はじめに:現代文の評論が読めない人のために
みなさん、現代文の評論を読むのは得意ですか?
現代文の評論って、小説と違って具体的なイメージが掴みづらい文章が多いので、「なんかわけわかんねぇ……」ってなる人も多いですよね。
現代文の評論を読んで「そもそも訳がわからない」となる人は、まず評論の文章の読み方を理解する必要があります。
評論には評論独自の文章の読み方があり、小説と同じように読んではならないからです。
そこでこの記事では、評論を読むのが苦手な人向けに、評論独自の文章を読むときの最後の壁である「論拠の理解」についてわかりやすく解説します。
評論が苦手で仕方がない、手っ取り早く現代文の点数を伸ばしたいという人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね〜!
目次
現代文の評論の読み方の大まかな流れ
現代文の評論の読み方を具体的に説明する前に、読み方全体の大まかな流れを確認しておきましょう。
現代文の評論の読み方の大まかな流れ①:文章と設問、どっちが先?
現代文の問題に関して、よく「文章と設問、どっちを先に読めばいいですか?」という質問を受けることがあります。
文章と設問のどちらを先に読むべきかについては色々な意見がありますが、私は文章を先に読んだ方がいいと考えています。
理由は単純で、設問を先に読んでも、設問の内容が理解できなくて不安になるだけだからです。
理解できない設問文を読んで不安になるよりは、正しく読めばある程度理解できる文章を先に読んだ上で設問を読む方が精神的に安定します。
それに、仮に文章を読まずに設問の内容を理解できたとしても、その理解は本質的な理解にはなり得ません。
設問の内容は、必ず文章の内容全体を踏まえて作られているのですから、文章を読まないと設問の本質は理解できませんよね。
というわけで、設問よりも文章を先に読むのを(個人的には)オススメします。
現代文の評論の読み方の大まかな流れ②:文章を読む順番は?
現代文の文章は、設問よりも先に読むべきであることがわかりました。ここからは、現代文の文章の読み方の流れを大まかに解説します。
評論の文章は、基本的には最初から最後まで真っ直ぐ読めば理解できるように書かれています。
ただ、評論には必ずテーマと結論が用意されているので、先にテーマと結論を読み取ってから文章全体を読むと文章の内容を理解しやすくなります。
テーマは最初の段落に、結論は最後の段落に書かれてあるので、文章の最初と最後(テーマと結論)を読んでから残りの段落(論拠)を読む、という流れになりますね(以下の図を見てください)。
以下の2つの記事では、テーマと結論の理解の仕方について説明してきました。
そこでこの記事では、評論読解の応用編として、本文の論拠を理解する方法について具体的に解説していきます!
現代文の評論の読み方【応用編:論拠を理解する】
以下では、令和2年度(2020年度)大学入試センター試験追試験の国語第1問の問題を題材に、評論文における論拠の理解の仕方を説明します。
こちらから問題・解答をダウンロードできるので、みなさんもぜひ読んでみてくださいね。
現代文の評論の読み方【論拠を理解する】①:論拠の読み方
論拠の部分を読む前に、本文のテーマと結論を確認しておきましょう。
本文のテーマは、
「ヒューマノイドロボットの必要性について」で、
本文の結論は
「ヒューマノイドロボットは必要である。構成論的に用いられるヒューマノイドロボットは、普通のロボットと違って人間を知るための科学的なツールとなり、ロボットの新たな方向性となるから」
でしたね。
本文の論拠はこの結論の根拠になります。
したがって、論拠は結論の主張にツッコミを入れていくと見つけやすくなります。
「なんでやねん。なんでお前(筆者)そんな結論出してるねん」と。
ツッコミは、結論の主張に「なぜ」もしくは「どのようにして」を問いかけると入れやすくなります。
この本文の結論に対しては、
- 「構成論的に用いられる」とはどのように用いることなのか
- なぜヒューマノイドロボットは「人間を知るための科学的なツール」となり、「ロボットの新たな方向性」となるのか
という2つのツッコミが入れられるでしょう。
結論に対して入れたツッコミに答えるつもりで本文を読むと、論拠を自然に見つけられるようになります。早速読んでいきましょう!
現代文の評論の読み方【論拠を理解する】②:2段落目〜4段落目
ヒューマノイドロボットの必要性について、筆者は大きく2点の論拠を出していますが、1点目の重要度は小さく、2点目の方に論拠の力点が置かれています。
その1点目の論拠が、2段落目〜4段落目に書かれてあります。読んでいきましょう。
3段落目に、
「ロボットが人間らしい形をしていれば、……自分がどのように対処するかというノウハウを、直接ロボットに投影することができるかもしれない」
と書かれてあります。
未知の状況に遭遇したときに、ロボットが人間の形をしていると、ロボットの操作がしやすくなる、と筆者は主張しているのです。
この主張が、ヒューマノイドロボットの必要性の1点目の根拠になるのですが、なぜこの根拠を筆者は重要視していないのでしょうか?
5段落の最初の文を見てください。
「外見が人間そっくりのアンドロイドには……労働の代替という意味の他に」という一節があります。
ここで、最終段落の1文目と2文目を見てみましょう。
「これまで開発されてきた産業用ロボットは……労働を代行する、その対象でしかなかった」と書かれてあります。
あれ?と思った方、鋭いですね。
そう、未知の状況において有利に働くという「労働の代替」としてのヒューマノイドロボットの特徴は、従来の産業用ロボットの特徴と本質的に変わらないのです。
だから、従来のロボットを乗り越える新たなロボットであるヒューマノイドロボットの必要性を論じる根拠としては不十分になる訳です。
さて、それでは2点目の根拠に移りましょう。
現代文の評論の読み方【論拠を理解する】③:5段落目〜12段落目
5段落目の冒頭に、
「外観が人間そっくりのロボットには、このような接触や応対といった労働の代替という意味の他に、非常に重要な役割がある」
と書かれてあるので、ここから話が変わることがわかりますね。筆者は次にどのような論拠を立ててヒューマノイドロボットの必要性を論じるのでしょうか……?
6段落目に、ある生物の機構を調べるためにその生物そっくりのロボットを作る研究として「構成論的研究」が紹介されています。
「構成論的研究がどの点で役に立つのか?」と考えて読み進めていくと、11段落目に
「人間のある機能を備えたヒューマノイドを作り、それを人間と同じ環境において、さまざまな振る舞いを作り込む」
「作り込む過程で、当初は考えていなかった、人間が持つ環境に関するある特徴を利用しないとその振る舞いが実現できないことがわかれば、ロボットを作ることを通して人間の振る舞いの原理を知ることができる」
と書かれてあります。要するに、人間の機構を理解する上でヒューマノイドロボットが役に立つということですね。
というわけで、
「ヒューマノイドロボットは必要である。構成論的に用いられるヒューマノイドロボットは、普通のロボットと違って人間を知るための科学的なツールとなり、ロボットの新たな方向性となるから」
という結論の根拠になる部分がわかりました。
筆者の結論の根拠(論拠)は
「人間が持っている特徴を備えたヒューマノイドロボットを作れば、その作成過程で人間のふるまいを知ることができるから」
ですね!
おわりに:テーマを理解すれば、もっと楽に現代文の評論を読める
いかがでしたか?
この記事では、現代文の評論を読む上で最後の壁となる「論拠の理解」について、具体例を交えながら解説してきました。
テーマと結論を理解した上で、その結論の根拠を質問する気持ちで論拠の部分を自然に理解できます。
論拠まで理解できれば、現代文の評論の読解は完璧です。ぜひこのレベルに挑戦してみてくださいね。
それでは!!