はじめに
記憶は取り出して見ることができないものなので、本当に覚えたのかどうか不安になることはありませんか?
また一生懸命覚えても次の日には思い出せず、悔しい思いをした経験をしたことがある人も少なくないでしょう。
多くの受験生を悩ませるのは暗記ですが、どんな教科も基礎知識があってこそ応用力が発揮されます。
しかし、心理学者エビングハウスの導いた「忘却曲線」によると、皆さんがせっかく覚えた事柄も、わずか1時間後には50%以上を忘れてしまい、1日後にはもはや25%しか覚えていないそうです。
もちろん、暗記の方法や内容によって差はありますが、人間は忘れる生き物なのです。
しかしながら、受験では本番まで覚えていなくてはいけないことが大量にあります。
この矛盾をどうするか、という受験生の永遠の悩みを克服してきた東大生が記憶の仕組みを知った上で暗記を効率的に進め、成績や入試の点数に結びつけるための方法を紹介します!
【暗記の前に】記憶の仕組み
暗記を効率よく行う方法を知る前に、まずは記憶がどのようになされているのかについて知っておきましょう。
これを知っておくことで、暗記法をより理解しやすくなるはずですよ!
記憶の種類
記憶には大きく3種類があります。
- 感覚記憶:風景や言葉など、外からの刺激を受けて数秒程度無意識に覚えていること
- 短期記憶:感覚として記憶したものを意識的に情報として扱い、一時的に覚えていること
- 長期記憶:短期記憶であった情報を脳内で半永久的に覚えていること
この3つですね。おそらく短期記憶と長期記憶はどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
これらは脳内に記憶できる時間によって分けられていて、上から順に記憶できる時間は長くなっていきます。
僕たちが目指すのは長期記憶で、テストに出題される問題に正しく答えるためにはいかに効率よく知識を長期記憶にするかが重要になってきます。
記憶に関わる忘却曲線
みなさんは、「エビングハウスの忘却曲線」というものを聞いたことがありますか?
下にある図のように示されるものですが、簡単に説明すると「時間が経過するごとに、記憶したものの何%を、記憶したままでいられるか」ということです。
画像参照:http://www.objectfanatics.com/ekutan.html
この忘却曲線によると、記憶した知識は20分で40%、1時間で50%以上は忘れてしまうようです。
しかし、適切な時間帯で復習をすることで忘れにくくなり、長期記憶にシフトするのです!
東大生の実践する基本的な暗記法
東大生ももちろん皆誰しもが飛び抜けた暗記法を実践しているわけではありません。
中には皆さんも普段からやっているような方法で、地道に1つ1つ覚えている人もいます。
まずは、そんな基本的な覚え方から見ていくことにしましょう。
暗記法その1:声に出す
記憶の定着において最も効果的な方法は「音読」だと言う人もいるほど声に出すことは重要です。
声に出すことで脳が活性化され、暗記の効率が上がるのです。
暗記法その2:体を使って覚える
「暗記=静かにするもの」だと思っていませんか?暗記が得意な人、勉強ができる人は、じっと座りながら勉強しません。
1番手取り早いのは、歩きまわってつぶやきながら勉強することです。
単語帳を読み上げながら廊下をうろうろしていると、血液の循環が良くなり脳の働きが活性化するため、ただ見ているだけより記憶として定着しやすいです。
そのほかにも、もちろん書いて覚えようとすることも重要です。最近では青ペンで書いて暗記することも流行っていますよね。
例えば僕がやったのは、いつもより綺麗に書くこと、利き手と反対の手で書いてみること、筆ペンで書いてみることなどがあります。
いつもならシャーペンやボールペンで素早く書くものを、あえてゆっくり丁寧に書くことで「あ、あの時丁寧に書いたやつだ」と思い出すヒントになることもあります。
暗記法その3:目を閉じる
ある事物を暗記したいときは見たり、音読したりした後に目を閉じましょう。
そして、数秒後に目を開けて、覚えたことを思い出してみてください。
一度視界を遮って情報を遮断することで、最後に見聞きした情報が定着しやすくなるのです。
暗記法その4:一度に多く記憶しない
人間の脳は一度に多くのことを記憶できない構造になっています。
そのため、一度に多くのことを暗記しようとするのではなく、数回に分けて暗記するようにしましょう。
暗記法その5:昼寝をする
人間の記憶力は正午をピークに、そこからは低下していくと言われています。
そのため、午後に少し昼寝をすることで、正午以降の記憶力を上げることが出来ます。
昼寝に関する詳細記事もあるのであわせてご覧ください!
暗記法その6:知識を関連させて覚える
実は「エビングハウスの忘却曲線」には落とし穴があります!
エビングハウスが実験で被験者に覚えさせた知識とは、意味のない3文字のアルファベットでした。
しかし、高校生のみなさんが覚える知識は全て意味があるものですよね。単語の意味や、人の名前、出来事、全て他の知識と関連性を持って存在しているものです。
そのため、すでに長期記憶として覚えた知識と関連させたり、これから覚える知識を整理して暗記することで、短期間で忘れてしまう量を減らしてしまいましょう。
例えば、これから「ライオン、はと、かえる、ぞう、へび、いぬ」という動物を覚えるとします。
この時、動物の名前を出てきた通りに順番に覚えるのは、あまりいい方法ではありません。
まずは、自分が持っている知識を使って関連づけてみましょう。
- ライオン、ぞう、いぬ:哺乳類
- かえる、へび: 爬虫類
- はと:鳥類
このように考えると、覚える際には名前だけ覚えるのではなく、「哺乳類と爬虫類と鳥類がいる」ということを念頭に置いておくと暗記がしやすくなります。
さらに、ジャンルとして分けるだけではなく、数として上から「3つ、2つ、1つ」と覚えるものがあることも意識できたらなおいいですね。
そうすれば、この5つの動物の名前を思い出す際に、「哺乳類と爬虫類と鳥類がいたな、そして覚える数が3、2、1だった」ということが記憶のヒントとなり、時間が経っても思い出しやすくなります。
今回は馴染みのある5つの知識を覚えるだけなので、工夫をしなくてもすぐ暗記できるかもしれません。
しかし、世界史や日本史、英語など覚えるものが大量で馴染みもない場合は、このような工夫をすることが非常に大切になります!
暗記法その7:適切なタイミングで復習
忘却曲線によると、記憶した知識は復習しなければ1週間で80%近くが失われてしまいます。
しかし、1日後に復習をして再び記憶し直せば、1週間経っても60%以上は忘れずに残すことが可能です。
そして1週間後にまた復習すれば、その記憶はその後数ヶ月の間頭の中にとどめておくことができます。
そのため、授業の復習はその日のうちに少しでもしておくのが良いでしょう。
そうすれば、週末に一気に復習し直しても忘れる度合いが低くなり、定期テストや模試で一夜漬け、なんてことにならずに済むはずです。
とは言っても、その日勉強したものを1日以内に復習し、さらに1週間後にまた復習するのは時間的にも厳しいですよね。
すぐにでも覚えた方がいい知識とそうでない知識を判別して勉強することも大事ですが、そもそも忘れにくいように暗記することも重要です。
暗記法その8:ミニテストをする
暗記とはまさにインプットすることではありますが、実はそれと同じくらいアウトプットすることが大事なんです。
「よし、完璧に覚えたぞ」と思っても、問題に出されると解けない、なんてことはよくあります。
こういったことをなくすには、ミニテストを定期的にすることが効果的です。
学校の単語テストや定期テストもいい機会ですし、自分で単語の問題を作ることや赤シートを使った復習を取り入れるといいですよ。
逆にいうと、初めから勉強する際にもアウトプットしやすいような問題集などを使うと暗記がはかどります。
次に問題集を買う機会があれば、穴埋めノートや章末問題がついたものを選んでみてはどうでしょうか?
アウトプットをしやすいノートの作り方はこちらの記事を参考にしてください!
【東大生おすすめ】究極に効率的な暗記法
ではここからは東大生が実践するスーパー暗記法をご紹介していきます。
スーパー暗記法その1:Retrival暗記法
まずは、2008年に科学雑誌Scienceで発表された「The Critical Importance of Retrival for learning」という論文で紹介された暗記法を紹介します。
“Retrival”とは「なくした物を取り戻す」という意味。つまり「忘れたものを思い出す」というアウトプットを最も重視するのがこの暗記法です。
「暗記」というと、長い間、単語帳や参考書を何度も読んだり(インプット)、参考書に線を引いたり、同じ単語を何回も書いたりすることが大事だと思われてきました。
しかしこの論文の発表後、インプットだけでは暗記に効果がないということが分かったのです。
ではどのように「Retrival」すればいいのでしょうか?論文によるポイントは以下の4つです。
- インプットしたすぐ後の「思い出し」が特に有効
- 「忘れかけていたけど、なんとか思い出せた」という状況が効果的
- 5~7回「思い出す」ことで記憶はほぼピークに達する(6回思い出すのと10回思い出すのではほぼ差がない)
- これで100%完璧に記憶できるわけではない
この4ポイントに沿って考案した暗記法を次の項目で紹介します!
Retrival暗記法を使った暗記の仕方
重要なことは、必ず全項目を1つ1つ思い出すということです。
すなわち、正しく思い出せたものを除外していくようなやり方はせず、全部に関して真面目に思い出してください。
人間は正しく思い出せると、「もう完全に覚えたから大丈夫」と考えがちです。
しかし論文で記憶に関する自己評価が全く当てにならないことが実証されました。
サボらずにこの方法にしたがってみてください。
- 5~10分程度で30~50項目をインプット
- 上から順に意味(一問一答なら答え)を隠して思い出していく
- 単語(一問一答なら問題)を隠して思い出していく
- 1週間後に暗記テストとして②を行う
一番下までいってから答え合わせをします。これを計6回繰り返し、1回にかける時間は5分程度です。
一番下までいってから答え合わせをします。これは1回だけ。一週間後の日付を「暗記ノート」に記載します。
この時は思い出してすぐ答えを見てOK。
5秒以内に思い出せなかったもの、間違えたものは「補習ノート」(普通のB5ノート)に書き出します。
「補習ノート」を用いてまた①~④を行います。
スーパー暗記法その2:構造化暗記法
あらゆる教科で知識の構造化に威力を発揮するのが「目次」です。
そもそも最大限構造化されているので、目次を読むことで教科全体の流れを把握したり、覚え漏れ学習漏れをなくして弱点を予防したりすることもできます。
例えば、AKB48の顔と名前を覚えるとしたら、ランダムに覚えるより、チーム別かつ年齢別などにした方が明らかに覚えやすそうですよね。
このように階層化することで、暗記が効率的になります。
他にも例えば、地学で地質年代を覚えるなら「古生代はカンブリア紀とオルドピス紀と……」と覚えるのではなく、「古生代は6つ、中生代は3つ、新生代は3つ」と先に大枠と項目数を覚えることで、思い出すときに「もう1コあったはずだけどなんだっけ……?」といった感じでモレ無く思い出すことが容易になります。
スーパー暗記法その3:五感フル活用暗記法
目・口・耳・鼻・体全てを使うことで、知識に関連する情報を増やして覚える方法です。
書いたり声に出したりするだけでなく、全身をフル活用することが重要。
脳科学者の茂木健一郎さんも「鶴の恩返し暗記法」といって、他の人に見られては恥ずかしいくらい大声を出したり、歩き回ったり転げ回ったりして覚える方法をオススメしています。
以下では、五感を使った勉強法を紹介したいと思います!
覚えたい内容を毛筆で美しく書きつづる
勉強にシャーペンや鉛筆を使っているようじゃまだまだです。
毛筆を使うことで手の触覚にインパクトを与えましょう。
より「書くこと」に集中して勉強ができるかも??
携帯の待ち受けを知らない単語などの写メにする
現代人の必需品である携帯電話。
みなさんも1時間に1回は開いているのではないでしょうか。
ではその機会をフルに勉強に活用しましょう!
前日単語帳ででチェックして覚えてなかった英単語を載せておく、などとすると効果的。
歌にして路上ライブで熱唱
覚えたい英単語を歌にして街に出ましょう。
人に見られるプレッシャーであなたが覚えられるのはもちろん、通行人にも知識を共有できる、一石二鳥の方法です。
テニスボールに覚えたい単語を書いておく(打つたびに覚える)
運動部出身で、勉強しているとどうしてもテニスボールやサッカーボールに手が伸びてしまう人。
好きなスポーツと勉強が同時にできると最高ですよね!?
この方法はそんな欲張りなあなたのためのものです。
お風呂で朗読して自分の美声に浸る
お風呂は音が良く響き、自分の声を耳で聞くことのできる最高の環境です。
一日30分のこの時間をフルに活用できるのは受験生にとって嬉しいですよね。
山に向かって大声で覚えたいことを叫び続ける
並の音読に飽きてきたら、山に行きましょう。
誰にも迷惑にならないところで、過去最大のボリュームの音読をしましょう。
腹筋しながら発音する
勉強のしすぎで体がなまってきたな……と思ったらこの方法。
腹筋をしながら音読することで、頭に、筋肉に英単語を染み込ませましょう。
スーパー暗記法その4:バーチャルクラス暗記法
歴史や数学などストーリー性のある暗記で重要なのは、「大まかな流れ」と「キーポイント」の2つを押さえることです。
そこでオススメなのが1人で模擬授業をすることです。
先生が授業をする時は、全体の流れを踏まえた上で、間違えやすいところや重要なところは強調し、さらなる理解のために補足の情報を入れたりします。
そして、そういうところが、学校のテストや入試で出題されるのです。
大まかな流れとキーとなる部分が頭に入ってなければ授業はできません。すなわち、授業がしっかりできれば、その部分は覚えていると言えるのです!
また、ロザンの宇治原さんも言っていましたが、模擬授業をすることで、自分が分かっていない部分を即座に認識できるというメリットもあります。
スーパー暗記法その5:セパレーション暗記法
長めの文章を覚える時に有効なインプット術です。
「合格サプリは / 東大早慶などの / 現役大学生が作る / 新感覚受験情報誌です。」のように意味の区切りにスラッシュを入れ、意味の塊ごとに覚えていきます。
先に文の構造が頭に入るので、例文暗記などにオススメです。
スーパー暗記法その6:流し読み暗記法
特に理科や社会では教科書内容を暗記するほど理解することが重要です。
まずは読む回数を増やすこと。このとき、じっくり読む回と流し読む回を交互に行うことが大事です。
流し読む時は、常に次の展開を「思い出し」ながら読んでください。
また、流し読みはスムーズさと素早い理解が大事。新聞や現代文の教材などで新しい文章を次々読むくせをつけ、速読を身につけましょう。
最後に
いかがだったでしょうか?
暗記の仕方には人それぞれあり、自分にあったやり方を見つけることがもっとも効率よく覚えるコツです。
それを見つけるためにも、ぜひこの記事に書かれた内容を参考にしてほしいです。
日本史・世界史の具体的な暗記法についての記事もあわせて見てくださいね!