はじめに
みなさんはどうやって文化史の勉強をしていますか?
文化史は似たような情報が多くて紛らわしい上、覚えることも多岐に渡っていて勉強するのがとても大変ですよね。頑張って覚えた知識も、時間が経つと記憶がごちゃまぜになって問題が解けなくなっていたり……。
しかし、「三要素分類法」という方法を使うことで暗記の効率は格段に上がり、さらに試験本番の誤答リスクを減らすことができるのです。この方法は私が高校3年生の夏休みの過去問研究中に考案したものです。私はこれを実践して文化史をマスターし、それ以降文化史が私の大事な得点源になりました。
この記事では、文化史を効率よくマスターできる「三要素分類法」とはどのようなものか紹介します!
目次
情報を整理しないとこんな危険が!!
突然ですが、ここで問題です。
危険なごちゃ混ぜ覚えをしていないかチェックしてみましょう!
例題
院政期に女性によって執筆された『 』は、藤原道長を賛美的に描いた編年体の歴史物語であり、別名「世継物語」とも呼ばれる。 『 』に入るのは?
パッと答えられましたか?
正解は『栄花物語』です。「藤原道長を賛美的に描いた」という部分や「女性によって執筆された」という部分から判断できるでしょう。
ここで『大鏡』や『今鏡』と答えてしまった人は注意が必要です。ごちゃまぜ覚えをしているせいで、覚えたはずの知識をうまく引っ張り出せていない可能性があります。
ごちゃ混ぜ覚えの危険性
情報を整理せずにそのまま暗記することには、以下のようなデメリットがあります。
- 暗記効率が悪く、頭の中で情報が混乱してしまう
- 解答するときに知識を思い出しづらい
そのため、せっかく勉強したことを試験本番で生かすことができない危険性があるんです。
そこで私がみなさんに紹介したいのが「三要素分類法」です。
「三要素分類法」とは
「三要素分類法」とは、覚える事柄にまつわる情報を「基本情報」・「詳しい内容」・「時代背景」の3種類に分類して扱うという方法です。
それぞれが何を指すのか、詳しく見ていきましょう。
①基本情報
名称や制作者名
絵画であれば作品名や作者名、寺院であれば名称と建立した人の名前など
例①「栄花物語」「赤染衛門」
例②「唐獅子図屏風」「狩野永徳」
②詳しい内容
作品の見た目や内容、使われた表現技法など
絵画であれば描かれているものや表現技法、寺院であれば所在地や建物の見た目、文学作品であれば話の概要など
例① 「道長賛美」「編年体の歴史物語」「別名『世継物語』」
例② 「豪華な金箔と2匹の唐獅子」「濃絵の障壁画」
③時代背景
その作品が属する〇〇文化、作られた背景にある時代の流れや、当時の社会情勢との関連
絵画や儒教の〇〇派や師弟関係、「時の将軍〇〇に規制された」など
例① 「院政期」「宮廷勤めの女流作家の興り」
例② 「桃山文化」「狩野派、元信の孫」「信長・秀吉に仕える」
どうでしょうか? 分類自体はそこまで難しくはないですよね。
「こんなことをやったところでどう変わるの?」と思う人もいるかと思います。
しかし、この「三要素分類法」は用語を覚える時と、問題を解く時の両方で役立つのです。
「三要素分類法」のメリット
「三要素分類法」には、主に以下の4つのメリットがあります。
メリット1:暗記するときに混乱しない
歴史用語にはパッと見で意味を掴むのが難しいものも多いですよね。
分類しながら暗記を進めることで、頭の中の用語知識を自分のわかりやすい形で整理することができます。そうすることでごちゃまぜ覚えを予防し、同時に暗記のスピードも上げることができます。
メリット2:用語集や資料集を開く癖がつく
実際の問題ではよく作品の「②詳しい内容」がヒントとして与えられます。たとえば絵画であれば、絵の見た目を言葉で与えられて、そこから作者名などを導き出すといった具合です。
「②詳しい内容」を意識しだすと、普段はあまり開かない日本史用語集や、資料集の写真を自然と気にしつつ見るようになります。参考書を頻繁に開く癖をつけることで、同じ勉強でもより多くの知識を吸収できるようになります。
メリット3:出題者の意図を瞬時に判断できる
出題者は設問文の中で必ずヒントを与えてくれます。これらのヒントを暗記した知識の三要素にあてはめることで、自然と答えるべき事柄が見えてきます。
普段から三要素に分類する癖をつけておくことで、出題者の与えてくれた解法の道筋にスムーズに乗れるようになります。
メリット4:ど忘れしても芋づる式で思い出せる
もしせっかく覚えた用語をど忘れしてしまっても、その用語と結びついた残り2要素を思い出せれば芋づる式に記憶を取り戻せます。
分類しながら暗記することで、とれたはずの問題を落とさないよう予防できます。
用語を覚えるときにちょっと工夫することでこれだけの良いことがあるんです!
では次に、「三要素分類法」を使ってどのように勉強するか説明していきます。
「三要素分類法」を使った勉強法
「三要素分類法」を使った勉強に特別な参考書やノートは必要ありません。みなさんの今までの勉強にそのままプラスするだけです。
「分類法」と言っても、「すべての情報を書き出して3つに分類する」などということは行ないません。
重要なのは「情報を3種類に分類して扱う」ということです。
3ステップで行なう三要素分類法
ステップ1:教科書(または講義型参考書)を何度も読み込む
まずは教科書を読み込んで文化全体の流れを把握し、重点的に「③時代背景」を理解しましょう。同時代に活動した作家や絵師、師弟関係や時の権力者との関係性なども同時に頭に入れます。
ステップ2:用語集で「①基本情報」のインプット
次に用語集と教科書で作品の「①基本情報」を覚えましょう。ステップ1で頭に入れた「③時代背景」と作品名や作者名をリンクさせます。
ステップ3:資料集、用語集で「②詳しい内容」を肉付け
次に資料集の写真や用語集の説明をじっくりと読みましょう。こうしてステップ2までで覚えた作品の情報に知識の肉付けを行ないます。丁寧に三要素をリンクさせるよう心がけて情報を頭に入れるのがポイントです。
ステップ3まで終わったら、1〜3を何度も繰り返しましょう。
こうすることで、今まではばらばらに覚えていた知識をきちんと整理して理解し、それぞれの情報をリンクさせた状態にできます。
しっかりとした知識の結びつけを行うことで、一回一回の勉強の内容はとても濃いものにあります。時間をかけながらでも濃い勉強をすることで、結果的には少ない時間で効率よく勉強を進められます。
中途半端な勉強をしていると、知識を完璧に頭に入れるためには参考書やノートを何周も見直さなくてはいけませんからね。
実際の設問ではどう解く?
ではここで、「三要素分類法」を使ってどう問題を解くか実践してみましょう!
まずは情報を整理
例として、尾形光琳の『燕子花図屏風』を取り上げます。
まずは三要素分類法にしたがって情報を整理しましょう。
①基本情報
作者:尾形光琳
作品名:『燕子花図屏風』
②詳しい内容
・大和絵を発展させた装飾画の屏風で、金色の背景にカキツバタが何輪も律動的に描かれている。
・『伊勢物語』内のカキツバタの花の描写がモチーフ。
③時代背景
・元禄文化に属する。
・光琳は俵屋宗達に大いに影響を受け、装飾画を大成し「琳派」を形成した。
このように三要素に分類できますね。
例題と解き方
俵屋宗達の流れを引く絵師の書いた、『伊勢物語』の第9段の東下りの八つ橋の脇で花を見て読まれた和歌をモチーフにする、総金地の六曲一双屏風の名前を答えよ。
さて、この問題を順を追って解いていきます。
まずは問題文を分解しましょう。
問題文の中には作成者のくれたヒントがたくさん含まれています。三要素を意識して分解してみると
「俵屋宗達の流れを引く」→③時代背景
「『伊勢物語』の~をモチーフにする」→②詳しい内容
「総金地の六曲一双屏風」→②詳しい内容
という風になります。つまりこの問題は三要素の「②詳しい内容」と「③時代背景」をヒントに、「①基本情報」の作品名を答えさせる問題であると分かりました。
そこまで分かればあとはスムーズです。
与えられたヒントのうち2つ以上を知っていれば『燕子花図屏風』の名前を導き出せるでしょう。
このような解法は当たり前なようでもあり、このプロセスを実際に試験中に行っている人も少なくないと思います。
しかし、普段から三要素に分類するよう意識している人は、自然と頭の中で情報を三要素に整理して理解する癖がついています。そうすることで他の人と比べてよりスムーズにに問題を解き、確実に得点を積み重ねることができるのです。
おわりに
「三要素分類法」を使うことで文化史の勉強効率は大幅にアップします。
みなさんもぜひ「三要素分類法」によって文化史でライバルに大きな差をつけましょう!