はじめに
受験勉強はなかなか予定通りに進まないもの。
思っていた以上にやるべきことが多く、自分の決めた期限までに参考書が終わらなかったりすることもしばしば。
そんな時、多くの受験生がまず行おうとするのが、睡眠時間を減らすこと。
単純計算で睡眠時間が減った分、日中の活動時間は増えるからです。
また、定期試験が近づいてきていよいよ時間が足りない時、夜更かしして勉強するという人は結構いるのではないかと思います。
しかも深夜は日中に比べてテレビや外の娯楽といった誘惑が比較的少なく、家も静かになるので勉強がなかなか進みます。
「深夜勉強の方が意外とはかどるんじゃないのか!?」
そんな風に思っていると、夜型生活に変えて勉強を続けた方が最終的な成績は上がるのではないかとさえ思えてきます。
しかしこれを日常的に行うものとして考えた時、はたして有効な勉強方法と言えるのでしょうか?
今回はこのようなテーマを扱います。
また、大学生の先輩の体験談から考える受験生におすすめの睡眠時間もお伝えしていきます!
目次
勉強に睡眠が必要不可欠な理由
しかし、結論から先に述べてしまうと、日常的に勉強を続ける高校生の皆さんにとって夜型の勉強はふさわしくありません。
そのことをこれから説明していきますが、それにあたって、まず人間の「睡眠」と「記憶」について、少し説明をします。
睡眠の仕組み
人間の睡眠には深い眠り「ノンレム睡眠」と、体は休んでいても脳は目覚めている「レム睡眠」があり、役割はそれぞれ異なります。
ノンレム睡眠時は細胞の新陳代謝を高めたり、免疫力を強化する活動が行われています。
一方、レム睡眠時はその日に脳が得た莫大な情報の整理をすると考えられています。
つまり、レム睡眠は記憶や感情を整理し、その固定や消去を効率よく行っているため、記憶に深い関係があるのです。
通常は約90分周期でこの2種類の睡眠(ノンレム睡眠とレム睡眠)が繰り返され、4〜5回繰り返されたところで朝の目覚めを迎えます。
記憶の仕組み
では次に、記憶の仕組みについてご説明します。
まず人間は、日中に覚えたものは海馬という部分に蓄えます。
この海馬に保存された記憶は非常に不安定です。
不安定というのは、忘れやすかったり、他の似た記憶と混同されたりするということです。
この状態を、短期記憶と呼びます。
短期記憶という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
当然、短期記憶のままだと、いつ忘れてしまうか分かりません。
ですから、短期記憶をしばらくの間忘れない記憶の状態、つまり長期記憶に変える必要があります。
では短期記憶を長期記憶に変えるにはどうするのか、それが睡眠をすることなのです。
睡眠時間になると、海馬に保存された記憶は大脳新皮質という部分へと移り、長期記憶になることで、安定化され、はじめて忘れづらい記憶となります。
人間が学習した内容をいつ記憶として定着させているか、それはまさに睡眠中なのです。
90分周期で寝ないとレム睡眠は現れない
そしてこの記憶定着作業が行われるのは「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りの時間帯です。
『学習や記憶の効果を上げるにはレム睡眠の確保が重要。』という研究結果があるほど、レム睡眠は記憶の定着に非常に重要だと考えられています。
一般的に人間の睡眠は90分周期で深い眠りと浅い眠りを繰り返し、この終わりにレム睡眠は現れます。
逆に言えば90分周期で寝なければレム睡眠は現れません。
つまり1.5時間、3時間、4.5時間、6時間……ということです。
短期記憶を長期記憶にしたければある程度まとまった時間寝る必要があり、短眠を繰り返すのは勉強にはふさわしくないわけです。
また、レム睡眠が現れる頻度が多ければ多いほど記憶が定着するので、なるべく長い時間睡眠を取ることが重要なのです。
受験生が睡眠時間を削ってはいけない理由
レム睡眠が現れる頻度が少ないと記憶が定着しづらい
睡眠と記憶の仕組みについての話が終わったところで、深夜に勉強することの話に戻りましょう。
確かに一日の行動が完全自由であるなら、夜遅くに勉強をする習慣をつけてもあまり問題ありません。
しかし普通、どれだけ遅くまで勉強していようと、翌朝には学校があるので一度必ず起きなければいけません。
すると夜中に勉強していた内容をレム睡眠の中で定着させる十分な時間がとれないのです。
例えば、もし7時間半寝ていればレム睡眠の時間帯は約5回訪れるのですが、3時間睡眠だとその回数は2回以下しか訪れません。
前者のほうが、学習内容が長期記憶として定着しやすいのは明らかでしょう。
睡眠は体調維持にも極めて重要
記憶という観点から夜型の生活は避けて睡眠をとることが大事なのは先述したとおりですが、もちろん睡眠は学習内容を覚えるためだけにとるものではありません。
睡眠は体と脳の休息時間としてもとても大事になってきます。
レム睡眠時に脳が記憶の定着を行っている間、体は日中の活動による疲れを癒やします。
レム睡眠以外の「ノンレム睡眠」時は、脳が休憩をとっている間に体は免疫機能を活発に働かせています。
睡眠をとることで頭と体の健康な働きが維持されているのです。
当然睡眠時間が十分に確保されなければ、翌日に影響してきます。
高校生の皆さんも一度は体験したことがあると思うのですが、睡眠時間が普段より少ない日や、睡眠不足が続いた日は誰であっても元気が出なかったり、やる気が起きなかったりしますよね。
十分に寝られなかったために、勉強自体に集中できなくなれば学習効率は落ちますし、体調を崩してしまえばそもそも勉強すらできなくなってしまいます。
学校生活を送りながら日々の勉強を維持するためには、やはり早寝早起きの習慣をつけて日中に勉強するのが一番でしょう。
大学生の受験生時代の睡眠時間は?
ここからは、大学生が受験生の時に一体どれくらい寝ていたのか、そしてなぜそうしていたのかについてみていくことにしましょう。
睡眠時間の円グラフ
今回は受験生の時に6時間以上睡眠をとっていたかというアンケートを行いました。
ほとんどの先輩が6時間は睡眠時間を確保していたという結果になりました。
それではそれぞれに分かれて、理由を見ていくことにしましょう。
受験生時代に睡眠時間が6時間未満の理由
受験生時代に睡眠時間が6時間以上の理由
受験生におすすめの睡眠時間
睡眠時間と寝る時間
おすすめの睡眠時間は、ずばり6〜7.5時間です。
なおかつ翌日に影響することのないよう、どんなに遅くても12時には寝ることをおすすめします。
6〜7.5時間寝れば、レム睡眠は4〜5回出現しますので、前日の勉強の記憶がしっかりと定着しますし、12時までに寝ることができれば朝6時・7時に起床し、学校の準備をしつつ時間が余ったら勉強することもでき、非常に良い勉強サイクルを作ることができます。
どうしても睡眠時間が確保できない人へ
でもおそらく皆さんの中には、部活動が遅くまであったり、学校や塾が自宅から遠いなど、夜に勉強時間が必要で、十分な睡眠時間が確保できない方がいるかもしれません。
そういった方には昼休みの昼寝をオススメします。
昼寝によって体の疲労をしっかりと癒やすことはできませんが、実は昼寝をしたほうが記憶の定着率が上がるというデータも存在するのです。
もう寝不足という方にはもちろん、夜に十分寝ている方も是非昼寝を取り入れてみてください。
きっと午後の勉強もスッキリと目覚めた状態でできるはずです。
睡眠の質を上げる
最後に、夜の快眠のためにとれる簡単な方法を紹介しましょう。
人間は寝るにあたってメラトニンという睡眠ホルモンを分泌します。
このホルモンの分泌量が普段の睡眠時刻に近づくに連れて増えていき眠くなってくるのですが、このホルモンの分泌量を左右する大事な要因がもう一つあります。
それは光です。
目から強い光の刺激を受けるとメラトニンの分泌は抑えられるので寝付きが悪くなります。
現代では昼夜問わず、パソコンや携帯電話の画面を見つめる機会が多く、気付かないうちに眠りの質を落としている可能性があります。
そこでやるべきことは非常に簡単。
それは就寝の一時間前から意識的に強い照明を避けることです。
たったそれだけで布団に入る頃には良い眠りに入る準備が整っています。
睡眠を日頃の何気ない行為の一つと考えるとここまでするのは確かに面倒くさいかもしれません。
ですが受験生である以上、勉強以外の生活でも勉強しやすい環境作りを意識するべきです。
寝る行為も含めて受験勉強と考えて、勉強する時間と同じくらい寝る時間も大事にしてください。
おわりに
なぜ睡眠が必要なのかについて、その重要さを理解いただけましたでしょうか?
「勉強する時間がない」「時間がもったいない」といって、安易に睡眠時間を削るのは避けましょう。
しっかりと睡眠時間を確保して、体調の維持はもちろん、勉強効率の向上につなげてください!