【A philosophy of human science】大学の授業紹介(早稲田大学人間科学部)

早稲田大学人間科学部の「A philosophy of human science」とは?

「A philosophy of human science」とは?

「A philosophy of human science」とは、早稲田大学人間科学部で開講している講義の1つで、「一般教養科目B」という科目群に属しています。2019年度に新設された、かなり新しい講義です。

「科目名が英語ということは、まさか……」と思ったあなた、そのまさかです。「A philosophy of human science」では、講義の全てを英語で行います。

英語という時点で拒否反応が出てしまう人がいるかもしれませんが、内容も普通の英語の授業では扱わない内容__哲学になっています。

ただでさえわかりにくい哲学を、わざわざ英語でやることに何の意味があるのでしょうか。英語を使って哲学を学ぶとは、具体的にはどういうことなのでしょうか。

そんなみなさんの疑問に答えるべく、この記事では早稲田大学人間科学部の「A philosophy of human science」の実態について筆者の実体験を基にご紹介します。

早稲田大学人間科学部ならではの哲学学習に興味を持っていただければ幸いです。

早稲田大学人間科学部の「A philosophy of human science」の授業はどんな感じ?

以下では、2020年度秋学期に開講された「A philosophy of human science」の講義について紹介します。

2020年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、対面での講義は行われず、zoomを利用したリアルタイム配信形式の講義になりました。

そのため、この記事で紹介する講義の内容は、2021年度以降の講義内容と一致しない可能性があります。予めご了承ください。

早稲田大学人間科学部の「A philosophy of human science」の授業形態

「A philosophy of human science」は、月曜日の1限(午前9時〜午前10時30分)に行われるリアルタイム配信型講義です。

対面講義だと1限はしんどいですが、リアルタイム配信だと時間に余裕を持って行動できます。極論、9時に起きてzoomを立ち上げればいいわけですからね。

評価は平常点が50%、レポートが50%という構成になっています。

平常点は、

  1. 出席しているかどうか
  2. 議論に積極的に参加しているかどうか

の2点で決まっていますが、先生はお優しい方なので、普通に出席して普通に講義を受けていれば満点をもらえるそうです。

レポートは学期末に与えられ、お題に沿った小論文をA4用紙2〜3枚以内で書くように求められます。

普通のレポートと違って、「A philosophy of human science」のレポートは最終提出前に一度提出し、先生から改善のアドバイスをもらうことができます。

2回提出する場合、評価がよかった方を最終的なレポート点にするそうです。優しい世界ですね。

早稲田大学人間科学部の「A philosophy of human science」の授業風景

授業形態を簡単に説明したところで、具体的な授業風景を説明していきましょう。

普通哲学の講義と言えば、プラトンから哲学の歴史をたどったり、ある哲学者の著作を精読したりする風景をイメージしますよね。

しかし「A philosophy of human science」は違います。

この講義では、既存の文献や既存の哲学者の思想はほとんど使わず、ゼロから自分たちで哲学的な思考を建設していくのです!

第1回の講義で、この講義の教授であるドナルド=バートレイ先生はこうおっしゃいました。

「哲学の目標は真実を知ることですが、この目標に対するアプローチは3つしかありません。

  1. 非物理的なもの(スピリチュアルなもの)を真実と捉えるアプローチ
  2. 物理的なものを真実と捉えるアプローチ
  3. 真実は物理的でありかつ非物理的であると捉えるアプローチ

どれが正しいのか、一緒に検討していきましょう」

この世に真実があるとすれば、その真実は物理的であるか非物理的であるか、どちらか(あるいは両方)です。

これら3つの立場を全て網羅的に検討できれば、どこかで真実にたどり着くはずだ__この考えに基づいて、「A philosophy of human science」では①〜③のアプローチを1つずつ検討していきます。

普通なら先生が1個ずつ検討していって、学生が先生の話を聞くことになりそうですが、その点も普通の哲学の講義とは違っています。

さながらソクラテスの対話のごとく、この講義では先生がまず学生に質問を投げ、学生の回答を基に別の質問を別の学生に投げて……というプロセスを延々と繰り返すのです。

そして1つのテーマに関してまとまった回答が得られたら、 「もしこの話を理解できたら、親指を上げてね」と問いかけ、全員が親指を上げたら次のテーマに進みます。

ですから、講義のペースはかなりゆっくりです。

ゆっくり確実に、少しずつ真実へと迫っていく。哲学の理想的な思考プロセスを、私たち学生みんなが体験できるような講義になっています。

早稲田大学人間科学部の「A philosophy of human science」を学ぶことについて

「A philosophy of human science」は何の役に立つのか

「A philosophy of human science」では哲学的な思考プロセスを学ぶわけですが、「それが何の役に立つの?」と思われる方もいるでしょう。

私たちが普通に使っている思考プロセス以外に、哲学的な思考プロセスを学ぶことで、一体何が得られるのでしょうか。

私たちは普段生きている中で、「真実とは何か」という問題を論理的に厳密に考える機会はほとんどありません。

みんな何となく当たり前だと信じている「真実」を、特に疑うことなく受け入れて生きています。

しかしその「真実」は結構あいまいなものなので、本当に正しい事柄を求めるならば、真実を論理的に・厳密に追求する哲学的な思考が必要になります。

学問を本気でやるとき、本気でビジネスをするとき、本気で恋人と付き合うとき、私たちは日常的な「真実」ではない、本当の真実を追求しなければなりません。

そんなとき、「A philosophy of human science」で学べる哲学的な思考は、あなたに本当の真実のあり方を教えてくれるはずです。

「A philosophy of human science」の魅力

「A philosophy of human science」の最大の魅力は、間違えを恐れなくていいということです。

この講義は先生が学生に問いかけ、学生が答え、その答えを基に先生がさらに問いかけるという形式で進んでいきます。

重要なのは、例え学生がどんな答えを出したとしても、その答えが否定されることはないという点です。

例えどんな答えを出したとしても、真実という目標が見えている限り、確実にその目標に近づくことができます。

ですから、哲学だからといって身構える必要は一切ありません。自分が考える正しさを信じて、先生と楽しくディスカッションしましょう!

「A philosophy of human science」でおすすめの本

「A philosophy of human science」を履修する上で必要な知識は特にありませんが、哲学的な思考パターンを少しでも理解しておくと、先生とディスカッションしやすくなります。

そこで、ここでは哲学的な思考を学ぶ入門書を2冊紹介します。参考にしてみてくださいね。

  • 戸田山和久著『哲学入門』、筑摩書房、2014年。
  • 森岡正博・寺田にゃんこふ著『まんが 哲学入門—生きるって何だろう?』、講談社、2013年。

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