【知れば知るほど面白い!?】免疫システムをわかりやすく解説

はじめに

生物基礎や生物で学ぶ免疫分野ですが、覚えることが多く、ややこしくて苦手という方も多いのではないでしょうか。

今回は、免疫システムを基本から解説します。

ワクチンアレルギーに免疫が関わっているように、免疫システムは意外と身近なものです。内容理解だけでなく、皆さんに免疫の面白さを実感してもらえたら嬉しく思います。

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2020.09.25

「免疫」とは

「免疫」とは、自分と自分でないものを見分け、自分でないものを攻撃するシステムとされています。

体内の免疫システムは、主に

  1. 物理的・化学的防御
  2. 自然免疫
  3. 獲得免疫

3段階に分けられ、この順番に生体防御が働きます。

そしてそれぞれの段階で病原体の侵入・増殖を抑えきれなかった場合に、次の段階の免疫応答が誘導されていきます。

免疫システム1:物理的・化学的防御

物理的・化学的防御は、既に備わっている体の構造による生体防御です。

物理的防御には、主に皮膚繊毛が関わっています。

例えば皮膚の一番外側の角質層は、死細胞が何層も重なっているため細菌やウイルスが感染できません。

また気管や鼻腔の上皮細胞上にある繊毛は、異物を外へと押し出すことで病原体の侵入を防いでいます。

一方、化学的防御には、粘液などが関わっています。

鼻水などに代表される粘液は、病原体を分解する酵素やタンパク質を含みます。

また皮脂や汗も、弱酸性であることで微生物の繁殖を防いでおり、化学的防御の一種です。

免疫システム2:自然免疫

自然免疫は非特異的にすぐ起こる

物理的・化学的防御をくぐり抜け、病原体が体内に侵入した際にすぐに起こるのが自然免疫です。

自然免疫の特徴は、病原体の種類に関係なく働く(=非特異的)点にあります。

自然免疫を担うのは、食細胞と呼ばれる好中球マクロファージ樹状細胞NK細胞の4つです。

自然免疫を担う細胞①:食細胞

食細胞と呼ばれる好中球・マクロファージ・樹状細胞は、病原体そのものを認識し、貪食(※1)により病原体を排除します。

それぞれの食細胞の特徴は異なるため注意しましょう。

※1 貪食:病原体や死細胞を細胞膜で包み込み、細胞内に取り入れる働き。貪食されたものは細胞内で分解される。食作用とも言う。

好中球

普段は血管内におり、病原体の侵入がわかると感染組織へ移動(=遊走)します。

食細胞の中では最も数が多く短命です。死んだ好中球はマクロファージに貪食されます。

好中球は貪食に特化した細胞と覚えておきましょう。

マクロファージ

血管にいるときは単球と呼ばれ、感染組織に移動して分化するとマクロファージと呼ばれるようになります。

また貪食以外の重要な役割の1つに、サイトカイン(※2))の放出による免疫応答の増強があります。

※2 サイトカイン:細胞から分泌され、シグナル分子として働くタンパク質の総称。サイトカインが免疫細胞を感染組織に誘導し、攻撃力を高めるよう活性化する。

樹状細胞

貪食を行うものの、病原体の殺傷能力は弱めです。

主な役割は、貪食した病原体を分解し、獲得免疫で働くT細胞に抗原提示(※3)することです。

※3 抗原提示:抗原(病原体の断片)を細胞表面上に出し、相手の細胞に病原体の情報を伝えること。T細胞は樹状細胞が提示した抗原をT細胞受容体で認識する。

自然免疫を担う細胞②:NK細胞

NK細胞は食細胞と異なり、病原体そのものではなく感染細胞を攻撃します。貪食は行いません。

その代わりに、感染細胞を細胞死(アポトーシス(※4))させる物質を持っています。

感染細胞を見つけると、アポトーシスを誘導し、感染細胞から病原体が増殖するのを防ぎます。

ちなみにNK細胞は感染症だけでなく、がん細胞の除去にも働くと覚えておくと良いですよ。

※4 アポトーシス:周りの細胞に悪影響を与えずに死滅するようプログラムされた細胞死。

免疫システム3:獲得免疫(適応免疫)

獲得免疫は時間はかかるが特異的

自然免疫で感染を封じ込められなかった場合、最後のシステムとして獲得免疫が発動します。

獲得免疫を担うのはB細胞T細胞です。

感染から獲得免疫応答が起こるまでには、1週間程度と時間がかかります。

しかし獲得免疫では、免疫細胞は侵入してきた病原体に対してのみ反応する(=特異的)ため、非常に強力です。

さらに獲得免疫には、一度侵入した病原体の情報を体内に保存する免疫記憶の仕組みが備わっています。

なお、免疫記憶の仕組みを利用して作られたのがワクチンです。

ワクチンを接種すると、ワクチンに入っている弱毒化又は無毒化した病原体が、健康な人に意図的に免疫応答を引き起こします。

これにより、実際にその病原体に感染したときに、記憶細胞として体内に残っているT細胞やB細胞がすぐに対応できるのです。

獲得免疫を担う細胞①:T細胞

ほとんどの血球は骨髄で発生・分化しますが、T細胞は骨髄で発生した後、例外的に胸腺に移動して分化すると覚えておきましょう。

T細胞には、大きく役割の異なるキラーT細胞ヘルパーT細胞の2種類があります。

キラーT細胞はNK細胞と同様、感染細胞が提示している病原体の断片を認識し、感染細胞をアポトーシスさせる一方、ヘルパーT細胞は、直接の攻撃ではなく、B細胞やマクロファージ・好中球などの免疫細胞を活性化します。

T細胞が病原体を認識し、攻撃するのに必要なのが、各T細胞が1つずつ固有に持っているT細胞受容体(TCR)です。

キラーT細胞は自身のT細胞受容体と結合するものを攻撃し、ヘルパーT細胞はT細胞受容体を使って活性化するB細胞を選び、B細胞の攻撃力を増強します。

ただ産生されたたくさんのT細胞には、体内の組織やタンパク質と反応してしまうものも含まれるので、自己と反応してしまうT細胞は胸腺で死滅します。

このように、自己の攻撃を防ぐ仕組みも必要です。

体内に病原体が侵入すると、「樹状細胞から抗原提示を受け、病原体と結合できるT細胞受容体を持つT細胞」が選択的に増殖して働き、一部は記憶細胞として体内に保存されます。

獲得免疫を担う細胞②:B細胞

B細胞が発生・分化するのは骨髄です。

T細胞と同じく、1つのB細胞はそれぞれ固有のB細胞受容体(BCR)を持っており、これで病原体を認識しています。

B細胞の場合も、体内組織やタンパク質と結合してしまうB細胞は死滅する仕組みです。

体内に病原体が侵入すると、「その病原体と結合できるB細胞受容体を持つB細胞」が一気に増殖し、一部は記憶細胞として体内に残ります。

そして増殖したB細胞は、細胞表面にあるB細胞受容体を血液やリンパ液へ分泌し始めます。これが抗体です。

抗体は抗原(病原体)に結合し、抗原抗体複合体を形成することで、病原体の病原性を失わせ(=中和)、最終的に抗原抗体複合体は、食細胞により貪食されます。

ちなみに、花粉症は最も身近なアレルギーの1つですが、これはB細胞が「花粉に特異的に結合する抗体」を産生してしまうことが原因です。

細胞性免疫と体液性免疫

ここまで応答が起こる順に、自然免疫・獲得免疫を見てきましたが、免疫は攻撃の仕方によって2種類に分けられることもあります。

病原体や感染細胞に対して、キラーT細胞NK細胞マクロファージなどの細胞が直接働く免疫は「細胞性免疫」、B細胞が産生する抗体による免疫は「体液性免疫」です。

おわりに

これほど複雑な免疫反応が、自分の体の中で起こっているなんて驚きですよね。
 
そして実は、高校で学ぶ免疫システムは全体のごく一部。T細胞にはさらに「制御性T細胞」という免疫抑制に働く細胞がいるなど、免疫学はさらに奥深い学問です。
 
興味のある方は、ぜひ自分でも調べてみてくださいね。

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