、前期課程の一つ目の魅力です。

これは、学生の数に対して教員の数が多い東大だからこそ実現できること。
(前期課程では、全体で約6640名の学生に対し350名を超える教員が授業に携わっています!)

さまざまな分野の専門家の話を聞いて、あらゆる学問に気軽に触れられるのはとても贅沢な時間です。

②やりたいことをじっくり探求できる

今、やりたいことや行きたい学部が決まらず不安に感じている高校生もいるでしょう。

しかし、心配要りません!

東大の前期課程では、やりたいことがはっきり決まっていない人も、いろいろな授業を受けて自分の興味を探っていくことができます。

一方、やりたいことがすでに決まっている人も、やはり幅広い授業を取る必要があります。

その中で新しい分野に関心を持ち、入学当初の考えとは別の学部に進むケースも。

東大に入って前期課程でやりたいことを見つける・やりたいことが変わっていく学生はとても多いんです。筆者もその一人。

前期課程は、自分が興味を持って取り組めるものじっくり探求する絶好の機会です。

③多様な考え方を学べる

東大生が学ぶのは具体的な知識だけ?

いいえ、そんなことはありません!

前期課程でむしろ重要なのは、学問の基礎となる考え方やものの見方を知ること。

ここでポイントとなるのが、学問によって考え方は異なるということです。

厳密さを極める数学者と、普遍性を追求する物理学者。
解釈を展開する文学者と、事実を突き詰める歴史学者。

一見似たものを扱っているようでも、考え方や着眼の仕方かなりちがうんです。

それぞれの学問の印象を掴みつつ多様な考え方を知ることで、物事をより深く、いろいろな角度から考える力がつきます。

そして、思考の引き出しを増やすことは、大学での勉強に限らずたくさんのことに役立つんです。

持っている引き出しの数が多いほど、いろいろな問題に対して柔軟に考えを広げられますからね!

おわりに

筆者が「東大の前期課程は必要だ!」と考える理由、伝わったでしょうか?

知識だけでない教養を身につけつつ、自分の興味をあれこれ模索できる教養学部前期課程。

「何か自分にとっていいものを探したいなあ」という気持ちでいろんなものを吸収すれば、必ず有意義な2年間になるはずです。

やりたいことが決まっている人もそうでない人も、世界がぐんと広がりますよ!

「ギンナン大学」とは呼ばせない!?現役東大生に聞く東大のリアル

2019.12.15

天才や有名人ばかりじゃない!現役東大生へのインタビューでわかる東大・東大生の”真の姿”とは?

2019.02.16



皆さんの意見を聞かせてください!
合格サプリWEBに関するアンケート