はじめに
学校の授業内容はきちんと理解できるのに、なぜかテストでは点数が取れない……
そんな経験はありませんか?
それはもしかすると、知識量ではなく「地理的思考力」に皆さんの伸びしろがあるのかもしれません。
習得した知識を実戦でどのように生かせばよいのかを学んで、地理を極めましょう!
*この記事は、地理総合と地理探究の両方を取り扱っています。共通テストで何かしら地理を使う方は、ぜひ参考にしてみてください!
答えはすべて地形図の中
全問マークシートの共通テストでは、答えがすべて1つに定まっています。
つまり、どの問題も正答と誤答が明確だということです。
では、いったいどのようにして解答の根拠を見つければよいのでしょうか?
ここでは、共通テスト地理で頻出な地形図の読み取りの際に注意すべきポイントをご紹介します!
先入観をなくせ!
(2021年度共通テスト2次日程 地理A 第1問 問1)
皆さんはぱっと見、この河川アの上流は上側と下側のどちらだと思いますか?
実はこちら、地図上の下から上に流れる川なんです!
理由は2つあります。
まず、河川アの周辺に記載されている標高の数値を丸で囲ってみます。
上から704、721、728という数字が見つかりましたか?
川の水は高いところから低いところへと流れるので、やはりこの河川は、下から上に流れていることが確認できます。
標高は見落としがちな割にヒントになりやすいので、地形図上にある標高や基準点の数値に丸を付けると、見落としにくくなりおすすめです!
そしてもう1つ、決定的な根拠があります。
この地図記号は、堰を現しており、ダムあるいは砂防ダムを示す際に用いられます。
2本の線のうち破線が河川の上流側にくるようにする決まりがあるため、その点でもこの河川の流れの向きを判断することが可能です。
この地図記号はややマニアックな気もするので、大学の独自入試で地理を使う予定のない人は、無理して覚えなくてもいいかもしれません。
河川が常に上から下、右から左に流れるという決まりはありません。
その他にも、等高線の輪の中心がくぼんでいることもあります。
(カルデラ:下図でハイライトした部分のように、等高線の内部に縦線が入ります)
(地理院地図 日本各地の地形ギャラリー カルデラ)
自分の先入観で解くような問題は、基本的に出題されません。
客観的かつ明確な回答の根拠を、すべての解答に持てるようにしましょう!
情報は可視化せよ
山地の等高線が出てきたら、まず最初にすべきこと。
それは、「尾根をなぞる」です!
(2025年度共通テスト1次日程 地理総合/歴史総合/公共 第3問 問4)
山の外観を一気に想像しやすくなりました!
地形図の読み取りでは、頭の中でどれだけ正確に地形を再現できるかがカギとなります。
等高線を読み取る力のほか、尾根や谷を立体的に認識する力も養いましょう!!
見にくい地形図は俯瞰せよ
問題冊子の地形図の印刷がはっきりしないとき、皆さんはどうしますか?
見えにくい地形図こそ、「大まかに見る」作業が重要になってきます!
共通テストは全国の高校3年生が受験します。
受験後のクレームに対応するのは大変なので、問題作成者は答え1つ1つに、誰もが納得できるような明確な根拠を用意しています。
つまり、見にくい地形図が出てきたら、ぱっと見で答えが明らかなことが多いと考えられます。
出題者は我々の何を聞いているのか?
地形図の場所と出題テーマから連想せよ
出題者の意図をくみ取ることで、問題で求められている知識が何かがわかります。
ここでは、実際の過去問を使って解説していきます!
選択肢から推察せよ
(2020年度センター試験1次日程 地理A 第1問 問8)
こちらは、WからZの各地域においてリスクの高い自然災害を答える問題です。
WからZにそれぞれ該当する選択肢を割り振っていけば、解けそうです。
その際は、ただやみくもにWからZを1個ずつ分析するのではなく、WからZをそれぞれ比較してみてください!
本来はYに該当する選択肢を答えることになっていますが、今回はWとXに注目してみましょう。
WもXも共通して標高が比較的高い位置にありますが、Wの左隣には河川があります。
よって、河川の有無によって地形にどのような相違点が生まれるかが、WとXを見分けるカギとなりそうです。
天井川を除く河川は、周囲より標高が低いことが殆どなので、Wは谷、つまり選択肢4が該当します。
(因みに実はこの河川、W地域を過ぎたあたりからは天井川になっています。ぜひ等高線を確認してみてください!)
このように、選択肢を対比することで、問題がどのような知識を測ろうとしているのかがわかります。
解答の糸口がわからないときに、ぜひ試してみてください!
新課程の傾向
近年は、より実用的な技能を試す問題が増加しました。
実際に2025年度第1日程で出題された問題と併せて紹介していきます!
資料読解との融合
特に「地域調査」の大問では、複数の資料を用いて特定の地域を分析する力が求められます。
資料の1つ1つからわかることもありますが、複数の資料からの分析を組み合わせて解答を導くことも多いです。
他の資料で立てた仮説を地形図で検証する、あるいはその逆を行うスキルも問われます。


(2025年度共通テスト1次日程 地理総合/地理探究 第2問 問1)
資料を「使いこなす」力
2025年度の地理探究では、GISの種類と用途を組み合わせる問題が出題されました。
GISを正しく読み取る能力に加えて、GISを正しく作成する力、つまり使いこなす力も求められているといえます。

(2025年度共通テスト1次日程 地理総合/地理探究 第3問 問6)
現代技術との融合
最新技術を反映した出題も目にするようになりました。
2025年度では、陰影起伏図や3Dモデルを資料として提示し、その読み取りや他の資料と融合させた出題がありました。

(2025年度共通テスト1次日程 地理総合/地理探究 第3問 問2)

(2025年度共通テスト1次日程 地理総合/歴史総合/公共 第3問 問3)
おわりに
いかがでしたか?
地理総合も地理探究も、知識の一筋縄ではいかない、独特の科目です。
言い換えれば、地理的思考力さえあれば、知識量に頼らずとも得点できるチャンスがあります!
地図にある情報と出題者の意図を駆使して、地理を得点源にしちゃいましょう♪