はじめに
こんにちは!ライターの山縣です。
みなさん、勉強は順調ですか?
もちろん机に座って参考書を開くのも勉強ですが、創作物を受容するのだって立派な勉強です。
この記事では、「東大生の僕が勉強になるな〜」と思った映画を独断と偏見でランキング化しています。ぜひ気になった映画を観てみてください!
目次
【東大生おすすめの映画】5位:『寝ても覚めても』(2018)
まず紹介するのは、『ドライブ・マイ・カー』でも話題になった濱口竜介監督の映画、『寝ても覚めても』です。
『寝ても覚めても』のあらすじ
勝手気ままな男性と誠実な男性。双子のように似通った容姿を持つ二人の男性の間で揺れ動く女性を描いた恋愛映画です。二人の男性は作中設定では全く別の人間ですが、東出昌大が一人二役で演じます。
唐田えりかが演じるヒロインが、どういった選択に向かっていくのか。その背景を描写していくストーリーです。
『寝ても覚めても』の勉強になるポイント:小説読解力の強化
この映画からは、物語の構成から多くのことを学ぶことができます。大学受験に必要な小説読解力に結びつくでしょう。
この物語は、大学入試の現代文で多用される手法である二項比較が多く登場します。
物語の全ての軸に、見た目は同じだが性格が全く異なる二人の対照が設定されているのです。
例えば、この映画のタイトルも「寝ても」と「覚めても」で対照的な状態を表現しているので、二項比較がされているといえます。
映画中の様々な場面でみられる二項比較に着目しながら映画を観ると、勉強になるでしょう。
【東大生おすすめの映画】4位:『ヒロシマ・モナムール』(1959)
次は、アラン・レネ監督による『ヒロシマ・モナムール』(邦題:24時間の情事)を紹介します。終戦後の広島を描いた日仏合作映画です。
『ヒロシマ・モナムール』のあらすじ
戦後間もない広島。原爆に関するドキュメンタリー映画を撮りに来日したフランス人女優と、フランス語が堪能な広島人男性のロマンスを描いた作品です。
第二次大戦の抽象的な傷が、男と女が織りなす具体的な物語に落とし込まれた作品だと思います。
『ヒロシマ・モナムール』の勉強になるポイント:世界史
この作品は、世界史の勉強になるでしょう。また、非常に難解な映画ですから、読解力も養うことができます。
第二次大戦をめぐるフランスの動きについて、教科書ではあまり触れられることはありませんが、よく考えてみればフランスは第二次大戦で二回負けているのです。
一回目はナチスに対する敗戦、2度目はナチスの連合国に対する敗戦です。
こうしたフランスで個人は、特に女性は、いかにして時代を超えて行ったのか、歴史の教科書には拾われないような生活の階層を垣間見ることができます。
世界史の理解を深めることができるでしょう。
また、日本における広島原爆についても、やはり戦時中から戦後間もない間の生活の階層まで落とし込んで理解することは難しいものです。
この映画で描かれる「原爆」が当時においていかなる意味を持ち、それをフランス人と日本人がそれぞれどのように考えていたのかが伝わる映画だと思います。
【東大生おすすめの映画】3位:『千年女優』(2001)
今度は、趣向を変えてアニメ映画の紹介です。
『パプリカ』や『東京ゴッドファーザーズ』でもよく知られる、今敏というアニメーターの作品、『千年女優』になります。
『千年女優』のあらすじ
引退した往年の大女優「藤原千代子」が、映画製作会社の社長である立花によってドキュメンタリー映画用のインタビューを受けることから物語は始まります。
生い立ちから女優としての生活までを藤原千代子が述懐するなか、その叙述に沈み込むように虚構が現実と混じり合っていく物語が展開されます。
「藤原千代子」の大ファンである立花とカメラマンの井田が、藤原の語る世界を横断しながら、恋愛を軸に展開する構成が秀逸だと思います。
『千年女優』の勉強になるポイント:倫理
この映画は、「意味のある偶然の一致」が作中で多様されます。物語展開のトリガーに使われるのです。
例えば、場面展開で地震が起きたり。もちろん、脚本を書いている製作者は必然的にその描写を入れていますが、作中の設定では偶然として処理されます。
この偶然によって何かがおこったり、偶然の現象が作中人物の精神状態を反映したりするのは、心理学者のユング的であると思います。
倫理などでユングの名前は出てきますから、勉強になりますね。
また、アニメーションという表現技法の妙についてもかなり勉強になります。
漫画やアニメーションという表現をめぐる評論文は現代文で頻出の話題ですから、こうした話題への対応力をつけることは重要でしょう。
さらに、名作映画のパロディや大正〜昭和にかけての描写があるので、文化史的な学習もできますよ。
【東大生おすすめの映画】2位:『ソナチネ』(1993)
続いては、北野武(ビートたけし)による映画、『ソナチネ』の紹介です。
映画監督としての北野武の立ち位置を世界的に押し上げた作品だと思います。
『ソナチネ』のあらすじ
沖縄で勃発した抗争に際して兄弟分の組を救援するという名目で、追いやられるように親組織から沖縄の抗争仲介に送られたヤクザである村川と、その組員を描いた映画です。
張り裂けそうな緊張感と、それでいて穏やかな沖縄の青い海と空の世界が独特な雰囲気を醸成します。
緊張と緩和、静と動のメリハリあるカット、全体を覆うキタノブルーと表される「青色」の色彩。ある種ありきたりな復讐譚を包み込むような画面が魅力です。
幼児が公園で遊ぶような微笑ましさと、血生臭い怒りが見事に調和しています。
『ソナチネ』の勉強になるポイント:沖縄返還の理解
この映画は、20世紀末の沖縄社会について考えるきっかけになるでしょう。
1972年にアメリカから日本に返還された沖縄社会の特異性について、教科書的な学習ではあまり考えることがありません。ただ、知識として沖縄返還の事象を捉えているだけです。
この映画を通して、沖縄の風景や文化を体感することで、日本という国土の多様性や地域性を勉強することができます。
現代に至っても、沖縄と本土では様々な違いがあるでしょう。
そうした時事的な問題にまで広げながら、勉強のきっかけを得ることができます。
さらに、予感とズラしが頻繁に用いられ、スリリングさが演出されますが、人間心理の妙についても学習の余地があります。
【東大生おすすめの映画】1位:『メッセージ』(2016)
お待ちかね、筆者が選ぶおすすめの映画1位は、『ブレードランナー2049』でもよく知られるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画、『メッセージ』です。
『メッセージ』のあらすじ
正体不明の生命体が現れ、言語学者がその言語解析を通してコミュニケーションを試みる物語です。
地球外生命体と接触した際、どんな反応が起こるのかが丹念にシミュレーションされます。したがって、リアリティのある緊張感が魅力的に表出します。
『メッセージ』の勉強になるポイント:言語学
言語学について、興味を持つきっかけになるでしょう。
この映画のテーマは、地球外生命体の言語解明と異文化コミュニケーションです。
これは、世界史や現代文に頻出のテーマです。例えば、どうやってヒエログリフやフェニキア文字は解明されたのでしょう。
教科書には、解明した言語学者の名前と年代くらいしか書かれていません。その背景にはどんな努力やドラマがあったのでしょうか。
また、言語が異なる文化が接触した際、どのような反応が起こり、どのように人々はコミュニケーションを取ってきたのでしょうか。
この映画は、言語学のテーマから様々な問題提起をしてくれます。
また、地球外生命体がやってきたらどうなるだろうか、という知的好奇心が掻き立てられるような主題もこの映画には含まれています。
SETIプロジェクト(地球外知的生命体探査)と呼ばれるものが世界中で走っているのはご存知でしょうか。
英語の長文問題などでいつテーマにされてもおかしくないような気がします。
この映画は、勉強につながる様々な問題を提起し、興味を掻き立ててくれるのです。
おわりに
以上、勉強になる映画を紹介しました。
あらゆる娯楽、引いては日常感受しうる事物の全ては勉強になると思います。
受験生という身分は息苦しいかも知れません。でも、机に向かって勉強することに飽きたら、ぜひ底知れぬ知的好奇心が導くままに映画でも漫画でも、なんでもいいので鑑賞してみてほしいと思います。
それくらいの息抜きは許されていいのです!