はじめに:イスラームの文化史の特徴・覚え方を徹底解説!
イスラームの文化史に登場する人名や作品名は、呪文のような言葉が多くて覚えにくいですよね。
そこでこの記事では、非常に覚えにくいイスラームの文化史について、その特徴と覚え方を徹底的に解説します。
イスラームの文化史が次のテストの範囲に入っている人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
- 神余秀樹『タテヨコ総整理 世界史×文化史集中講義12』旺文社、2012年。
目次
イスラームの文化史の特徴・覚え方
具体的な特徴の説明に入る前に、文化史の覚え方について1つ注意点を挙げておきます。
それは、「いきなり全て覚えようとせず、分野別に少しずつ覚える」ということです。
暗記項目が多い試験の直前になると、一夜漬けで乗り切ろうとする人がいますが、一晩で覚えられる内容なんてたかが知れています。
一気に全部覚えようとするよりは、分野ごとに覚える内容を分けて、少しずつ覚えていく方が効果的です。
この記事で紹介する覚え方のテクニックを使いながら、地道にコツコツ学習を続けてくださいね。
イスラームの文化史の特徴・覚え方①:イブンたち
イスラームの文化史の重要人物といえば、「イブン」という名を持つ4人の人物です。一人一人順を追って見ていきましょう。
イブン=ハルドゥーン
まずはイブン=ハルドゥーンです。
イブン=ハルドゥーンは世界史の専門家で、都市に住む市民と遊牧民との違いを考察した『世界史序説』という著作を発表しました。
イブン=バットゥータ
イブン=バットゥータも、ハルドゥーンと同じく世界史に通じた研究者です。
モロッコに生まれたバットゥータは、アラビア諸国を巡った後、マリ(アフリカ北部の国)やインドを渡り歩き、その記録を『三大陸周遊記』に記しました。
旅行が今ほど簡単なものではなかった時代に、アフリカやアラビア・インドまで赴くとは、イブン=バットゥータはなんとも豪快な人物ですね。
イブン=シーナ
次はイブン=シーナです。
イブン=シーナの専門は医学で、アリストテレスの著作を研究して『医学典範』という著作を書きました。
シーナは、ヨーロッパでは「アヴィセンナ」という名で有名になり、『医学典範』は中世ヨーロッパの医学教育の教科書として長く使われる伝説的な著作となっていきます。
国境を越えて強い影響力をもったイブン=シーナは、イブンたちの中でも最重要人物と言っていいでしょう。
イブン=ルシュド
イブン=ルシュドも、シーナと同じくアリストテレス研究に従事した医者です。
中世ヨーロッパでは「アヴェロエス」の名前で知られましたが、イブン=シーナ(アヴィセンナ)ほどの影響力は持たなかったようです。
力関係的には、イブン=シーナ(アヴィセンナ)が兄で、イブン=ルシュド(アヴェロエス)が弟といったところになりますね。
覚え方
まず、イブン=ハルドゥーンとイブン=バットゥータを「世界史系」、イブン=シーナとイブン=ルシュドを「医学系」と分類しましょう。
バットゥータは名前からして派手(「バットゥータ!」っていう叫び声が聞こえそう)なので、派手に三大陸を周遊した人=『三大陸周遊記』を書いた人と覚えられます。
医学系の方のシーナも、ルシュドに比べて強そうな名前をしていますよね。
シーナには、ルシュドという中ボスを倒して喜んでいるRPG主人公に向かって、階段の上から静かに声をかけてきそうなラスボス感があります(?)。
そんな強いシーナが書いた書物の名前も強そうです。『医学典範』。典範ですよ典範。古今東西見渡しても「典範」なんてタイトルは中々見当たりません。まさに最強の医学書ですね。
バットゥータが『三大陸周遊記』、シーナが『医学典範』を書いたことを覚えれば、後の2人は消去法で覚えられます。
イスラームの文化史の特徴・覚え方②:イブンたち以外の重要人物
ここからは、「イブン」の名を持たない重要な人物について紹介していきます。
ガザーリー
アフリカのイスラーム王朝であるセルジューク朝には、神学研究で有名な学院がありました。その名はニザーミーヤ学院。時の宰相ニザーム=アルムルクの名前に由来する由緒正しき名門校です。
このニザーミーヤ学院に、34歳という若さで学長として赴任したのが、イスラーム教研究の大家であるガザーリーでした。
当代きっての才人として至上の名誉と地位を獲得したガザーリーは、やがて既存のイスラーム教のあり方に不信感を抱き、「スーフィズム」というイスラーム神秘主義へと傾倒していきます。
その後学長の座を捨てたガザーリーは、貧民たちとともに粗末な服を着て信仰に生きたと言われています。
フワーリズミー
フワーリズミーは代数学の研究者です。
「フワーリズミー」という名前は、11世紀から13世紀にかけて中央アジアを支配したイスラム王朝・「ホラズム」に由来するもので、本人自体の名前は知られていません。
謎多き天才数学者というわけです。
フィルドゥシー
フィルドゥシーは、『シャー=ナーメ』という叙事詩を編纂した詩人です。
『シャー=ナーメ』には、イラン世界の神話や伝説・歴史が叙述されており、イランに生きた人々の思想を知ることができます。
ウマル=ハイヤーム
ウマル=ハイヤームも、フィルドゥシーと同じくイランの詩人で、『ルバイヤート』という四行詩集を著しました。
ウマル=ハイヤームは実に多才な人で、詩人だっただけでなく天文学や数学にも通じており、従来の暦を改良した「ジャラリー歴」を考案したと伝えられています。
その万能っぷりは、まさに「イスラームのダ・ヴィンチ」と言ったところですね!
覚え方
ガザーリーは、「ニザーミーヤのガザーリーはスーフィー」と唱えれば簡単に覚えられます。「ニザーミーヤ」も「ガザーリー」も「スーフィー」も音が似ていますからね。
ウマル=ハイヤームも、「ハイヤ↑ームのルバイヤ↑ート」と唱えると覚えやすくなります。
アクセントを、「ヤーム」の「ヤ」と「ヤート」の「ヤ」に置くのがポイントです。
フィルドゥシーは、無理矢理「フィルドゥシャーナーメ!」という呪文を作れば覚えやすくなります。
フワーリズミーは、「リズムのセンスあるフワーリズミーは数学的に音楽をする」と連想すると覚えやすくなります。音楽と数学って通じ合うところがあるらしいですからね。
イスラームの文化史の特徴・覚え方③:建築技術・美術・教育など
最後に、イスラームの文化を彩る建築や美術についてご紹介します。
アラベスク
アラベスクは、イスラームの礼拝所(モスク)の壁に描かれる幾何学的な模様のことです。
植物や動物の形がモチーフになっており、じーっと見つめているとクラクラしてしまうような神秘性があります。
ミニアチュール
ミニアチュールは、古代以降に出版された本の小さな挿絵のことです。「小さい絵」なので「ミニアチュール」(細密画)と呼ばれています。
ミニアチュールの技術は、中国・元の美術の影響を強く受けています。詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください。
アズハル学院
アズハル学院は、ファーティマ朝で創立された学院です。
セルジューク朝のニザーミーヤ学院と区別して覚えましょう。
覚え方
アラベスクとミニアチュールについては、資料集で図を見て覚えるのをオススメします。
どちらも印象に残る芸術なので、見ればすぐに覚えられるはずです。
アズハル学院については、「ファーティマーズハル」と繋げれば覚えられます。「フィルドゥシャーナーメ」と同じ要領ですね。
おわりに:イスラームの文化史の特徴・覚え方のまとめ
いかがでしたか?
この記事では、イスラームの文化史の特徴・覚え方について徹底的に解説しました。
文化史を覚えるときに重要なのは、前にも言ったように「いきなり全て覚えようとせず、分野別に少しずつ覚える」ということです。
急がば回れの気持ちで、ゆっくり少しずつ覚えるようにしてくださいね。
それでは!