早稲田大学人間科学部の研究紹介!〜「科学史・科学論」研究室から〜

はじめに:早稲田大学人間科学部では何を研究できるのか?

この記事をご覧になっている方は、少なからず早稲田大学人間科学部に興味を持っていることでしょう。

人間科学部って、「文理の境界を越えて色々な分野を研究できる!」みたいなイメージがありますが、具体的にどんな研究ができるのかについてはイメージしにくいですよね。

そこでこの記事では、人間科学部で「科学史・科学論」という研究室に所属する私が、人間科学部でできる研究について紹介していきます。

人間科学部に興味がある人、人間科学部を志望する人はぜひ見てみてくださいね〜!

早稲田大学人間科学部でできる研究

この記事では、初めに人間科学部でできる研究を種類別に紹介し、その後具体的な研究方法について、哲学専攻を例に説明します。

人間科学部の研究は大きく分けて

  1. 環境系
  2. 健康福祉系
  3. 情報系

の3種類に分かれているので、順番に説明していきますね。

この内容を読んで、より詳しく人間科学部の研究を知りたくなった人は、このリンクから公式ホームページをご覧ください。

人間科学部でできる研究①:環境系

環境系で研究できる領域は以下の3領域です。

  1. 地域・地球環境科学
  2. 人間行動・環境科学
  3. 文化・社会環境科学

①の地域・地球環境科学では、持続可能な社会を実現するために、自然科学・社会科学的な視点から環境問題を捉えて研究を進めていきます。

②の人間行動・環境科学領域の研究は、人間と環境の適切な関係性を、心理学と建築学の知見を使って考える研究です。

③の文化・社会環境科学では、今日の世界における社会と文化をめぐる問題について、実地調査や文献調査を通じて研究を行います。私の研究室はこの領域に属しています。

人間科学部でできる研究②:健康福祉系

健康福祉系も、環境系と同じく3つの領域を抱えています。

  1. 健康・生命医科学
  2. 健康福祉科学
  3. 臨床心理学

①健康・生命医科学研究領域では、人間の健康に関する医学的な専門知識を身につけ、人間の心身の健康を促進するための研究を行うことができます。

医学部と看護学部を融合させたバージョンと考えてください。

②の健康福祉科学研究領域では、あらゆる市民が安心して暮らせる社会を実現するための研究を行います。

①との違いは、必ずしも医科学的な視点で研究するわけではないという点です。例えば、健康福祉科学研究領域の研究の中には、「よりよく生きるとは何か?」というような哲学的な研究も含まれています。

③の臨床心理学研究領域は、臨床心理士になるための学習・訓練を積む研究領域です。ただし、実際に臨床心理士になるには修士課程に進む必要があります。

人間科学部でできる研究③:情報系

情報系には、以下の2つの研究領域があります。

  1. 感性認知情報研究システム
  2. 教育コミュニケーション情報科学

①感性認知情報研究システムでは、人間の感性が働くプロセスや、感性に働きかける機械の設計などについて研究することができます。

②教育コミュニケーション情報科学研究領域は、現代の教育やコミュニケーションのあり方を、情報技術を駆使してアップデートする研究を行う領域です。

コロナ禍によって注目されるようになったテレワークやデジタル教育の技術について学ぶ研究領域とお考えください。

早稲田大学人間科学部の研究の実態(哲学専攻の場合)

以上見てきたように、人間科学部では、文化・社会的研究から理工学的研究・医科学的研究まで「人間」に関わる包括的な研究を行うことができます。

ここからは、人間科学部に属する研究室の研究の具体的な進め方を、私が所属する「科学史・科学論ゼミ」での哲学研究を例に説明します。

研究領域が違えば、当然研究の方法も変わってくるので、あくまで一例としてご覧ください。

人間科学部での哲学研究①:文献の精読技術を高める

私が所属する研究室は、環境系の文化・社会環境科学研究領域に属する「科学史・科学論」ゼミです。

このゼミでは、近代文明を作り出した科学について、その根底にある思想や、科学がたどってきた歴史を文献資料から読み解き、研究することが求められています。

そのため、学部3年生になって「科学史・科学論」ゼミに配属されたら、まずは科学に関する思想や歴史をテーマとした文献の読み方を教わります。

「本くらい自分で読めばいいじゃん」と思うかもしれませんが、素人が専門書を読んだところで素人くさい読み方しかできません。

筆者の意図を汲み取って専門書を読むには、専門家である先生方に読み方を教わるのが一番いいのです。

科学に関する思想・歴史の専門書を読む訓練を半年間続けたら、いよいよ本格的に研究活動が始まります!

人間科学部での哲学研究②:研究テーマを決める

「科学史・科学論」ゼミで本格的に研究活動が始まるのは、学部3年の11月くらいです。

初めに、研究テーマを見つけます。

「科学史・科学論」ゼミで卒論のテーマとして選択できる学問領域は、歴史もしくは哲学です。「科学史・科学論」という名前ですが、内容は科学でなくても構いません。

私はここで、かねてから関心のあったフランスの現代思想家・エマニュエル=レヴィナスの思想を研究テーマに設定しました。

人間科学部での哲学研究③:先行研究を分析し、研究課題を決める

研究テーマが決まったら、そのテーマに関する先行研究を調査し、具体的な研究課題を決めていきます。

研究テーマが、例えば「レヴィナスの思想」というアバウトなものであるのに対して、研究課題は

「『顔』という表現に着目した、レヴィナスの著作『全体性と無限』における女性論再解釈」

などのようにかなり具体的なものになります。

「研究テーマ」を選び、そのテーマに関する先行研究を片っ端から調べて行って、まだ研究されていない「研究課題」を見つける、というわけです。

口で言うのは簡単ですが、ゼミの研究で一番大変なのはこの段階です。

というのも、

「まあ大体200〜300件くらいは先行研究調べてほしいよね」

とゼミの担当教官に言われているからです。

特に私のように海外の思想・歴史を研究する場合、日本語文献だけでなく、英語文献とその国の言語で書かれた文献(私の場合はフランス語)を調査しなければなりません。

11月から翌年4月にかけて、ひたすら文献を読んでいきます。この先行研究調査は結構大変な作業です……。

人間科学部での哲学研究④:手順に従って論文を書く

研究課題が決まったら、実際に論文を書いていきます。

論文を書く流れは大体以下の通りです。

  1. 序論で研究課題を主張し、その課題を解くためのアプローチを示す
  2. 序論で示したアプローチに従って、本論で課題に対する答えを示す
  3. 結論で自分の主張をまとめる

この中で一番長い時間をかけるのは①です。課題に対するアプローチを間違えたら、課題を解けなくなって結局全てやり直すことになりますからね。

逆に、①でいいアプローチを考えられれば、あとはスムーズに進みます。先生もアプローチの考え方については厳しく指摘してきますが、グッと堪えて考え続けましょう。

おわりに:人間科学部での研究内容のまとめ

いかがでしたか?

この記事では、人間科学部でできる研究の内容と、実際の研究の仕方について解説しました。

人間科学部では、文字通り「人間」に関する包括的な研究を、人文科学・社会科学・自然科学・医科学などの知見から分野横断的に行うことができます。

ご自身の興味に合わせて研究領域を選択して、自分にしかできない「人間」の研究をしてみてくださいね!

それでは!!

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