目次
世界史B(東京書籍)の特長
【世界史B】①単なる暗記に留まらず流れとして歴史を理解できる
世界史の学習ではまず縦の歴史(ある1つの地域の歴史)を理解し、その後に横から学ぶ歴史(様々な地域同士の同時代の関わり)を理解する必要があります。
縦の歴史を理解する作業もなかなか大変で、目まぐるしく王朝や政権が代わります。
世界史を勉強するとき、私たちはしばしば王朝や人名の暗記に終始してしまいがちですが、世界史の理解の本質は歴史の流れを理解することです。
この『世界史B(東京書籍)』では王朝の交代や中国大陸における遊牧勢力の変遷の流れが他の教科書に比べて詳細に書かれており、歴史の経緯をとてもスムーズに理解できます。
そのため、世界史をただ一問一答のように単語暗記のようにバラバラにとらえるのではなく、一連の流れとして理解する大きな助けとなります。
【世界史B】②1つの章に1つのコンセプトがあって読みやすい
これを見て、どの教科書にも章の区切りがあってその章ごとにまとまった内容が書いてあるのでは?と思った方も多いと思います。
確かに『世界史B(東京書籍)』も私が使っていたもう1冊の教科書も基本的には1つの章に1つの地域に焦点を当てて書かれています。
しかしながら『世界史B(東京書籍)』には固有な特徴があります。それは同時代の多地域がまとめて記述されている章があるということです。
例えばある章では海域世界の発展として中国世界、イスラム世界、ヨーロッパ世界が海運で結びつく様が記述され、極めて広い視点で世界史を見つめる訓練が出来ます。
このような歴史の見方はしばしば「横の歴史」と呼ばれることもあります。
これは「東アジア」などという区切りでのみ学習していると養いにくい視点です。しかし、大学受験ではしばしば求められる力でもあります。
例えば、難関大学では同時代の複数地域を比較して論述させる問題が頻出です。
過去のある大学の二次試験では銀を中心とする世界経済の一体化をテーマにした大論述が出されました。合格点を取るには東アジアからヨーロッパまでを俯瞰して論じる必要がありました。
このように本書は、比較的高度な入試問題にも対応できる構成となっています。
さらに、章の最初のページには見開き1ページで、その章に書かれている内容をまとめた文が載っています。
そのためたくさん読み進んだ結果、結局自分が読んだ内容を忘れてしまう、なんてことを避けることができますし、章を読み始める前と後に読むと自分が学んだ内容をもう1度確認できるので非常に便利です。
【世界史B】③コラムが充実していて読み物としても面白い
受験期は入試によく出る問題を集中的に行うため、読者の皆さんの中にも息切れをしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この『世界史B(東京書籍)』には試験に恐らく出ませんが、歴史を学ぶ上で面白いちょっとした雑学が半ページほどのスペースに凝縮されています。
パラパラとめくっただけでも、科挙(かつて中国で行われていた官吏登用試験)のカンニングで使われたTシャツや、マルコポーロが旅した中国各都市の写真が資料として使われていました。
このように受験の知識だけで終わらない奥行きのある世界史の教養が身につくので、私は受験期に単純に読み物としても楽しんでいました。
世界史B(東京書籍)のおすすめの勉強法・使い方
【世界史B】①まずは基本(センターレベル)用語を押さえる
どの教科も基礎が何よりも重要です。世界史も例に漏れず、基礎的な用語の意味がわからないと論述問題はおろか、選択式の問題も解けません。
まずは授業や簡単な用語チェックリスト等でセンターレベルの用語をさらうことが必要です。
この時点では、その用語がどの時代のもので、大体どのような意味か(人名であれば代表作や主な功績1つや2つ)を知る程度で良いかと思います。
その後、同じ範囲のこの教科書の該当ページを読み、その前後の時代の流れを把握しましょう。
その時にページの端に小さめに載っている注も見落とさずにしっかりと読むことがおすすめです。
また、図版や資料が充実しているので、それらを見ておくと視覚的なイメージと教科書の文章が結びつき、スムーズに理解することができます。
この作業を数回繰り返せば、その範囲の基礎はおおよそ固めることができます。
【世界史B】②章ごとに区切って読んでみる
小見出しのページを読む作業を繰り返した後は、以下のように読んでみることをお勧めします。
基本的にこれらの事項を意識すると良いです。
- 最初の見開き1ページを読む
- 自分がこれから読む時代や地域、大きな転換点をだいたい把握する
- 図や写真の意味を本文と対応させてきちんと理解する
また、しばしば他の章に出てきた用語が再登場することがあります。
そのような用語は、長きにわたり1つの地域に止まらず複数地域に影響を与えた場合が多いので、前に出てきた章に戻り、今読んでる章との用語の使われ方の違いに注目するとスムーズに理解できます。
ここで突厥を例にあげると、オリエント世界の記述ではササン朝のホスロー1世と組んでエフタルを滅ぼす内容が、遊牧民の文化の記述では突厥文字についての内容等が書かれています。
以上のことに気をつけつつ、休み休みでも読み切ることがおすすめです。
読み終わったら復習として最初に読んだ見開き1ページを読み直してみてください。
この時点でその章の内容をざっと思い出せたら理解が進んでいる証拠です。
【世界史B】③用語の解説は論述問題に使う
最後に紹介するのはこの教科書の一番の特徴である、論述養成力です。
私はこの教科書を小論述を行う時に特に利用しました。なぜなら『世界史B(東京書籍)』では1つ1つの用語に対する解説がとても充実しているからです。
例えば「アチェ王国」という単語に注目してみます。
私が使っていたもう1冊の教科書だと、「〜アチェ王国やマタラム王国などが新たな交易中心地として発展した〜」と、同時代に栄えた他の国と並列して書かれています。
一方、『世界史B(東京書籍)』ではアチェ王国の歴史がページの端の方に詳細に書かれていて非常にインプットしやすい内容となっています。
このような語句説明欄は論述対策の際に非常に有用となります。
過去問と照らし合わせながら、出そうな、使えそうな用語の説明はある程度頭にインプットしておくことが得点を伸ばすポイントです。
勿論、論述では難関私大レベルの単語を説明させる事は滅多にありませんので、基本的な用語をしっかりと文字にして、書いて説明する練習をしましょう。
実際に紙とペンを用いてやってみるのが望ましいです。
このような小論述の演習を続けていけばかなりの基礎力が付いて来ると思います。また、おおよその論述問題には対応できるでしょう。
また、400〜600字程度の長めの論述を課す大学も中にはあります。
長い論述といえど書かなければならない内容は大方問題文で示唆されています。その内容を忠実に答案に盛り込んでいけば良いのです。
ここで役に立つのが小論述力。600字の大論述を、200×3ないしは150×4などと複数の小論述として区切って考えていけば良いのです。
小論述力を養成した後、そのような見方で大論述を解いていくと答案用紙ぎっちりに文字を書くことができると思います。
例えば先ほど述べた銀を中心とした経済の一体化の問題ではヨーロッパはヨーロッパ、中国は中国として区切って考えるのです。
その書き方に慣れたら、それらの地域同士の関わりを論述で示して行けると良いでしょう。
ここでようやく横の歴史の登場です。
大論述の対策は、
- 小論述力養成
- 大論述を複数の論述とみる
- それらの小論述同士の繋がりを意識した論述を心がける
が正攻法だと感じます。
以上に記した通り、『世界史B(東京書籍)』を上手に用いると、字数の多い少ないに関わらない論述力を着実に養成していくことができます。