はじめに
数学について、このような苦手意識を持っている方は多いのではないでしょうか。
『数学の定義・定理や公式は丸暗記したから、基本的な問題は解けるけど、発展問題になると手がつけられない。』
『テストになると解けなくなってしまう。』
このような、数学が『苦手』な人と得意な人の差の一つとして、それぞれの分野、ひいては定義・定理についての理解の深さがあるのではないでしょうか。
そう考え、学校ではあまり学ばない、理解の深さを埋めるための記事を作成しました。
今回は、つまずきがちであると同時に差をつけやすい『数列』について、東大実践模試で理科一類志望中1位をとった筆者が解説していきます。
なお、この記事では数列の基本的な用語は解説しません。数列についてそもそもよく知らないという場合は、まずはじめに下記の記事をご覧ください。
目次
数列を理解する
そもそも、数列とは何か
そもそも数列とは何でしょうか?
数列とは、文字通り、『数』の『列』です。数が並んでいれば、どんな数字、順序であっても、数列と呼ぶことはできるでしょう。
しかし、数学で取り扱うのは、数列の中でも何らかの『規則』があるものです。数列の問題では、規則を見つける、規則をわかりやすく表現する、という点が重要になってきます。
まずはこの点をしっかり頭に入れておきましょう。
数列の「規則」とは何か
数列の規則とは何か?
一言で言えば、どんな自然数\( n\)をとってきても、\( n\)番目の数=第\( n\)項の値がわかることです。
すこし難しい表現なので、例を出すと、\( 1,2,3,4\) という数列があれば、「第10項は?」と聞かれれば「\( 10\)」、「第1729項は?」と聞かれれば「\( 1729\)」と答えることができますよね。
第何項であっても、値を答えられる。これが、数列が規則を持つ、ということになるのです。
そして、これを数式で表すと、一般項になるわけです。先ほどの例だと、\( a_n=n\) となりますね。一般項が言っていることは、第\( n\)項の値は、こういうふうに表せますよ、ということだけです。
そのように考えると、一般項は、数列の規則(すなわち、第\( n\)項の値がわかること)を表すための一つの方法、と言うことができます。
数列の「規則」の具体例
次は、数列の規則の具体例をみていきましょう。
ここで出てくるのが、よくある等差数列・等比数列というものです。
これらは、数列の規則に名前をつけただけに過ぎません。
等差数列は隣り合う項の差が等しい数列のこと、等比数列は隣り合う項の比が等しい数列のこと、でしたね。
この二つは、数列の規則として基盤になるものなので、どのような性質を持つかをしっかり理解しておきましょう。
コラム:よくある数列の問題、実は答えがない?
このコラムでは、よくみる問題から、数列の規則の正体にせまっていきます。
よく、中学受験の問題などでこのようなものがありますね。
(1) \( 1, 2, 4, 8, ?, 32, 64,…\)
(2) \( 1, 3, 7, 13, ?, 31, 43,…\)
解答としては、(1)\(16\) (2)\(21\) というふうになると思いますが、これは、厳密にいうと、どの数字を答えても正解になります。
なぜでしょうか?
それは、これだけでは数列の規則が何なのか、全くわからないからです。
解答では、(1)は等比数列、(2)は階差数列が等差数列となっている、と考えていますが、他にも規則となりうるものはいくらでもあります。
例えば、(1)であれば、\(a_n=(n-1)(n-2)(n-3)(n-4)(n-6)(n-7)+2^{\phantom{1}n-1} \)
という一般項であるとしても、数列は成り立ちますよね。
(\(n=1,2,3,4,6,7\) を代入すれば簡単にわかります。)
この場合、? の部分(第5項)の答えは\(64\)となります。このような規則を持つ数列かもしれない、と考えても全く問題ないわけです。
そうなると次は、どのように数列を指定するか、というのが問題になってきます。数字をいくつか並べるだけでは数列を特定できないわけです。その一つの方法として、「初項1、公比2の等比数列です。」というふうに言うことができるわけですが、それだと、名前がついた数列しか扱えないですよね。
そこで出てくるのが、「漸化式」になるというわけです。
数列の規則の一例、漸化式
これもまずは、漸化式とは何かというところから考えていきましょう。
漸化式は、数列に潜む「規則」を数式化したものです。
漸化式では、まず第1項がわかり、次に式から第2項がわかり、次に第3項、第4項、、、という形で全ての項の値がわかる様になっています。これにより、どんな自然数\( n\)をとってきても、\( n\)番目の数=第\( n\)項の値がわかりますよね。
どんなに難しい漸化式が出てきたとしても、それは、数列の「規則」を示しているにすぎません。
例えば、\(1,2,3,…\)という等差数列なら、\(a_{n+1}=a_n+1\phantom{1}a_1=1\) が漸化式となります。
そして、よくある問題が、漸化式から一般項を求めよ、というものです。
これは言い換えると、『漸化式で表された数列の「規則」を、一般項という別の規則を表す形で表せ』ということになります。
次は実際の問題の解き方を少し見ていきましょう。
数列の問題を解ける様にする
具体的な数列の問題、ここでは特に一般項を求める問題について解説していきます。
有名な数列の一般項
まずは、有名な数列の一般項を考えていきましょう。
といっても、導き方さえわかっていれば、これは丸暗記で大丈夫です!足し算するだけなので。
以下に、代表的な3つの数列の一般項を上げておきます。覚えちゃいましょう。
-
☆ 等差数列:\(a_n=a_1+d(n-1)\) (\(a_1\):初項、\(d\):公差)
☆ 等比数列:\(a_n=a_1 \times r^{n-1}\) (\(a_1\):初項、\(r\):公比)
☆ 階差数列を利用するもの:\(a_n=a_1+\displaystyle \sum_{i=1}^{n-1}b_i\phantom{1}(n≥2)\)(数列\(a_n\)の階差数列が\(b_n\)となっています。)
ただし、この場合の数列は次のような形です。
例えば \(a_1=1,\phantom{1}b_n=n\) のとき、\(1, 2, 4, 7, 11, 16,…\) となりますね。
漸化式から一般項を導く時のコツ
最後に、漸化式から一般項を導くためのコツを伝えます。
とその前に、まずは、先ほどあげた有名な数列の漸化式を考えましょう。
- 等差数列:\(a_{n+1}=a_n+d\)
- 等比数列:\(a_{n+1}=r \times a_n\)
- 階差数列を利用するもの:\(a_{n+1}=a_n+b_n\)
これらの漸化式は、数列の形を見れば明らかですね。
この三つの形であれば、上に書いた公式を使って一般項を求めることができますよね。
そこで、漸化式を一般項に直す時の目標は、『「規則」をわかりやすくしていき、上の3つのどれかの形にすること』になります。
実際にやってみましょう。
このままだと、上の3つの形ではありませんね。
でも、\((n+1\)の式\()\)=\(2(n\)の式\()\)という形にできそうじゃありませんか?
実際、
\(a_{n+1} +1 = 2(a_n +1) \)
という式にできます。
(\(a_{n+1} +α = 2( a_n + α) \) とおいてみて、\(α\)を求めればできますね。)
そうすれば、公式から、
\(a_{n+1} =( a_1 +1 )\times 2^{\phantom{1}n-1}\)
なので、答えがわかります。
難しい問題も、基本的には、\( n+1\)の塊の式と\( n\)の塊の式を作って、等差数列・等比数列・階差数列の公式を使うだけで解けちゃいます。どんな難しい規則も、分解していけば、簡単な規則の組み合わせということがわかる訳です。
なお、その塊を作るための「公式」のようなものとして特性方程式というものがありますが、便利ツール、くらいに思っておけば大丈夫です。
漸化式から一般項を求める例題
最後に、簡単な例題と解答を置いておくので、解いてみてください。
なお、一般項を求める問題を解く際は、必ず出た答えに\(n=1,2,3\)を代入してみて検算しましょう。
(1)\(a_{n+1}=2a_n+n^2-2n\phantom{1}a_1=1\)
ヒント:\((n+1\)の式\()\)=\(2( n\)の式\()\) という形にすればOKです!
\( n\)の式、\( n+1\)の式、というのは、\(f(n)\)と\(f(n+1)\)というイメージで大丈夫です!
(2)\(a_{n+2}-5a_{n+1}+ 4a_n +6=0\phantom{1}a_1=1,a_2=2\)
ヒント:(\( n+1\)の式\()\)=\(?\times( n\)の式\()\) という形にすれば大丈夫です!
例えば、\(a_{n+1} + a_n \) を\( n\)の式とみなすと、\(a_{n+2}+a_{n+1}\) が\( n+1\)の式となりますよね。
(\(f(n)\)と\(f(n+1)\)の関係を思い出してください!)
(1)
\(n^2-2n\)を、\( n+1\)の式と\( n\)の式に分割しよう、と考えられれば勝ちです!
\(a_{n+1}+p \times \left(n+1 \right)^2 +q(n+1)+r=2(a_n + p\times n^2 + q \times n + r)\)
とでも置いてみると、
\(p=1,q=0,r=1\) なので
\(a_{n+1} + \left(n+1 \right)^2+1=2(a_n+n^2+1) \)
となり、等比数列の形になります。
あとは、これを解いて整理すれば、
\(a_n = 3 \times 2^{\phantom{1}n-1}- n^2 – 1\)
となります。
(2)
\(a_{n+2}- p \times a_{n+1}-q = r \times (a_{n+1}-p \times a_n-q )\)
という形を考えれば、
\((p,q,r)=(1,2,4)\) になります。
よって、\(a_{n+2}-a_{n+1}-2 = 4 \times (a_{n+1}-a_n-2)\)
となり、等比数列の形になります。
これは整理すると、
\(a_{n+1}-a_n-2=-4^{\phantom{1}n-1}\)
となりますね。
また、\((p,r)=(4,1)\) というような例を考えてみると、\(q\)は解なしとなりますが、
\(a_{n+2}-4a_{n+1}=a_{n+1}-4a_n-6\)
となり、等差数列の形になります。
これは整理すると、
\(a_{n+1}-4a_n=-6n+4\)
となります。
この二つを使えば、
\(a_n =\frac{1}{3}(-4^{\phantom{1}n-1}+6n-2) \)
がわかりますね。
まとめ
- 数列は、なんらかの「規則」を持つ「数」の「列」。
- 一般項・漸化式は、数列の規則を表すための一つの方法。
- 有名な数列の一般項は丸暗記でもOK!
- 漸化式から一般項を導く時は、繰り返しの塊を作る!