はじめに:現代文の小説で安定して点数を取るために
みなさん、現代文の小説は得意ですか?
小説って、評論以上に点数が安定しにくい分野ですよね。
「登場人物の気持ちなんて、その人にしかわからないでしょ」
「小説の読み方なんて、人それぞれでいいじゃないか」
と、卑屈になっている人も多いと思います。
でも実は、小説の読み方にはちゃんとした「型」があり、その型に沿って読めば点数が安定するのです。
以下の記事で紹介した小説の読み方の「型」を踏まえて、この記事ではより読解の質を高めるために、実際に出題された問題を演習していきます!
小説の問題で満点を取れるようになりたい方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね〜。
目次
実践的読解としての、現代文小説の問題演習
具体的な問題の演習に入る前に、問題演習の重要性と、演習の際の注意事項を簡単にまとめておきます。
現代文小説の問題演習の重要性
小説の読解力を上げる上で一番効率がいいのが問題演習です。
問題文を一読しただけだと、その小説の概略しか頭に入りません。主人公は〇〇という性格で、△△という出来事があって、××という心情になった、というように。
もちろん概略を把握するのは重要なのですが、「××という心情になった」というのはあくまで結果で、その結果に至るまでには様々な小さな変化があったはずです。
小説で出題される問題は、この小さな変化の読解を試すものになっています。
ですから、小説の問題演習をすれば、自然と主人公の心情の小さな変化を追って、結末をより詳細に理解できるようになります。
というわけで、小説の読解力を伸ばしたい方は、ぜひじっくりと問題演習してみてくださいね。
現代文小説の問題を演習する際に注意すべきこと
次に、小説の問題演習を行う際に注意すべきことを2点説明します。
小説の問題は、大別して
- 〜とは、どういうことか、説明せよ
- 〜の理由を説明せよ
に分けられます。
小説の問題演習の注意点①:「どういうことか、説明せよ」の場合
「どういうことか、説明せよ」の場合は、傍線部を具体的に言い換えることを意識しましょう。
例えば傍線部の内容が、
「他のみんなとは違って、彼は笑っていなかった」
なら、「彼」のどの点が「他のみんな」と違っていて、どんな背景事情があったから「笑っていなかった」のかを説明すれば良いのです。
小説の問題演習の注意点②:「理由を説明せよ」の場合
「理由を説明せよ」の場合、問われているのは人間の行動・態度の理由となる心情です。
プラスの意味合いを持つ行動・態度ならプラスの心情を、マイナスの意味合いを持つ行動・態度ならマイナスの心情を答えることになります。
ただし問題によっては、その人がその心情を抱いた背景事情まで説明させるケースもあるので、「なぜこの心情を抱いたのか」を意識しつつ問題を解くようにしましょう。
現代文の小説の具体的な読み方
小説の問題を解くとき、第一に意識すべきは以下の2点です。
- 「どういうことか説明せよ」という問題は、傍線部を具体的に言い換えて説明する
- 「理由を説明せよ」という問題は、人間の行動・態度の理由となる心情を、背景事情を意識しながら説明する
この2点を意識して、2020年度センター試験(現在の大学入試共通テスト)本試験で実際に出題された小説の問題を解いていきましょう。
この小説の問題文は、以下の記事で解説しているので、未読の方はこちらから先に読んでください。
こちらから無料でダウンロードできるので、ぜひ皆さんも読んでみてくださいね。
現代文の小説の具体的な読み方①:各論の読解(問2)
問1は語彙の問題なので、問2から解説していきます。問2の問題は以下の通りです。
はい出ました。「どういうことか、説明せよ」の問題です。傍線部を具体的に言い換えていきましょう。
この傍線部Aは、意味内容で分けると3つに区分できます。
- そうした、暗い、望みのない明け暮れにも
- 私は凝と蹲ったまま、
- 妻と一緒に過ごした月日を回想することが多かった
①「暗い、望みのない明け暮れ」とは、戦争のことですね。
②は、その戦争の状況に向き合うことなく……という態度を指し示しています。
「にも」という接続詞は、この場合「戦争がひどくなっているにもかかわらず」という意味内容を含んでいますからね。
③はそのままストレートに解釈しましょう。「私」は妻のことをずっと考えていたわけです。
以上3つの意味内容を踏まえると、答えとなる選択肢は……
④ですね。
②と⑤は、一番わかりやすい「妻のことを考えていた」という要素を含んでいないので論外です。
①と③には、妻への回想という要素が含まれていますが、どちらも戦争の状況に「私」が向き合っていると書いてあるので誤りです。
傍線部の3つの要素を正しく含んでいるのは④だけなので、④が正解になりますね。
現代文の小説の具体的な読み方②:各論の読解(問3)
問3の内容は以下の通りです。
わかりにくい問題文ですが、この問題は「理由を説明せよ」のパターンで対処できます。「私」の妻の態度に対する理由となる心情が問われているからです。
この文章は、45行目から雰囲気が大きく変化します。平和で明るい雰囲気が、戦争によって徐々に暗く寂しい雰囲気になっていくのです。
この傍線部が引かれてある43行目は、まさにその変化の過渡期にあります。従って、「何か笑いきれないもの」とは、戦争の暗い影を意味しているはずです。
というわけで、戦争に対する不安を含んでいる選択肢を探すと……
②になりますね。他の選択肢は、戦争を原因とする不安が示されていないので論外です。比較的簡単な問題と言えるでしょう。
現代文の小説の具体的な読み方③:各論の読解(問4)
問4は、以下のような内容になっています。
この問題も、問3と同様に「理由を説明せよ」パターンです。行動の理由として態度を問うていますからね。
直前の文章までで、魚芳は善良で礼儀正しい好青年として紹介されています。したがって、傍線部の場面でもその礼儀正しさが態度に出ているはずです。
また、傍線部の中に「彼はかしこまった『まま』」とあるので、魚芳は何かの出来事によって態度を変更したわけではないことが伺えます。
以上の情報から選択肢を絞り込むと……
⑤が正解になりますね。
①と④は態度が変わったことが書かれてありますし、②と③からは礼儀正しさが伺えません。
⑤は、一番ストレートに魚芳の礼儀正しさを表しているので、この選択肢が正解になります。
現代文の小説の具体的な読み方④:本論全体の読解(問5)
問5は、問4までとは違って本文全体の内容に関する問題になっています。
この問題は、要するに「本文全体における『私』の心情の変化をまとめろ」ということを問われています。
ですから、一読したときに確認した本文全体の流れを思い出し、その流れに沿った選択肢を選べばいいのです。
思い出してみましょう。この本文の結論は、
「戦争によって、魚芳や妻・『私』達の幸せな日々は一変し、魚芳も妻もなくなってしまった」
でしたね。
この結論が最もストレートに反映されている選択肢は……
そう、②ですね。
戦争によって命が失われていったことを明確に述べているのは②だけなので、すぐに判断できますね。
現代文の小説の具体的な読み方④:本論全体の読解(問6)
最後の問6も、問5と同様に本文全体の内容を扱う問題になっています。
「この文章の表現として適当でないものを選べ」と言われていますので、本文全体の内容を表す上で不適当な表現を探しましょう。
1つはすぐ見つかりますね。③です。
この文章は、戦争によって厳しくなっていく世相を表現しているのですから、「ユーモラス」な表現は不適当ですよね。
もう1つは見つけづらいですが、みなさんお分かりでしょうか。
答えは⑥です。一見正しそうですが、厳しくなっているのは「私」の生活ではなくて妻の病状ですので、注意しましょう。
おわりに:読み方を理解すれば、小説はもっと読みやすくなる
いかがでしたか?
この記事では、現代文の実践的な読解力を向上させるために、実際に現代文で出題された問題を解いていきました。
問題演習をじっくりと積み重ねることで、小説を精密に読む力が養われます。
小説の読み方の型を身につけたら、時間を見つけてたくさん演習してくださいね。
それでは!!