はじめに
皆さんは整数問題は得意ですか?
受験生の多くは整数問題が苦手、好きじゃないと言います。
しかし、ポイントをおさえてしまえば簡単に解けるようになります。
数学においてやればやった分だけ伸びる分野の一つかもしれません。
これからお話しする4つのポイントを押さえて、整数問題を攻略しましょう!
目次
整数問題4つのコツ
コツ①実験をする
一つ目のポイントは実験、つまり実際に値を代入することです。
整数問題はただ式を見てもよくわからないことが多いですが、実際の値を代入して実験することで何らかの法則が見えてくることがあります。(法則が見えたら、それを示せばよいですね。)
コツ②差や和を積に変える
二つ目のポイントは差や和を積に変えることです。
整数の足し算は組み合わせが無限にありますが、整数の掛け算ならば組み合わせが有限になり簡単に答えを求めることができます。
ex) a+b=1⇒(a,b)=(5,-4),(1,0),・・・ → ab=1⇒(a,b)=(1,1),(-1,-1)
コツ③条件から範囲を絞る
三つ目のポイントは条件から範囲を絞ることです。
ある文字aの範囲を知らない状態でaを考えるのと、aの範囲を知っている状態(例えば1<a<5)では、難易度が全く違います。
不等式評価を用いてある程度範囲を絞ってから、しらみつぶしですべて計算すれば答えを求められます。
コツ④余りに注目する
四つ目のポイントは余りに注目することです。
余りに注目することで、情報量を減らしながら、文字に制限を付けることができます。(後で実際にやってみましょう。)
特に指数が含まれているときは効果的です。
また、余りの値ではなく余りの個数に注目する問題も存在します。
実際に解いてみよう
pが素数ならばp^4+14は素数でない[21 京都大]
数学において重要なことの一つに、「問題文を言い換える」があります。
今回は、「素数でないことを示す⇒何かの倍数(合成数)になることを示す」です。
まずはコツ①、実際に値を代入します。
p=2⇒30
p=3⇒95
p=5⇒639
p=7⇒2415
これを見て予想をします。
p=3の時以外は3の倍数?
p=5の時以外は5の倍数?
まずは数字が小さい3の倍数のほうから考えましょう。
ここでコツ④、余りに注目をします。
p(p>4)における3で割った余りを考えると
pは素数だから余りは1か2であるから、p^4の余りは(以下mod3)
p≡1⇒p^4≡1^4≡1
p≡2⇒p^4≡2^4≡16≡1
これより、p^4の余りは常に1とわかります。
このように、指数だと余りの種類が減ることがよくあります。
よってp^4+14の3で割った余りは
p^4+14≡1+14≡15≡0
なので、p^4+14は3の倍数となります。
また、初めの実験よりp=1,2,3の時も素数にならないことがわかっているので、p^4+14は素数でないことが示されました。
他にも、p^4+14=(p^4-1)+15として、コツ②である、差を積に直すやり方でも同様に示すことができます。(ぜひ自分でやってみてね。)
a-b-8とb-c-8がともに素数になる素数の組(a,b,c)の組み合わせ[14 一橋大]
a,b,cがすべて素数であることを利用します。
素数が絡む問題では、唯一素数かつ偶数である2を特別視してあげます。
a-b-8=p、b-c-8=qとおく。
(ⅰ)a,b,cのどれか一つ以上2の時
a,bは2になることがない。(∵aかbが2だとpかqが負になってしまう)
よって可能性があるのはc=2の時のみ。
この時
b-2-8=q.
また、a,bは奇数よりa-b-8は偶数となるから
p=2
∴a-b-8=2
∴a=b+10, b=10+q.
∴a=20+q, b=10+q.
最後にコツ④、余りに注目して、3の倍数かどうかを判断します。
q=3の時、(a,b,c)=(23,23,2)で成立。
qが1余る(q=3k+1)時、a=3(7+k)となり、不適。
qが2余る(q=3k+2)時、b=3(4+k)となり、不適。
3の倍数かどうかで判断できないときは、素数はp=6k+-1と表せるので、知っておくと便利な場面もあります。
(ⅱ)a,b,cが2でない素数の時
a-b-8とb-c-8はどちらも偶数になるため
p=q=2
∴a-b=10, b-c=10.
であり、一つ目の式からbを消すと
a=20+c, b=10+c.
これは(ⅰ)のqをcに変えただけなので、a,bがともに素数となるのはc=3の時で、(a,b,c)=(23,13,3)で成立。
以上より、求める解は(a,b,c)=(23,13,2), (23,13,3).
p^3+q^3-3pq=309
自作
このような等式はコツ②の差や和を積に変えることを考えましょう。
a^3+b^3+c^3-3abcという形は(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)というように因数分解ができる形です。(今回はc=1)
p^3+q^3-3pq=309
∴p^3+q^3+1-3pq=309+1
∴(p+q+1)(p^2+q^2+1-pq-p-q)=310
足し算や引き算では絞れませんでしたが、掛け算にすることで
(p+q+1, p^2+q^2+1-pq-p-q)=(310,1), (155,2), (62,5), (31,10), (10,31), (5,62), (2,155), (1,310)
のいずれかであると絞れます。(この時、p+q+1>0であるから、掛け算の組み合わせに負が含まれません。)
絞れたとは言っても、8個はまだ多いのでもっと範囲を絞りましょう。
ここでコツ③の条件から範囲を絞る方法を使います。
掛け算の右側と左側を見比べてください。
なんか左側を2乗すると右と同じようなものが出てきそうですね。
なので今回は(p+q+1)^2と(p^2+q^2+1-pq-p-q)の大小関係を探ります。
(p+q+1)^2 – (p^2+q^2+1-pq-p-q) = 3(pq+p+q) > 0
これより、左側の2乗は右側よりも大きいことがわかります。
また、偶然ですが、この差は3の倍数になることもわかりましたね。
この二つを考えると
(310,1)→OK
(155,2)→差が3の倍数でないので✕
(62,5)→差が3の倍数出ないので✕
(31,10)→OK
(10,31)→OK
(5,62)→左の2乗が右より小さいので✕
(2,155)→左の2乗が右より小さいので✕
(1,310)→左の2乗が右より小さいので✕
3つまで絞れたので、(310,1)から考えます。
代入して計算してもいいけど、やりたくないのでやり方を変えます。
p+q+1=310、p^2+q^2+1-pq-p-q=1
二つ目の式に一つ目式を足して整理すると
p^2+q^2-pq=309
問題文はp^3+q^3-3pq=309なので、等式が結べて
p^2+q^2-pq=p^3+q^3-3pq
∴p^2+2pq+q^2=p^3+q^3・・・1⃣
ここでpq<q^2であるから(∵0<p<q)
p^2+2pq+q^2<p^2+3q^2<=p^2+q^3<p^3+q^3
となるから1⃣は成り立たないので、(310.1)は成り立ちません。
次に(31,10)を考えます。
p+q+1=31、p^2+q^2+1-pq-p-q=10
∴p+q=30、p^2+q^2-pq=39
∴p+q=30、(p+q)^2-3pq=39
∴30^2-3pq=39
∴pq=287
よってp、qの組み合わせは、0<p<qに注意して
(p,q)=(1,287),(7,41)
であるが、p+q=30を満たす組み合わせがないので、(31,10)は成り立ちません。
最後に(10,31)を考えます。
p+q+1=10、p^2+q^2-pq-p-q=31
p+q=9なのでこのとき(p,q)の組み合わせは、0<p<qかつp,qは素数に注意すると
(p,q)=(2,7)に限られる。
これを問題のp^3+q^3-3pq=309に代入すると
2^3+7^3-3*2*7=309
となり、成り立つ。
以上より、(p,q)=(2,7)である。
おわりに
整数問題は初め何から手を付けていいかがわかりづらい問題が多いです。
だからこそ、実験をして、予想を立てることが非常に大切です。(整数問題に限らず)
また、範囲を絞ることや、積の形にするなど、文字を可視化することで解答の見通しが付きます。(これも整数問題に限らず)
今回紹介した4つのポイントを抑え、自分の中でパターン化することで、簡単に整数問題が攻略できてしまいます。
苦手意識を払拭して、整数問題を得点源にしちゃいましょう!