はじめに
こんにちは。まず皆さんに聞きたいのは、「地理」という科目にどんなイメージを持っていますか?山脈の名前を覚えて、ケッペンの気候区分を覚えて……。分野の話をすれば他にもホイットルセー農牧業区分、大地形、小地形、工業、貿易、宗教・民族などたくさんありますね。
「暗記」を地理という科目のメインとして考えているのであれば、共通テスト地理点数は絶対に伸びません!
大前提として、共通テスト地理Bは「暗記する」科目ではなく、「考える」科目ということを頭にいれてこの記事を読んで下さいね。
目次
センター試験で話題になったムーミン問題からわかる「地理B」
地理は「暗記」じゃなくて「思考」といきなり言われても困りますよね。ここで、2018年のセンター試験で非常に話題となった問題を見てみましょう。
その問題を簡単に説明すると「ムーミン」と「ちいさなバイキングビッケ」という物語の写真を見て、それぞれ「フィンランド」と「ノルウェー」のどちらの国の物語かを判別するという問題です。(これは問題の一部で試験はもう一つ判別する事項がありました。)詳しく問題を知りたい人は問題を検索して見てください。画像検索で簡単に見つかると思います。
センター試験が終わったあと、Twitterは大炎上。答えは「ムーミン」が「フィンランド」なのですが、フィンランドのお偉いさんが「ムーミンがフィンランドと知らないのは我々の努力不足」と言う始末。いや、あなたが謝る必要ないでしょ……。
この記事の筆者もこの試験を受けていたのですが、会場で「良問じゃん!」と解いていました。(ムーミンは名前しか知らず、ビッケは聞いたことすらありませんでした。)
なぜなら、地理的思考力を事前に身につけ、問題の意図を把握し、冷静に解答できていたからです。地理的思考力を持っていない人がTwitter等で騒いでいるわけです。
さて、気になる人も多いと思うので、ここで話題のムーミン問題の解説をしておきましょう。
「ムーミン」と「ちいさなバイキングビッケ」という物語はそれぞれ写真で提示されていました。その写真をある程度詳しく説明すると以下のようになります。(他にももう少し読み取れる情報があります。)
ムーミン:低平な土地の針葉樹林の中でムーミン2人(?)が遊んでる。
ちいさなバイキングビッケ:船の前に少年少女が立っている。
ムーミンに詳しくて、「ムーミン」→「フィンランド」とできた人はラッキーですが、私を含め多くの人は違うと思います。でも、文字情報にするとポイントが見えてくるのではないでしょうか。
ムーミンの写真から判断するのであれば低平で針葉樹がポイント。針葉樹林帯となっているのはフィンランドです。これで答えが簡単に出てしまいます。
しかし、この解答をする人は稀だと思います。私もこの解き方をしたわけではありません。私個人の見解としてはセンター試験作成者は以下のような解答方法を想定していたのではないでしょうか。
ビッケの写真には船が写っています。「フィンランド」と「ノルウェー」のどちらが船と結びつくかを考えます。船ということは注目するのは海(と川)ですよね。海について考えて見ましょう。
フィンランド周囲の海域は冬になると凍結してしまいます。しかし、ノルウェー北部の海域は冬になっても凍結することはありません。なぜなら北大西洋海流という暖流のおかげで港が凍結しないからです。ちなみにこのような冬でも凍結しない港のことを不凍港と言います。
したがって、船の写っている「ちいさなバイキングビッケ」はノルウェーとなるわけです。
具体的な問題を使って「考える」ということを示しました。今回の問題で「覚えること」は「北大西洋海流が暖流」、考えることは「北大西洋海流のおかげでノルウェーは不凍港」ということです。
考えることは船から不凍港を思いつけるかどうか。これには訓練が必要になります。しかも何気ない写真から必要なデータを読みとる訓練も必要になってきます。
これらのことができるようになると共通テスト地理Bに取り組むことがどんどん楽しくなり、成績もぐんぐん伸びていきます。この記事を読んで、共通テスト地理Bの勉強法を習得し、地理を楽しみ、成績を上げていってくださいね!
共通テスト地理Bの勉強法
共通テスト地理Bで大切なのは「問題から情報を適切に読み取り、すでに持っている知識と結びつけて、よく考える」こと。
つまり、大きくは3つの力を身につける必要があると言うことです。3つの知識とは
- 地理に関する最低限の知識
- 情報を読み取る力
- 地理的思考力
です。これらの知識を最終的に身につけていかないと言うことをしっかり念頭に置いて共通テスト地理Bを学習してください。
では、抽象的な話ばかりでは分からないと思うので具体的な勉強法の話に移りましょう。
【共通テスト地理Bの勉強法①】最低限の知識を覚える
いくら共通テスト地理Bが「考える」科目であるといっても、知識は必要です。覚えなければならない山脈の名前・川の名前、世界の民族とそこで信仰されている宗教。
たしかに、覚えることは盛りだくさんのように見えますが、日本史や世界史よりは「考える」ことがメインであり、覚えることは少ないのでそれくらいは頑張りましょう。
ただし、がむしゃらに教科書や参考書の暗記をすれば良いわけではありません。
共通テスト地理Bで出題される「必要最低限の」知識を身につければ良いですし、これらの暗記は一問一答形式ではなく、「体系的に」覚えていくべきです。
この記事で何冊か参考書と使い方を紹介していきますが、それ以外は不要です。教科書・地図帳・データブックなど一般的に地理の学習において必要といわれるものは一旦脇に置いておきましょう。(一応これらの使い方も最後に説明します。)
まず、共通テスト地理Bの学習に取り組むと決めた時にやって欲しい参考書は『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』です。この本は映像授業で有名なスタディサプリの地理講師が書かれている本です。
『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』には共通テスト地理Bを解くにあたって最低限の知識と考え方が詰まっています。身近な内容と関連付けてくれる導入があるので各分野の内容に入りやすくなっています。
また、覚えなければならない最低限の知識が明確化され、整理されているので、がむしゃらに覚えていくのではなく、必要なことを体系的に覚えていくことができます。
『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』の詳しい内容は下記リンクの参考書レビューを見て下さい。
これに加えて、もう1冊、知識を身につけるのに良い参考書があります。同じく映像授業で有名なスタディサプリの地理講師の鈴木達人先生が書かれている本で、『パターン別整理 間違えやすい地理B用語をセットで覚える本(鈴木達人)』です。
『パターン別整理 間違えやすい地理B用語をセットで覚える本(鈴木達人)』は、共通テスト地理Bに必要な単語やデータを網羅しているだけではありません。「楯状地と卓状地」など間違えやすい・覚えにくい単語をきちんと整理してくれています。
『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』に取り組んだ上で知識を身につけると「最低限必要な知識」+「覚えておくと良い知識」がダブルで身につくので、共通テスト地理Bに必要な知識がほぼ習得できます。
『パターン別整理 間違えやすい地理B用語をセットで覚える本(鈴木達人)』で身につけた語句の知識や統計と問題文で与えられるデータを駆使して問題を解いていきましょう。問題文からデータを読み取り、考える練習は共通テスト地理Bの過去問を使って行います。
上記2冊に取り組んで効率的・体系的に共通テスト地理Bで必要な知識を身につけましょう。
【共通テスト地理Bの勉強法②】地理的思考力を養う
基本的な地理的思考力は『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』に取り組み、共通テスト地理Bの過去問に取り組んで身につけます。過去問の取り組みが共通テスト地理Bの得点に直結してくるので、過去問の取り組み方を間違えないようにしましょう。
センター地理B(共通テスト)の過去問を徹底的に研究しよう
センター試験(共通テスト)地理Bの過去問以外には取り組まない
本屋に行って地理の参考書コーナーを見渡せば、穴埋め式の参考書、一問一答、各予備校の出しているセンター試験攻略の参考書や問題集など様々な本がありますね。
しかしながら、共通テスト地理Bで9割とるのに必要なことはセンター試験(共通テスト)過去問の研究だけなんです。センター地理Bで9割取れるか取れないかというのは過去問の研究度合いによって左右されます。
さらに、市販の問題集に取り組むと、地理的思考力の低下を招き、共通テストの得点が下がります。市販の問題集には一切手を触れないことが大切です。
市販の問題集に取り組んではいけない理由は、共通テストとは問題の解き方が全く違うからです。
共通テストの受験者が身につけなければならない力は、センター試験地理Bの解き方やセンター試験地理Bを解くのに必要な知識。これらを身につけて、本番の共通テスト地理Bで9割以上取るのが目標です。
学校や予備校で受験する・受験させられるマーク模試の復習も絶対にしてはいけません。高校や予備校の先生はうるさいほど「復習しろ」と言います。私自身も「復習すること」は大事だと思いますが、共通テスト地理Bだけは例外なんです。悪い考え方や知識が身についてしまいますのでマーク模試の復習はしないように。
ただし、模試を受験すること自体には意味があります。共通テスト地理Bは全体で約35問ありますが、徹底的に60分間考え続けるという練習にはなります。時間配分の練習として模試は活用しましょう。(もちろん復習はしない。)
具体的なセンター試験(共通テスト)地理B過去問の活用法
具体的にやるべき問題を示すと、2006年以降のセンター試験過去問(本試験)だけ。
2006年以降の過去問に限定する理由は、センター試験地理Bの出題範囲が2006年から変わっているからです。2006年以降の問題であれば十分に現行範囲のためのセンター過去問研究を行うことができます。
これだけだと少ないイメージがありますが、共通テストまでに「2006年以降のセンター試験過去問(本試験)の全ての問題を」最低でも3周(4周が理想)して下さい。
過去問を解く際に注意して欲しいのは、「じっくり60分間考え抜く」ということです。
分からないから飛ばしたり、なんとなく答えをだして先に進んでいくと、過去問を1年分解くのに30分くらいしかかからないと思います。
しかし、模試と同様、しっかりと考え抜いて答えを出す訓練をしましょう。何度も言っていますが、共通テスト地理Bは地理的思考力を身に付けることが鍵です。自分で考えなければ地理的思考力は身につきません。最初は全然分からないことがあると思いますが、諦めずに考え抜きましょう。
過去問に取り組む理由は「考え方を身に付ける」ため。まずは、過去問に出てきた地名や統計は完璧に覚えましょう。それに加えて、過去問を解くにあたって使用した「考え方」も覚えていきましょう。共通テストは「同じ考え方」を使う問題は毎年繰り返し出題されます。
先ほども言いましたが、他の参考書は共通テストと大幅に異なっているので取り組む必要はありません。もし、演習量が足りないと感じたらセンター試験(共通テスト)地理Bの追試験を新しいものから順に解くようにしましょう。
目安はセンター試験(共通テスト)地理Bの過去問を8月中に1周目を、11月までに3周目までを終わらせる。
最初は伸び悩むかも知れませんが、過去問を徹底研究することで共通テストの点数はグッと上がります。同じ問題を繰り返し、その問題を覚える勢いで取り組みましょう。
センター試験(共通テスト)地理Bの過去問の解説は使わない
はっきり言わせてもらうと、各予備校が出版しているセンター試験地理Bの過去問の解説は内容が薄くて物足りません。例えば、答えを出すにあたって、データを駆使して消去法を使う問題であっても、予備校の解説は知識を無駄に使って、一瞬で答えを出すような解説を書いています。
もっとわかりやすく言えば、どう考えても1ページ以上使わないと解説できない問題を、市販の過去問集では1行だけで解説を終わらせています。結果、受験生は解説が少なく、「???」となってしまいます。
そこで、市販の過去問集の解説は使い物にならないので、『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』と『パターン別整理 間違えやすい地理B用語をセットで覚える本(鈴木達人)』の著者である鈴木達人先生が個人的に書かれているセンター試験地理の解説サイト「センター試験徹底攻略! たつじん地理」を参考にしましょう。
このサイトでは多いときに1問あたり2ページ以上の解説を掲載しています。その問題を解くにあたって必要な知識、考え方、関連知識が書いてあり非常に有意義です。
特に、受験生が苦戦する問題文からの情報(データ)の読み取り方や、問題文からの情報と自分の知識を組み合わせてどのように問題を考えるのかということが詳しく書かれています。
過去問を自分で考えて解き、やり直しをする時にセンター試験地理Bを解くプロの考え方を学べるので、地理的思考力がどんどん身についていきます。センター試験地理の解説はこのサイトを参考にしましょう。
センター試験地理は過去問を何周も解くのでコピーするのが大変だと思います。センター試験地理の過去問周はそこまで高くないので、3冊ほど購入し、直接書き込んで使用するのをオススメします。解説は上記サイトを見て欲しいので、解説部分は捨ててOKです。
共通テスト地理B 地誌分野の勉強法
共通テスト地理Bは系統地理を十分に学習すれば、9割得点することができます。ただし、9割から満点に引き上げる際に必要になる知識が「地誌」の範囲です。地誌は世界の各地域の細かい知識を覚えていく必要はあります。
もちろん、地誌の内容は系統地理と絡めて体系的に覚えていく必要がありますが、がむしゃらに分厚い参考書を開いて覚えていくのは非効率です。「何が必要な知識なのか」を判断して覚えていきましょう。
センター試験(共通テスト)地理Aの過去問を活用する
皆さんはセンター試験地理Aの問題をみたことがありあますか? センター試験地理Aとセンター試験地理Bとは問題の内容が全然違います。
しかし、センター試験地理Aの過去問はセンター試験地理Bの地誌分野の学習をするにあたり、非常に良い問題集です。この記事で過去問以外に取り組んではいけないというのはお話ししました。ですので、地誌の学習をするにあたって、市販の問題集ではなく、センター試験地理Aの過去問を使って下さい。
共通テスト地理Bが思考力を問うている問題構成であるのに対して、共通テスト地理Aは知識がメインの問題構成となっています。共通テスト地理Aを受験する人にとっては暗記がメインの科目です。共通テスト地理Bを受験する人は共通テスト地理Aが知識メインであることを逆手にとって、練習問題、知識を補完するために用いていきましょう。
地誌分野を攻略する共通テスト地理Bの参考書
共通テスト地理Bの学習をするにあたって必要な参考書は『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』と『パターン別整理 間違えやすい地理B用語をセットで覚える本(鈴木達人)』だけなのですが、どうしてもセンター試験地理B(地理A)の過去問を解いていると分からない部分が出てきてしまいます。
非常に良い参考書なのですが、問題点は網羅性がないこと。つまり、共通テスト地理Bで満点を取るには少し知識面としてこの2冊の参考書では少し物足りないということです。
『直前30日で9割とれる 鈴木達人のセンター地理B(鈴木達人)』と『パターン別整理 間違えやすい地理B用語をセットで覚える本(鈴木達人)』で足りない知識を埋め合わせる為に是非使って欲しいのは、『村瀬の地理Bをはじめからていねいに 地誌編(村瀬哲史)』です。これは1度絶版になりましたが、圧倒的な人気のため、再販されたという過去があるほど有名で人気な参考書です。
『村瀬の地理Bをはじめからていねいに 地誌編(村瀬哲史)』はセンター試験地理B(地理A)の過去問を解いていて分からない部分が出てきた時に使いましょう。地誌学習のメインの参考書として用いるのではなく、辞書的に使うことが大切です。
優先順位はセンター試験地理Bの本試験の過去問、センター試験地理Bの追試験の過去問、センター試験地理Aの本試験の過去問、センター試験地理Aの追試験の過去問の順であることを忘れないで下さい。
教科書・地図帳・データブックの活用
最後に一般的によく使われる教科書・地図帳・データブックの使い方を紹介しておきます。学校や予備校の先生は、地理の授業で必ず地図帳をもってこいと言うのではないでしょうか。
自分の学校では、地理の授業で4冊程参考書を持っていかされた記憶があります。しかし、メインはセンター試験地理の過去問なので、これら副教材の使い方は気をつけるようにしましょう。
教科書
教科書は隙間時間に読んで地理的な思考方法を知るために用いるのがベスト。机に座って必死に暗記するのではなく、電車の中や寝る前などの隙間時間を活用しましょう。
知識や考え方を補完していく読み物として使えます。教科書を読んで「へぇー」と思えることがあればそれでOK。教科書を読むことの優先度は低く考えて大丈夫です。
地図帳
地図帳はわからない地域を調べるのはもちろんですが、もっとも良い使い方は共通テストの直前期に、油性ペンでどんどん書き込んで自分だけのオリジナル参考書を地図帳に作り上げること。この地域はどういう特徴があるのかというのを地図帳にまとめ、地図帳をみて復習しましょう。
ちなみに、センター試験地理Bを解いていたり、参考書を見ていて、わからない地名が出てきた時は地図帳を開くのではなく、スマートフォンの地図アプリ(google mapなど)を使用して検索するのがオススメです。
地図帳を開いた方が勉強になりそうですが、地図帳を持ち歩くのは大変ですし、地図帳で目的の場所を発見するのは時間がかかって、非効率です。学校などではできないかもしれませんが、自分で学習するときには検索機能を使いましょう。
データブック
センター試験の過去問を解いているとどうしても古い統計になってしまいます。もちろん、過去問を解くときには、その時の統計をもとにして解答して行く必要があるわけですが、皆さんが受験する時には最新(2年前程度)の統計が使用されます。
データブックの使い方について詳しく知りたい人はこちらの記事を見てください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。共通テスト地理Bで9割を得点するには徹底したセンター試験地理Bの過去問研究、共通テスト地理Bで9割から満点を目指すには過去問研究に加えた地誌攻略が必要であることが理解してもらえたら嬉しいです。
センター試験地理Bの過去問をやり込んで、是非共通テスト地理Bで9割から満点という高得点を獲得して下さいね。
東大地理の受験を考えている人はこちらの記事をチェック!