内接円の半径の求め方
三角形の内接円の半径を求める方法については、学校の授業でもあまり強調して説明されません。
内接円の半径を直接求める公式があるのですが、覚えづらい形をしているので、丸暗記するのは危険です。
だから、どのような仕方で内接円の半径の長さを求めればよいか、自力で公式を導き出せるようにしておくと良いでしょう。
公式を導くというと難しそうですが、考え方さえわかれば全くそんなことはありません。
内接円と外接円の区別についても、ここで合わせておさえておきましょう!
目次
内接円と外接円の違い
内接円と外接円の区別は迷わず行えるようにしておくべきです。
ただ、「内に接する円」「外に接する円」などと言葉じりで覚えようとしてもうまくいきません。定義だけでなく、図のイメージを頭に入れておくことをおすすめします。
内接円から順に見ていきましょう。
内接円とは
三角形の内接円とは、その三角形の3つの辺すべてに接する円のことです。四角形なら4つの辺に接する、五角形なら5つ、といった具合に増えていきます。
三角形のなかに1つの円がすっぽりはまっている図をイメージするとよいでしょう。
外接円とは
三角形の外接円とは、その三角形の3つの頂点をすべて通る円のことです。四角形なら4つの頂点を通る、五角形なら5つ、といった具合に増えていくのは内接円と同様。
三角形が1つの円にすっぽりはまっている図をイメージするとよいでしょう。
一見すると、三角形が円の内に入っていることから、「これって内接円?」と迷いがちです。これは外接円ですよ! 言葉じりだけで覚えると危ないというのがおわかりいただけたかと思います。
さて、以後は内接円に話題を絞りましょう。
内接円の半径を求める公式
内接円の半径を求めるときに知っておくべき2つの公式
内接円の半径の長さを求めるときには、以下の公式を用います。
\[r=\frac{2S}{a+b+c}\] ※\(r\):内接円の半径、\(S\):三角形の面積、\(a,b,c\):三角形の各辺の長さ
公式の意味は後で解説することにして、まずは式を眺めてみましょう。
左辺には内接円の半径、右辺には三角形の面積と各辺の長さがあります。
つまり、三角形の面積と各辺の長さがわかれば、その三角形の内接円の半径の長さを求めることができるというわけです。
とはいっても、三角形の面積と各辺の長さが全てわかっているなんて状況はあまりありません。長さはまだしも、面積があらかじめ与えられていることはまずないでしょう。
だから、まず三角形の面積を求めてから、\(r=\frac{2S}{a+b+c}\)の公式を使うという2段階を実際には踏むことになります。
ところで三角形の面積は、その三角形の3辺の長さだけわかっていれば求めることが可能です。
ここで活躍するのがヘロンの公式です。
内接円の半径と直接関係する式ではありませんが、内接円の半径を求める際に下準備として用いることが多いので、ここで合わせて覚えておきましょう。
ヘロンの公式についての詳細は以下の記事をご参照ください。
\[S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}\] ※\(S\):三角形の面積、\(a,b,c\):三角形の各辺の長さ、\(s=\frac{a+b+c}{2}\)
\(s=\frac{a+b+c}{2}\)というのがミソです。
内接円の半径の公式を自力で導く方法
さて、今回の最重要事項である\[r=\frac{2S}{a+b+c}\]について、なぜ三角形の面積の2倍を各辺の長さの和で割ると内接円の半径が求まるのか考えていきます。
三角形の面積を求める手法というと、底辺\(×\)高さ\(÷2\)が真っ先に思いつくでしょう。
あるいは三角比を勉強していれば、\(\frac{1}{2}absinC\)というのも思い出せるでしょうか。
しかし、内接円の半径\(r\)を使うと、三角形の面積を求める別の式を立てることができます。
上の図だと明らかですが、内接円は三角形の各辺に接しています。
さて、円にある直線(今回は線分)が接しているとき、その接点から円の中心に引いた線分は、接する直線(線分)と垂直であるという性質がありました。
ところで、接点から円の中心に引いた線分というのは、その円の半径にあたります。ゆえに長さは\(r\)。
ここまで踏まえて、下の図を見てください。
三角形\(ABC\)の内接円の中心を\(O\)、半径の長さを\(r\)とすると、三角形\(ABC\)の一部である三角形\(OBC\)の面積を求めることができます。
\(a\)を底辺、\(r\)を高さに見立てるのです。面積は\(\frac{1}{2}ar\)となりますね。
同様のことを三角形\(OCA,OAB\)についても行うと、以下の図のような状況になります。
さて、以上の\(3\)つの三角形を足し合わせると、ちょうどうまい具合に三角形\(ABC\)が出来上がります。
三角形\(ABC\)の面積を\(S\)とすると、上の図にあるように、
\[S=\frac{1}{2}(a+b+c)r\]
という式が導かれる。この式こそ、内接円の半径\(r\)を使った、三角形の面積を求める新しい式です!
では、この式の両辺を\(\frac{a+b+c}{2}\)で割ってみてください。すると、
\[\frac{2S}{a+b+c}=r\]
となる。これは内接円の半径\(r\)を求める式であり、既に紹介してあるものです。
以上、内接円の半径が、三角形の面積の2倍を各辺の長さの和で割ると求まることがおわかりいただけたかと思います。
以上の説明は、自力で行えるようにしておきましょう。\(r=\frac{2S}{a+b+c}\)という式は、一旦意味がわからなくなると思い出すのが難しくなります。
しかし、内接円の中心から3本の線分を三角形の各頂点に引き、三角形を3つに区切る図を頭に入れておけば、公式を忘れてしまってもその場で導き出すことが可能です。
三角形を3つに区切ってそれぞれの面積を求める仕方を是非とも覚えておいてください。
内接円の半径の公式を用いる練習問題
目標は、3辺の長さがわかっている三角形について、内接円の半径の長さを求められるようになることです。練習してみましょう。
次の三角形の内接円の半径の長さ\(r\)を求めてください。
(解)
\(r=\frac{2S}{a+b+c}\)を使えるようにしたいので、まずは三角形の面積を求めたい。そのためにはヘロンの公式を用います。
\(s=\frac{3+5+7}{2}\)とすると、\(s=\frac{15}{2}\)。
ヘロンの公式より、三角形の面積は、
\[\sqrt{\frac{15}{2}(\frac{15}{2}-3)(\frac{15}{2}-5)(\frac{15}{2}-7)}=\sqrt{\frac{675}{16}}=\frac{15\sqrt3}{4}\]
三角形の面積と3辺の長さがわかれば、内接円の半径を求めることができます。\(r=\frac{2S}{a+b+c}\)を使うのでしたね。
三角形の面積が\(\frac{15\sqrt3}{4}\)、各辺の長さが\(3,5,7\)なので、内接円の半径の長さは、
\[2\cdot\frac{15\sqrt3}{4}\div(3+5+7)=\frac{\sqrt3}{2}\]
となり、答えは\(r=\frac{\sqrt3}{2}\)でした。
内接円の半径の公式は、公式の形だけでなく使う場面を絞って覚える
この記事では2つの公式を紹介しましたが、大切なのは公式の形だけでなく「この公式はこういう場面で使うものだ」という意識をはっきりとさせておくことです。
内接円に関していえば、内接円の半径を求めるために使うのが\(r=\frac{2S}{a+b+c}\)であり、三角形の面積を求めるために使うのがヘロンの公式です。
以上の流れをおさえておけば、内接円に関して恐れることはもうないでしょう。