はじめに
皆さんはAO入試という制度をご存知でしょうか?
「なんか敷居が高そう」
「いまいちよくわかってない」
という方もきっと多いはず。
しかし、AO入試はうまく使えばあなたの志望校合格をより確実なものにするかもしれないのです!
そのためにもAO入試とはどのようなものであるかをしっかりと知っておく必要があります。
そこで今回はAO入試をあらゆる角度から解説してみたいと思います!
ぜひ利用するつもりの人もそうでない人も参考にしてみてくださいね。
目次
AO入試とは?
AO入試とはどんな意味?
AOというのは”Admissions Office”、つまり入学管理局の略です。
AO入試に対して一般入試という言葉があります。
一般入試とは、各大学の入学試験を受けその得点で合否が決まる試験です。
普段受ける模試はこの入試形式を意識したものとなります。
一方AO入試というのは、試験の得点ではなく面接や小論文で合否が決まる入試形式です。
AO入試では、その大学で勉強したいという強い意志やアドミッションポリシーに合うかどうかが重視されます。
評定や学校長の推薦などが必要なく、受験生の意思で出願することができます。浪人生でも出願できる場合も多いです。
しかし、入試形式によっては学校での成績や活動などある一定の条件を満たさないと応募できないものが多くあります。
AO入試と他の推薦入試との違い
AO入試と指定校推薦との違い
代表的な推薦入試である指定校推薦。大学が指定した特定の高校に推薦枠を与え、それを受けて高校で校内選抜を実施しています。
校内選抜を突破した生徒のみが入試を受けることができます。高校と大学の信頼関係に基づいて入試が行われるので、合格率が非常に高いことで知られています。
AO入試と公募推薦との違い
通っている学校長の推薦を得ることができ、評定などが指定を上回っていれば誰でも出願することができます。
指定校推薦とは違い、多くの人が合格するわけではありません。
AO入試と自己推薦との違い
自己推薦入試はAO入試など特別入試の多様化を反映したかのような入試で、評定基準を設けている大学もあれば、そうでない大学もあり、はっきりとした線引きはしにくいです。
例えば、中央大学法学部の自己推薦入試は出願にあたり評定基準を設けていませんが、法政大学文学部日本文学科の自己推薦入試では評定平均値3.8以上と基準を設けています。
AO入試はどんな人に向いているの?
- 部活動や生徒会、課外活動などで実績を残した人
- 大学で学びたいことや将来像が明確な人
学力にとらわれず、ユニークな経験をした人材を求めているAO入試では高校時代に打ち込んだことがあるというのは絶好の自己アピールの材料です。
活動を通して遂げた人間的な成長を、アドミッションポリシーに照らし合わせて自己推薦書や志望理由書に記しましょう。
AO入試は本来こういった受験生のためにあります。
学びたいことや将来像がはっきりしていて、
大学に入学に活躍。
「部活には入っていないなぁ…」
「そんなに目立った活動をしていないし…」
という方も諦めないでください!
実は、今からできる活動もたくさんあるんです。
例えば、将来は臨床心理士の資格を取ってスクールカウンセラーとして働きたいと考えているAさんがいたとします。
このAさんの場合、週末に地域のボランティアに参加したりカウンセラーの方の講演会に行き、自分なりに考えをまとめてみるなども立派な課外活動になるでしょう。
AO入試の内容(実際の流れ)
AO入試では基本的に、書類審査・面接審査・論文審査の3つが課せられます。
書類審査
AO入試は、学生の大学での学ぶ意欲や勉強以外の能力も評価対象になります。
そこで、志願者調書・志望理由書・調査書・評価書などの書類が必要になります。
調査書と評価書は学校側の記入する書類となるため、書類提出の期限ギリギリに学校の先生にAO入試を受ける趣旨を伝えても書類が間に合わなくなってしまうため、1か月前にはAO入試を受ける趣旨、そして提出書類について相談をしておくことをオススメします。
- 志願者調書
- 志望理由書
- 調査書
- 評価書
経歴や知的成長などの、今までの足跡を書きます。
AO入試はアドミッションポリシーに合う、その大学で学びたいという意欲のある学生を入学させることが目的であるため、志望理由書は最も重要な書類といえます。
各大学のアドミッションポリシーを把握し、自分がどうしてその大学を志望したのか、大学に入学したら、そして将来どのように活躍し大学に貢献していくかを意識して書きましょう。
高等学校入学以降の成績・卒業に関する証明書類などの、事務的な書類です。
在学している、もしくは卒業した高等学校に現在在籍している担当教員あるいは高等学校長が記入する書類です。
面接審査
面接では、自分が志望理由書に書いた内容をもとにその内容をより詳しく聞かれることが多いです。
志望理由書をもとにした質問は最低でも一つは聞かれるため、自分の志望理由書をコピーして事前に自分がどんな内容を書いたのかを把握しておきましょう。
また、時事問題に対する自分の意見を聞かれることもあります。
時事問題に対する意見をはっきり述べられるかどうかで、自分が普段から外の世界に対し関心をもって行動しているかどうかが測られているわけですね。
例えば私の友人は慶応義塾大学での面接で「最近の中国問題についてどう思うか」を聞かれていました。
論文審査
与えられたテーマに対して、時間制限や字数制限のもと論述するものもあれば、教授の実際の講義を聞いてその場で小論文を書く形式など、さまざまなパターンがあります。
小論文が出題される一般入試の形式をもつ大学は、主要大学では慶応義塾大学しかないため、ほかの大学を志望する人は小論文の対策が必要になります。
小論文の対策時間をAO入試のためだけに、受験期に割かなければならないため、他のライバルたちが受験勉強をしているのを考えると不安になることもしばしば……。
AO入試を活用することのメリット・デメリット
AO入試を活用することのメリット
- 合格のチャンスが増える
- 論理的思考力や論述力など大学に入ってから役に立つスキルが得られる
- 早めに進路が決まりゆとりが生まれ有意義な時間を過ごせる
例えば、慶應義塾大学ではセンター利用入試を実施していないので、一般入試の一発勝負です。
しかし、AO入試にチャレンジすれば、合格のチャンスが増えます。
AO入試の勉強のため一般入試の勉強に手が回らなくなってしまう可能性もありますが、
1回でも多く合格のチャンスが与えられるのであれば、挑戦してみる価値はあるはずです。
AO入試で問われる能力は、大学生活や社会に出てから役に立つものばかりです。
特に、グループディスカッションは就職試験でも課されることが多く
「就活に強くなるよ」と、AO入試対策をしてくださった先生が言っていました。
AO入試で合格した人の多くが口をそろえて言うメリットです。
AO入試の場合、秋には合否が決まります。
合格した場合、受験勉強とは少し離れて、読書をしたり、ボランティアをしたり、入学後の専攻や第二外国語の勉強を始めたりする時間が与えられます。
入学前に、人間的に大きく成長できる貴重な時間になるはずです。
AO入試を活用することのデメリット
- 一般入試の勉強との両立が大変
- AO入試に落ちた場合の精神的ダメージ
AO入試の勉強に時間を割きすぎて、一般入試の勉強に手が回らなくなってしまうという話はよく聞きます。
AO入試で合格してしまえばいいのですが、不合格になったときに他の受験生よりも勉強時間が相対的に少ないというディスアドバンテージが生じます。
不合格になった場合の精神的ダメージは大きく、一般入試まで引きずってしまう人もいます。
しかし、AO入試で不合格になりながらも一般入試で見事合格を果たす人もいるので、AO入試を受けると決めた段階で気持ちを切り替える準備をしておくといいかもしれませんね。
AO入試に向けた対策方法
AO入試には、主に以下の3つの課題があります。
- 志望理由書、自己推薦書などの書類作成
- 面接、グループディスカッション
- 講義理解、小論文
では1つずつ検討していくことにしましょう。
【AO対策】①志望理由書、自己推薦書などの書類作成
志望理由書ではその名の通り、その大学を志望する理由を書きます。
「私の夢を叶えるためには貴学でなければならないんです!他じゃダメなんです!」という強い気持ちをアピールしましょう。
例えば、弁護士になりたいBさんがいたとします。弁護士になるための勉強ができる大学はたくさんあるのに、何故〇〇大学の法学部を選んだのかを明確にしなければなりません。
そのためには〇〇大学でどんな授業を履修し、どの教授の下で学びたいのかなど具体的に述べる必要があります。
大学の履修要綱を見たり、教授が書いた本を読んだりといったリサーチが必要です。
自己推薦書では、「私はこんな人間で、入学したら貴学の発展に寄与できます!」と、自分を売り込みます。
部活や課外活動など今まで経験したことから何を学び、どのような人間になったのかを述べ、大学が求める人材であるとアピールしましょう。
以上のことから、①で必要になってくるのは文章力や表現力、自己分析能力と言えるでしょう。何度も書いて、信頼できる先生に添削してもらいながら地道に身に着けていきましょう。
【AO対策】②面接、グループディスカッション
3つの中で一番対策しにくい分野かもしれませんが、できることはたくさんあります。どんな些細なことでも自分の意見をしっかりと持ち、論理的に考える癖をつけましょう。
友人や学校の先生に協力してもらい言葉にすることを忘れずに。新聞を読んだり新書を読んだりして知識をストックしておくことも必要です。
【AO対策】③講義理解、小論文
慶大や一部の国公立大の入試の試験科目として確立しているので参考書も多く、対策しやすい分野です。
週に1本などとノルマを決めコンスタントに書き、先生に添削してもらいましょう。
添削の過程で先生と話し合えば、グループディスカッション対策にもなりますよ。
AO入試を実施している大学
名称は様々ですが、AO入試を実施している大学を調べてみました。
AO入試は、ほとんどの私立大学で実施されていますが、すべての学部で実施されているわけではないので自分の志望学部のHPを見るのが一番です。
また、国立大学では、北海道大学・東北大学・筑波大学・千葉大学・お茶の水女子大学・東京工業大学・横浜国立大学・京都大学・大阪大学と、多くの有名大学がAO入試を行っています。
ここに掲載しているものは、評定の基準や学校長の推薦を必要としない試験です。
詳細は各学校のHPや募集要項でご確認ください。
- 早稲田大学
- 慶應義塾大学
- 明治大学
- 青山学院大学
- 立教大学
- 中央大学
- 法政大学
・政治経済学部 グローバル入試
(書類審査、論文・面接)※要英語スコア
・創造理工学部 早稲田建築AO入試(創成入試)
(書類審査、筆記・面接)
・国際教養学部 AO入学試験
(書類審査、筆記)
・法学部 FIT入試 A方式
(書類審査、論述試験・グループ討論)
・総合政策学部・環境情報学部 AO入試 A方式
(書類審査、面接)
・看護医療学部 AO入試 A方式
(書類審査、面接)
・理工学部 AO入学試験
(書類審査、エントリーシート審査及び学力調査・面接試問・実技等)
・農学部 食料環境政策学科 地域農業振興特別入学試験
(書類審査、総合面接)
・政治経済学部 グローバル型特別入学試験
(総合・面接)
・文学部 英米文学科 自己推薦入試
(書類審査、小論文・面接)※要英語スコア
・地球社会共生学部 地球社会共生学科 自己推薦入試
(書類審査、小論文・面接)
・文学部 自由選抜入試
(書類審査・外国語・面接)
・経済学部 自由選抜入試
(書類審査、総合科目・面接)
・理学部 自由選抜入試
(書類審査、英語・小論文、面接)
・異文化コミュニケーション学部 自由選抜入試
(書類審査、小論文・面接)
・法学部 自己推薦入試
(書類審査、講義理解力試験・グループディスカッション)
・経済学部 自己推薦入試
(書類審査、講義理解力試験・グループディスカッション)※要簿記等の資格
・キャリアデザイン学部 キャリア体験特別入試
(書類審査、小論文・面接試験)
実施大学例からAO入試を知ろう
AO入試の概要ばかり言っていても、実感がわかない部分もあると思います。
実際の大学のOA入試を参考にして、理解を深めていきましょう!
今回参考にするのは、早稲田大学と慶応義塾大学です。
AO入試例その1:慶応義塾大学
慶応義塾大学には10の学部がありますが、その中でもAO入試を実施しているのは法・理工・看護医療と、SFCの総合政策・環境医療学部の5つの学部だけです。
今回はその中でも、法学部のAO入試についてみていきたいと思います。
- 慶應法学部
法学部のAO入試には「従来型のFIT入試(A方式)」と「地域ブロック枠のB方式」の2つの受験方式が存在します。
A方式とB方式の一番大きな違いは「高等学校での学業成績」の有無です。
A方式つまりFIT入試とは、「「第一志望で慶應義塾大学法学部法律学科・政治学科で勉強したい」学生と、「この学生を教えたい」という私たち法学部教員との良好な相性(fit)を実現しようとするものとしてスタートした入試」(慶応義塾大学HP)とあるように、学ぶ意欲を見る入試形式です。
外部活動や実績を持つような学業成績以外で優秀な生徒を入学させるという、一般入試とは別の入試形態として、スタートしました。
そのため、評定平均(高校の5段階評価の平均値)による足切りは行っていませんでした。
一方、比較的新しい入試形式のB方式では、「様々な地域の個性ある学生の「慶應で学びたい」という意欲に応えたいと考えています。そしてそれらの学生が、卒業後にその才能と慶應義塾大学法学部で学んだ成果を、様々な形で自分の出身地域の活性化に活かしてくれることを期待しています。」(慶応義塾大学HP)
とあるように、首都圏だけでなく地方からも学生を集めることで多様化を進めることが目的となっています。
様々な地域から学生を集めるため、地域ごとのブロックを作りそこから~名まで合格させるという上限をかけています。
慶応義塾大学法学部の詳しい募集要項についてはコチラを参照してください。
AO入試例その2:早稲田大学
次に早稲田大学のAO入試を見ていきましょう。
早稲田大学には現在、13の学部があります。
その中でAO入試が実施されているのは、政治経済・文化構想・想像理工・先進理工・スポーツ科学・国際教養学部の6つの学部です。
今回注目していくのは、政治経済学部のAO入試です。
- 政治経済学部
政治経済学部では、「グローバル入試」という形式でAO入試が実施されています。
「書類・英語能力・論文・面接の各審査を通じ、一般的な入学試験では量ることのできない、一人ひとりの資質や個性、経験、熱意などを総合的に評価する入学試験です。」(早稲田大学HP)
とあるように、特に英語能力を意識したものです。
試験内容は、書類審査・英語能力審査・論文審査・面接審査の4つです。
英語能力審査は、TOEFL(iBT・PBT)・TOEIC・IELTS(Academic)スコアで審査されるため、特に早稲田大学で試験を受ける、というものではありません。
慶応義塾大学法学部と違い、評定平均による足切りはなく、出願資格の最初には「早稲田大学政治経済学部で学ぶことを強く希望する者。」とあるように、学ぶ意欲を重視しそれを面接審査で審査する形式です。
AO入試の合格率はどれくらい?
出願資格が厳しいほど、入試倍率は低くなる傾向にあります。
逆に言うと、評定平均の足きりがない、というように高校在学時の活動内容に重点を置いた入試は、出願資格がより多くの人に与えられるために志願者が多く倍率が高くなりやすいです。
具体的に言うと、上で参考にした慶応義塾大学法学部のAO入試では、評定平均の足切りのないA方式の倍率は法学部法学科で6.0、政治学科で6.7.足切りのあるB方式は法学科で倍率が2.4、政治学科で2.7と、4倍近くの差があります。
では、一般入試とAO入試、どちらの倍率のほうがより高いのでしょうか?
早稲田大学の場合ほとんどの学部で、AO入試よりも一般入試のほうが倍率が2倍ほど高いことがほとんどです。
AO入試では、その大学が第一志望の人しか受験しませんが、一般入試ではより高いレベルを目指す人が滑り止めとして受験するため難易度はかなり高まるといえます。
実際に慶応義塾大学に通う私の実感でも、慶應大学が第一志望で一般入試で合格人はほぼいません。(私の知り合いには一人もいません…)
一般入試で合格する人は、一橋大学または東京大学志望の人でした。
第一志望が慶應だった人は、推薦入試またはAO入試で入学する印象にあります。
それくらい、一般入試はレベルの高い戦いになっているのです。
さいごに
いかがだったでしょうか。
AO入試のことがある程度は分かったのではないでしょうか。
しかし、大雑把なことがわかってもどうしても各大学によって違う部分というものが出てきてしまいます。
つきましては、ぜひとも自分の志望する大学のAO入試がどんな風になっているのかを自分で確認しましょう。
それでは、皆さんが第一志望校に合格できますことを祈っています!