【高校物理】キルヒホッフの法則を基礎から徹底解説(例題・解説あり)

はじめに

キルヒホッフの法則は電気回路における最重要な性質です。

キルヒホッフの法則を使えるようになると、回路の問題で8割以上の得点率を狙えます。

そのため、物理が得意な人はもちろん、苦手な人もキルヒホッフの法則はきちんと理解してほしいです。

この記事では、キルヒホッフの法則の意味や使い方を丁寧に解説しています。

電磁気学を初めて勉強する人や、一度習ったけど苦手だという人にも、わかりやすいように工夫しました!

ぜひ最後まで読んでくださいね。

キルヒホッフの法則:第一・第二法則の意味とポイントをイメージとともに理解!

キルヒホッフの法則は電流回路における法則で、第一法則と第二法則の2つにわかれています。

実際の出題パターンでは、圧倒的に第二法則を使う場合が多いです。

まずはキルヒホッフの法則の意味と、回路のどの部分に用いるかについてを理解していきましょう!

キルヒホッフの第一法則:回路の交点と電流に注目

キルヒホッフの第一法則は電流に関する法則で、回路の交点に用います。

具体例から、キルヒホッフの第一法則を理解していきましょう。

回路の交点には、電流が流れ込む導線が3本電流が流れ出る導線が2本あり、それぞれの電流の大きさに注意すると、

(回路の交点に流れ込む電流の和)=1+2+2=5[A]

(回路の交点から流れ出る電流の和)=1+4=5[A]

となり、
(回路の交点に流れ込む電流の和)=(回路の交点から流れ出る電流の和)
が成立しています。これが「キルヒホッフの第一法則」です。

キルヒホッフの第一法則:交差点の車をイメージ

「記事の序盤から公式を紹介され、理解が追いつかないよ!」という人に向けて、この法則の考え方を紹介します。

電流を車、回路を道路、回路の交点を交差点として捉えてみると、法則をイメージしやすいかもしれません。

道路上を走行する車が交差点を通過する際に注目すると、一度交差点に入ってきた車は必ず交差点を出ていきますよね。

つまり交差点を通過する車について、
(交差点に入ってくる車の台数)=(交差点を抜けていく車の台数)
が成立しており、この状況はキルヒホッフの第一法則に似ていますね。

キルヒホッフの第二法則:閉回路についての理解が必須

キルヒホッフの第二法則を理解するためには「閉回路」について知っておく必要があるため、まずは閉回路について解説します。

閉回路とは、一周回り閉じた回路を意味します。

図を見てみましょう。1周回り閉じた回路はすべて閉回路になるので、①から③全てが閉回路です。

1つの回路図に対して、閉回路は1つとは限らないことに注意しましょう。

キルヒホッフの第二法則:閉回路と電圧に注目

キルヒホッフの第二法則は電圧に関する法則で、閉回路に用います。

注目した閉回路について
(起電力の和)=(電圧降下の和)
が成り立つことを意味します。

この記事では、起電力は電源電圧、電圧降下は抵抗・コンデンサー・コイル・誘導
起電力とします。

具体例から、キルヒホッフの第二法則を理解していきましょう。

図の閉回路について
$$(起電力の和)= 4[V]$$

$$(電圧降下の和)= 3×1+\frac{2}{2}=4[V]$$

となり、
(起電力の和)=(電圧降下の和)
が成立しています。これが「キルヒホッフの第二法則」です。

キルヒホッフの第二法則:山登りをイメージ

キルヒホッフの第二法則は、場所によって標高が変化する山を上り下りするイメージに似ています。

周回型のマラソンコースが、山の中にある状況をイメージしてみましょう。周回型のコースを閉回路コースの標高を電圧と捉えてください。

コースの途中で標高は変化しますが、1周したら同じ地点に戻ります。
よって、マラソンコースについて
(1周して上った高さ)=(1周して下った高さ)
30[m]=30[m]

が成立します。

(1周して上った高さ)を(起電力の和)、(1周して下った高さ)を(電圧降下の和)として見ることで、キルヒホッフの第二法則のイメージをつかめたのではないでしょうか。

キルヒホッフの第二法則の使い方3ステップ

先述したように、ほとんどの回路問題は、キルヒホッフの第二法則を用いることで解き進められます。

キルヒホッフの第二法則で立式するプロセスは、

STEP1 注目する閉回路を決める
STEP2 閉回路の内の各素子にかかる電圧を調べる
STEP3(起電力の和)=(電圧降下の和)の式を立てる

の3ステップに分かれています。

まず最初に、立式するために注目した閉回路を指定しましょう。

キルヒホッフの第二法則は全ての閉回路に成立するので、「正しい閉回路を選ぶことができるか」が特に大切です。

次に注目した閉回路内の、抵抗やコンデンサー、コイルなどのそれぞれの素子にかかる電圧を考えます。

最後に電圧の向きと電流の向きを揃えれば、キルヒホッフの第二法則を立式することができますね。

より詳しい式の立て方については、例題で確認していきましょう!

キルヒホッフの第二法則の確認問題

キルヒホッフの第二法則の例題1:抵抗のみの回路

問題 回路にキルヒホッフの法則を適用させ、電流I1を求めましょう。

解説
キルヒホッフの第二法則を用いる閉回路は、①となります。

回路①上には、電源電圧Vと抵抗R1があり、それぞれにかかる電圧を調べます。電流と電圧の向きを図の通り揃えて、キルヒホッフの第二法則を立式します。

(起電力の和)=(電圧降下の和)
$$V=I1R1$$
よって
答え $$I1=\frac{V}{R1}$$と求まります。

キルヒホッフの第二法則の例題2:コンデンサーを充電・放電する回路

問題 電源電圧V、抵抗R、コンデンサー(容量C、左の極板に溜まっている電荷Q)をつないだ回路があります。この回路に、キルヒホッフの第二法則を立式させましょう。

解説 この回路図では閉回路は1つしかないので、キルヒホッフの第二法則を立式する閉回路は迷わずに①となります。

回路①上の電源電圧、コンデンサー、抵抗にかかる電圧を調べ、キルヒホッフの第二法則を立式します。

コンデンサーにかかる電圧はQ/Cで求まることに注意して、

答え
キルヒホッフの第二法則:(起電力の和)=(電圧降下の和)
$$V=IR+\frac{Q}{C}$$となります。

キルヒホッフの第二法則の例題3:コンデンサーの電流の向き

次は立式したキルヒホッフの第二法則を用いて、コンデンサーに流れる電流の向きを考えてみましょう。

(1)コンデンサーに電荷が溜まっていない状態(Q=0)から、スイッチ1を入れてコンデンサーを充電します。スイッチを入れた直後に、コンデンサーに流れる電流の向きと大きさを求めましょう。

解説

キルヒホッフの第二法則 Q=0に注目します。
$$V=IR+\frac{0}{C}$$
$$I=\frac{V}{R}$$
となり、電流の向きは図のようになるとわかります。

(2)(1)で充電したコンデンサー(Q=CV)から、スイッチ1を切り、スイッチ2を入れてコンデンサーを放電します。このスイッチを切り替えた瞬間に、コンデンサーに流れる電流の向きを求めましょう。

キルヒホッフの第二法則 V=0、Q=CVに注目
$$0=IR+\frac{CV}{C}$$
$$I=\frac{-V}{R}$$
となり、充電時とは逆向きの電流が流れるとわかります。

キルヒホッフの第二法則を学ぶ前は、コンデンサーの充電・放電時の電流の向きを暗記していた人もいたと思います。

しかし、キルヒホッフの第二法則とその例題を学んだことで、コンデンサーの充電・放電時の電流の向きについて理解できましたね。

キルヒホッフの第二法則の例題4:コイルがある回路

問題 直流電源電圧V、抵抗R、コイル(自己インダクタンスL)をつないだ回路において、キルヒホッフの第二法則を立式させましょう。ただし、時間⊿tの間に、コイルに流れる電流の変化量を⊿Iとします。

解説
この回路図も閉回路は1つしかないので、キルヒホッフの第二法則を立式する閉回路は①となります。

回路①上の電源電圧、コイル、抵抗にかかる電圧を調べ、キルヒホッフの第二法則を立式します。

コイルにかかる電圧は$$-L\frac{⊿I}{⊿t}$$で求まることに注意して、
答え キルヒホッフの第二法則:(起電力の和)=(電圧降下の和)
$$V=IR+L\frac{⊿I}{⊿t}$$ となります。

キルヒホッフの第二法則の例題5:コイルの電流の向き

次は、コイルを含む回路で立式したキルヒホッフの第二法則を用いて、コイルに流れる電流の向きについて考察してみましょう。

(1)電流が流れていない(I=0)の回路に電源電圧をつないだ瞬間に流れる電流を求めましょう。

電源を入れた瞬間、コイルで電源電圧の大きさだけ電圧降下
$$L\frac{⊿I}{⊿t}
=V$$が生じます。

そのため、キルヒホッフの第二法則
$$V=IR+V$$となり$$I=0$$
つまり、電流は流れません。

(2)回路に電流が流れている(I=V/R)からスイッチを切り替え、電源を切った瞬間に流れる電流を求めましょう。

コイルの性質によって、スイッチを切り替えた瞬間、直前までと同じ向きに電流がながれるように、コイルに電圧が生じます。

 

キルヒホッフの第二法則:
$$0=IR+(-V)$$となり、$$I=\frac{V}{R}$$となります。
よって、スイッチを切る直前と同じ向きに、電流が流れます。

コイルに流れる電流の向きについて考察しました。コイルをつないだ回路では、キルヒホッフの第二法則だけでなく、コイルの性質も含めて考える必要があります。

「電流の変化を妨げようと、電圧が生じる」というコイルの性質と、キルヒホッフの第二法則を用いて、回路に流れる電流の向きについて理解できましたね。

おわりに

キルヒホッフの第一法則は電流の関係式であること、キルヒホッフの第二法則は電圧の関係式であることを理解できたでしょうか。

回路の問題を解くときは、キルヒホッフの第二法則が有効であり、キルヒホッフの第二法則を立式する3ステップとポイントを例題を通して確認しましたね。

回路の問題に限らず、物理は問題を解くことで理解が進むことが多いので、さらに問題演習を行いましょう。

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