はじめに:英語長文でわからない単語が出てきたら、どうすればいい?
大学入試では2〜3ページくらいの長文を読解する問題が出題されますが、長文を読んでいるときにわからない単語が出てくるとイライラしますよね。
最初は簡単な文章だなぁと思っていたのに、わからない単語が増えてくるにつれて徐々に文章の意味がわからなくなる……という経験をした方は多いのではないでしょうか。
そんなみなさんのために、この記事では英語長文でわからない単語が出たときの対処法を具体的に解説します!
英語長文を読んでいて難解な英単語にイライラしている人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね〜。
目次
英語長文でわからない単語が出たときの対処法
単語がわからないと英語の長文を読めなくなるのか?
はじめに、単語の理解度と英語の長文の理解度との関連性について解説しておきます。
早稲田大学の神長は、文章の理解度を決定づける要因として「語彙量」と「ワーキングメモリ」を挙げています。
こちらのサイトによると、ワーキングメモリとは、短い間に情報を保持し、整理・処理する能力のことです。文章を読んで理解するときの、瞬発的な情報処理能力と考えればいいですね。
語彙量が多い人ほど文章をストレスなく読めるのですが、仮に語彙量が少なくともワーキングメモリが大きい人は文章を適切に理解できる、と神長は指摘しています(神長、p.3)。
つまり、英語の長文を理解する上で必ずしも卓越した語彙力は必要ではなく、情報処理の能力が高ければ、わからない単語が出てきても文章を理解できるのです。
ではどうすれば、英語長文の情報処理能力を高められるのでしょうか?
英語長文でわからない単語が出たときの対処法①:冒頭をじっくり読む
長文を理解する上で、卓越した語彙力は必ずしも必要ではありません。英語の情報を処理する能力が備わっていれば、わからない単語があっても長文を理解できるのです。
この事実を踏まえた上で、以下では英語長文でわからない単語が出たときの対処法を説明します。
「自分には語彙力がないから……」と諦めず、最後まで目を通してくださいね。
わからない単語に躓いたとき、最初にやってほしいのが「文章の冒頭部分をじっくり読む」ということです。
当たり前ですが、英文を読む上で最も大事なのは一つ一つの単語の理解ではなく、英文全体の内容の理解です。
評論でも小説でも、英文全体の内容の概要は、大体冒頭に示されます。ですから、冒頭をじっくりと読めば、最低限の文章の内容は理解できるのです。
最低限文章の内容を理解できれば、わからない単語があっても前後の内容から意味・ニュアンスを推測しやすくなります。早速実践してみましょう。
英文全体の概要から単語の意味を推測する具体例
以下の英文を見てください。とある科学技術史の論文からの抜粋です。
At the risk of doing some violence to the historian’s craft, it is probably fair to say that most serious historical treatment of technology falls into one of two broad traditions: intellectual and artifactual accounts that have their origins in classical approaches in the history of science, or in biographical and organizational accounts that count business and economic history as their nearest scholarly kin.
お前は東大か京大の和訳問題か!
と言いたくなるほど一文が長いですが、実はこの英文は論文冒頭の一文です。よく見ると、この文章のテーマがちゃんと書かれてあります。
この一文からざっくりと文章のテーマを読み取ると、
「技術史に関してはいろんな研究があるけれど、科学の歴史の中の古典的なアプローチに根差す知的なものと、経済やビジネスの歴史に根差す人為的なものがある」
となります。 “falls into one of two broad traditions”, “intellectual”, “artifactual”, “science”, “business” くらいが分かれば、十分理解できる内容ですね。
この文中で少しレベルの高い単語は “account” ですが、文章の内容を理解できれば推測可能です。
技術史の研究は「知的なもの」と「人為的なもの」に分けられると言っているのですから、 “account” は技術についての「解釈」くらいの意味だと考えられます。
推測した上で、“account” の実際の意味を調べてみましょう。
辞書には「説明」という意味が掲載されています。文脈的に、この文の “account” の意味は「説明」になりますね。
「解釈」とは少し違いますが、文章を理解する上では差し支えないでしょう。
英語長文でわからない単語が出たときの対処法②:単語の語幹・語尾に注目する
とはいえ、文章の概要だけでは推測できない単語もありますよね。
そんなときは、単語の語幹や語尾に注目して意味を推測してみましょう。
具体例をお見せします。みなさん、 “devotee” という名詞の意味をご存知ですか?
“vote” (投票する)とか “devote” (献身する)とかなら見たことあるけど、 “devotee” は初めて見る……という方が多いのではないでしょうか。
実際、この単語は英検1級以上のレベルなので、知らないのも無理はありません。
しかし、この単語自体を知らなくても、語尾から意味を推測することはできます。
語尾の “-ee” に注目してください。みなさんの知っている単語で、この “-ee” という語尾を持つ単語が1つあります。
そう、“employee” ですね。「従業員」という意味の単語です。
“employ” が「雇用する」で、“employee” が「従業員」なのですから、語尾の “-ee” は「〜の人」というニュアンスを持っていることがわかります。
となると、 “devote” が「献身する」で “-ee” が「〜人」なので、 “devotee” は「献身する人=何かに没頭する人」だと推測できますね。
実際の “devotee” の意味は「愛好者・熱愛者・信者」なので、ほぼ正解です。
語彙力が高くなくても、語幹や語尾から単語の持つ情報を適切に処理できれば、自然と単語を理解できるので、落ち着いて意味を推測するようにしましょう。
英語長文でわからない単語が出たときの対処法③:直前と直後の文に注目する
全体の概要を掴んでも、語幹と語尾に注目しても意味を推測できない単語に出会った場合は、直前と直後の文に注目するようにしましょう。
以下の英文を見てください。
「技術史に関してはいろんな研究があるけれど、科学の歴史の中の古典的なアプローチに根差す知的なものと、経済やビジネスの歴史に根差す人為的なものがある」という趣旨で書かれた論文の続きです。
Devotees of the first tradition have largely followed Edwin T. Layton’s lead and see technology as knowledge possessed by a “mirror-image twin” to the scientific community (Layton 1972).
Adherents to the second tradition have focused primarily on entrepreneurship and technological change in the context of economic organizations.
2文目冒頭の “adherent” は難しい単語ですよね。 “devotee” と同じく、この単語も英検1級以上のレベルです。
しかも、 “devotee” と違って類推の手がかりが少ない。受験で出題されれば、多くの受験生が困惑するでしょうね。
でも、この難解な単語も1文目と2文目との関連を考えれば、自然と意味を推測できます。
1文目の冒頭と2文目の冒頭を見てください。 “Devotees of the first tradition” と “Adherents to the second tradition” という2つの表現は、明らかに対応していますよね。
となると、 “adherent” は “devotee” (愛好者・熱愛者・信者)とほぼ同義なのではないか、と推測できます。
“adherent” を辞書で調べてみると、「味方・支持者・信奉者」という意味が載っていました。大体合っていますね。
今回のようなわかりやすい対応関係が全ての文章にあるわけではありませんが、直前と直後の文の表現は関連している場合が多いので、困ったらぜひチェックしてみてくださいね。
おわりに:英語長文でわからない単語が出てきても、焦る必要はない。
いかがでしたか?
この記事では、英語の長文でわからない単語が出てきた時の対処法について紹介してきました。
英文の理解度は、語彙量だけでは決まりません。語彙量が不足していても、英文の情報処理能力が高ければ、十分に英文を理解できるのです。
わからない単語が出てきたら、この記事で紹介した3つのポイント
- 文章全体の概要を理解する
- 語幹・語尾に注目する
- 直前・直後の文に注目する
を意識して、適切に英文の情報を処理してみてくださいね。
それでは!!
- 神長信幸「文章理解の個人差の研究——ワーキングメモリと言語知識の個人差の研究」早稲田大学大学院教育学研究科
- Edward W. Constant “The Social Locus of Technological Practice: Community, System, or Organization?,” in The Social Construction of Technological Systems: New Directions in the Sociology and History of Technology (The MIT Press, 2012), p.217.