はじめに
皆さんは化学にどんなイメージを持っていますか?
難しい・暗記が多い・実験が多くて大変などとマイナスイメージを持っている人もいれば、楽しい・実験で色の変化反応を見るのが面白くて化学が好きな人等、人によって様々ですよね。
理学部化学科で勉強する筆者が、現役大学生へのアンケートも踏まえつつ、化学の面白い部分と辛い部分、化学を勉強する意味を説明します。
目次
現役大学生が高校生時代に化学に感じた第一印象
【高校生時代の第一印象】①暗記・計算が多くてつまらない
現役大学生に高校時代の化学について印象深い点を尋ねたアンケートでは、化学は暗記量が多いという声が多かったです。
確かに、無機化学では化合物の色や式をそのまま覚えたり、有機化学では芳香族の物質名や反応をそのまま覚えたりします。
問題を解くために、暗記から始めなくてはいけないのは大変ですよね。
また、化学の問題は意外と計算が煩雑で、気を付ける部分があって大変です。
例えば有効数字で「どこの桁で四捨五入をするのか」分からなくなりがちですよね。
しかし、有効数字は実験で正しく結果を伝えるために重要なので、理解する必要があります。
他にも理論化学の結晶の充填率を求める計算など、化学の勉強で暗記と計算が大変だと感じる人は多いです。
【高校生時代の第一印象】②反応の中身や実験が面白い
次に、「やっぱり化学が好き!」と感じる瞬間を大学生に教えてもらいました。
1つ目は化学の内容が独特で特別感があるということです。
化学は目に見えないものを勉強します。例えば電気分解の電子の移動は目に見えませんよね。
目に見えないけど、あると信じられるのは、確かに他の教科にはないポイントだと思います。
また、molなどの新しい概念を使いこなせるようになるのが嬉しいという声がありました。
最初は新しい考え方に慣れないこともありますが、問題を解いていくうちに便利さが分かるので面白いですね。
2つ目は実験で色んな反応が見られることです。
色がきれいな反応を教科書で見ると実際にやってみたくなったり、なぜ色が変わるのかについても知りたくなります。
例えばFe²⁺やFe³⁺の反応は色が変化するので、写真がとても美しいです。
自分で実際に実験すると反応の進行度で色が変わってくるのも面白いところですね。
また、人に見せる機会があれば感動を与えることもできますよ。
実際、筆者が高校の文化祭の出し物でルミノール反応をしたときに歓声が上がって嬉しかったのを覚えています。
ちなみに、ルミノール反応はヘスの法則を学習する時に登場します。ヘモグロビンの粉末に過酸化水素水を加えると、青色の光を発して綺麗です。
現役大学生に聞く化学のわくわくする部分と辛い部分
化学のわくわくする部分:元素のキャラクターが豊富
アンケートで聞いた化学のわくわくする部分・化学の勉強が楽しくなるヒントを紹介します。
まず、暗記が、カードなどをコレクションする感覚に似ていて楽しいということです。
例えば無機化学では、元素記号を20種ほど覚えた後にそれぞれの元素の特徴を学びます。
元素同士似ている点や違う点、属性等があるのは、ゲームのキャラクターを集めるのと似ていて、楽しいという意見がありましたよ。
もし今元素の暗記に苦しんでいる人がいたら、暗記の見方を変えて勉強を楽しんでみてくださいね。
また、元素が含まれる化合物の合成のしかたを学ぶのはレシピを見ているような感覚にもなれます。
例えば、Caが含まれる化合物はCaCO₃、CaO、Ca(OH)₂などと数が多く、反応式もたくさんあります。
一つの食材(元素)から沢山の料理(化合物)が生まれる様子を学ぶのは楽しそうだと思いませんか?
また、身の回りの製品は全て化学を使って説明できます。
物の成り立ちや反応を知っていくのが面白いです。また、食品や化粧品の成分表示を見るのも楽しくなりますよ。
化学に対する本音:レポートと知識の暗記が必要で大変
ここからは、化学を勉強する上で辛いことを紹介します。
まず、実験やレポートに時間がかかって大変なことです。
実験は1年生の学生実験でも3~4時間はかかります。立ちながらやることも多いので体力も必要です。
また、レポートは、書く項目が多く、参考文献を読む必要もあるので時間がかかります。
そして、実験の考察も論理的な文章でまとめなければなりません。
大変ですが、大学3、4年ごろの研究が本格化するときに必須になる力なので、みんな頑張っています。
また、化学の座学の授業でとても難しい数学が出てきて、化学というよりもむしろ物理や数学を学んでいるように感じるときは大変です。
座学では反応機構を知ることができ、高校化学で覚えた反応の答え合わせをするような感覚で楽しいのですが、先の知識が必要になるので、すぐに知ることができないのがもどかしく感じることもあります。
実際に、高校の有機化学で登場するクメン法の反応機構を知ることができたのは大学3年生になってからだそうです。
そんなに複雑な化学反応が比較的身近で起こっているなんて、化学って奥が深いですね!
化学科の筆者が考える化学を勉強する意味とは
やはり化学科の筆者は、皆さんに化学の勉強を好きになってほしいです!
そこで筆者が考える化学を勉強する意味を紹介します。
【化学を勉強する意味】①自分が学んだ知識を活かせる
化学は他の学問、例えば生物学の学習の助けになります。
生物学を学ぶときには高校化学でも登場する浸透圧や有機化学の知識も使います。
そして、化学式を学べば、食品添加物・化粧品の成分が分かります。
自分の体に合うものを買ったり、効能も確かめながら買えます。ネットに出回りやすい非科学的な情報に惑わされにくくもなりますよ。
このように日々の生活に直接的に知識を応用できるものもありますが、実はあまり意識していない部分でも化学が役立っているのです。
それは、空気中の窒素と二酸化炭素からアンモニアを合成する、ハーバーボッシュ法の発見です。
生成物のアンモニアは、臭くて嫌われがちですが、実は小麦などを育てる肥料として用いられています。そのため、ハーバーボッシュ法は「空気からパンを作る」と言われるすごい発明なのです。
これは、食品が溢れている今の時代からは想像つきにくいですが、当時は空気から肥料を作れることはとても便利だったと推察します。
【化学を勉強する意味】②将来の生活が化学の力で変わる
日本では現在カーボンニュートラルな社会を目指す取り組みを進めています。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出量と吸収量を一致させることで地球温暖化防止に繋げる考え方のことです。
取り組みの一部としては、燃料電池の研究などがあります。燃料電池は比較的簡単な仕組みで、高校化学でも電気分解を学習するときに登場しますよね。
このように化学は生活を豊かにするために役立ちます。
おわりに
化学の面白い部分と辛い部分の2つの面に触れたので、化学という科目の具体像が分かりやすくなったのではないでしょうか。
本記事で化学に少しでも興味がわいたり身近に感じてもらえたりしたら嬉しいです。