はじめに
こんにちは。ライターの山縣です。
突然ですがみなさん、場合の数/確率は好きですか?
苦手意識がある人はもちろん、得意な人でも問題の設定が複雑になると一気に解けなくなってしまう方、たくさんいるんじゃないでしょうか。
今回は、複雑な設定がある場合の数/確率の問題について考えていきたいと思います。
目次
【場合の数/確率】問題設定謎すぎ問題
さて、場合の数/確率の問題では、コインや色付きの玉を使ったゲームが題材になることがありますよね。
でも、たまに疑問に思うことがあるんです。
そもそもなんでそんなゲームをやる羽目になっているんだ?
気になって問題演習どころではありません。
そこで、私なりに理由を考えました。
きっと、こんなストーリーがあったのです。
【場合の数/確率】多分こんなやりとりがあった
ーバチンー
はじめに、お二人にはある予想をして、所定の紙に自然数を記入してもらいます。その紙は操作が終了したときに効力を発揮します。
次に、この投げたとき表裏の出る確率がそれぞれ1/2のコインをAさんに持っていただきます。
そして、次の操作を繰り返してもらいます。(i) Aがコインを持っているときは、コインを投げ、表が出ればAに1点を与え、コインはAがそのまま持つ。裏が出れば、両者に点を与えず、AはコインをBに渡す。
(ii) Bがコインを持っているときは、コインを投げ、表が出ればBに1点を与え、コインはBがそのまま持つ。裏が出れば、両者に点を与えず、BはコインをAに渡す。A, B のいずれかが2点を獲得した時点で、2点を獲得した方の上がりとします。
例えば、コインが表、裏、表、表と出た場合、この時点でAさんは1点、Bさんは2点を獲得しているのでBさんの上がりです。上がったら、先ほど記入した紙を確認します。操作終了までの試行回数が上がった人の記入した数と同じだった場合、勝利です。
上がった方が記入していた数と操作終了までの試行回数が一致しない場合、上がらなかった方が先にコインを持つ形で同じ操作を繰り返してください。以上をお二人のどちらかが勝利するまで続けていただきます。
尚、記入する数字は一度決めたら変更はできません。
【場合の数/確率】Aになりきってゲームに勝つ方法を考えてみた
せっかくなので、Aさんのつもりでゲームをやってみることにします。
今から私はAさんです。
私は勝率を最大化させるような数を宣言する必要があるようです。
ということで、最適な自然数nについて考えてみることにします!
【場合の数/確率の問題解説】①上がることができる状況
私が上がるまでの両者が得点する順番は、以下の三通り考えられます。
①Bが1点も取らず、Aが2点とる
②BAAの順番で点数をとる
③ABAの順番で点数をとる
【場合の数/確率の問題解説】②ちょうどn回目でAが上がる確率を考える
ちょうどn回目の試行でAが上がる確率をP(n)とおいてみましょう。
このP(n)を求めて、その確率を最大化させるようなnを宣言できれば、Aは勝ちやすくなるのではないでしょうか!
①Bが1点も取らず、Aが2点とる場合
n回目にAが上がるとき、コインを投げた人を並べると以下のようになります。
AB→AB→……→AB→A(Aが得点)→AB→……AB→A(Aが得点)
Aが裏を出してBにコインが渡り、またBが裏を出してAにコインが渡るという、どちらにも点数が入らない[AB]の並びに加えて、2回Aが得点するところがあるので、nは偶数です。
ここで、コインを投げる人の並び方が何通りあるかを考えます。
Aの1回目の得点はどのタイミングでも良くて、2回目の得点があると操作が終わります。
つまり、1個の[A]と(n-2)/2個の[AB]のかたまりで合計n/2個を一列に並べ、最後に[A]を並べる場合の数と考えられますから、並べ方の総数は以下の通りです。
$$\frac{(\frac{\ n}{2})!}{1!(\frac{\ n-2}{2})!}=\frac{\ n}{2} (通り)$$②BAA・③ABAの順番で点数をとる場合
②のBAAの順番で点数をとる形でn回目にAが上がるとき、コインを投げた人を並べると以下のようになります。
AB→……→AB→ABB(Bが得点)→AB→……→AB→A(A1点目)→AB→……→AB→A(A2点目で上がり)
また、③のABAの順番で点数をとる形でn回目にAが上がるとき、コインを投げた人を並べると以下のようになります。
AB→……→AB→A(A1点目)→AB→……→AB→ABB(Bが得点)→AB→……→AB→A(A2点目で上がり)
したがって、これらのとき、nは5以上の奇数です。
ここで、コインを投げる人の並び方が何通りあるかを考えます。
1個の[A]と1個の[ABB]と(n-5)/2個の[AB]を一列に並べ、最後にAを並べる場合の数と考えられますから、並べ方の総数は以下の通りです。
$$\frac{(\frac{\ n-1}{2})!}{1!1!(\frac{\ n-5}{2})!}=\frac{\ (n-1)(n-3)}{4} (通り)$$また、コインの表裏が同様に確からしいこととゲームのルールを鑑みると、コインを投げる動作を行う人は、動作ごとに1/2の確率で変化し、1/2の確率で変化しません。
以上より、求める確率P(n)は、
・nが偶数のとき、$$P(n)=\frac{\frac{\ n}{2}}{2^{\ n}}=\frac{\ n}{{2}^{\ n+1}}$$
・nが5以上の奇数のとき、$$P(n)=\frac{\frac{\ (n-1)(n-3)}{4}}{{2}^{\ n}}=\frac{\ (n-1)(n-3)}{{2}^{\ n+2}}$$
【場合の数/確率の問題解説】③P(n)が最大になるようなnを求める
ふう。この理不尽な状況でよく頑張ったと思います。
さて、P(n)が求まったので、あとは確率を最大化させるようなnを考えればいいだけです!
今回は自然数だけを考えればいいのと、分母が指数関数で分子が一次or二次関数なので、数字を代入していけば答えがでそうです。
なぜなら、分母の増加の仕方が分子を卓越すると考えられるからです。
どこかで極大してそこから単調減少する形になりそうですね。
・nが偶数のとき
$$P(2)=\frac{1}{4}、P(4)= \frac{1}{8}、P(6)=\frac{3}{64}$$
したがって、n=2のとき、P(n)は最大値1/4をとります。
・nが5以上の奇数のとき
$$P(5)=\frac{1}{16}、P(7)=\frac{3}{64}、P(9)=\frac{3}{128}$$
したがって、n=5のとき、P(n)は最大値1/16をとります。
以上より、P(n)の最大値は、P(2)=1/4
よくやりました。私!
【場合の数/確率】ゲーム本番開始
あれあれ、Bさんはかなり焦っているようです。
時間内に最適数を導けなかったのでしょうか。
(時間が経過)
【場合の数/確率】みなさんへの挑戦
今回、勝利したのはなんとBさんでした。
勘の良い人はすでに気がついていると思いますが、このゲームは先にコインを投げる方が圧倒的に有利です。
それは、Aさんが複雑な計算を通して始めの2回で表表を出すのが最適だと算出したことにも現れています。
一方、2回目以降のゲームでは先にコインを投げる人が変わるという条件が存在します。
さて、あなたがもしBさんならどの数字を記入しますか?
ぜひ考えてみてください。
おわりに:ネタばらし
確率問題の設定には謎のゲームがよく出てきますが、それぞれにこんな背景があったらもっと楽しいのに、と思います。
ところで上の問題、見たことがある人がいるかもしれません。実は、今回扱った問題は2013年度の東京大学文系数学第四問を元にしたものです。
これくらいの問題を初見で解けるようになると素敵だと思います。
東大を受ける人も受けない人も、遊び心を忘れずにぜひいろいろな問題にチャレンジしてみてくださいね。
ほんの少しでも本記事がみなさんの楽しい学習に寄与できれば幸いです。