【一橋大学2023年度新設】教授に聞いた!ソーシャル・データサイエンス学部とは

はじめに

高校生のみなさん、2023年度から一橋大学に新設されるソーシャル・データサイエンス学部(以下、SDS学部)を知っていますか?

この記事では、SDS学部はいったいどんな学部なのか、現役一橋大生の筆者が徹底解説します!

SDS学部の教授にもお話を伺ったので、ぜひ参考にしてくださいね。

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2021.07.24

ソーシャル・データサイエンス学部の特徴

【ソーシャル・データサイエンス学部の特徴】①ゼネラリストの養成を目指している

まず、アドミッションポリシーの概要を紹介します。

  • ソーシャル・データサイエンスの教育を通じて、社会に存在する課題を解決できるソーシャル・データサイエンスのゼネラリストの養成を目指すことを使命とする
  • 社会科学とデータサイエンスの両方を専門的に学ぶとともに、それらを融合させるカリキュラム
  • 文系・理系双方の知識が必要とされる

ゼネラリストとは、保有している知識や技術、スキルが広範囲にわたる人のことで、スペシャリストの対義語です。

アドミッションポリシーについて、SDS学部の教授である七丈先生にお伺いしました。

ゼネラリストと銘打っている理由は、学部課程修士課程で学習内容に違いがあるからだそうです。

学部課程では、幅広く社会科学とデータサイエンスの基本の両方を学習しないと卒業できないカリキュラムになっているので、ゼネラリストの養成と位置づけています。

具体的には、学部生はビジネス領域、社会課題領域、データサイエンスの3領域について幅広く体系的に学ぶことになります。

ビジネス領域・社会課題領域のなかでさらに学問分野が分かれていますが、専攻を選択するのではなく、いろんな分野の授業を履修できます。

どれか1つの学問分野に偏らず、幅広く学習してほしいという意図があるようです。

一方、修士課程では、統計学、機械学習など、一部の学問領域に特化しても良いことになっています。

修士課程では個別の領域に特化してより高度な学習をすることができるので、スペシャリストの養成と位置づけられています。

つまり、学部課程修士課程と比較して、相対的にゼネラリストの養成と位置づけられているといえますね。

【ソーシャル・データサイエンス学部の特徴】②実践的な授業「PBL演習」

SDS学部3年次に必修の授業であるPBL(Project Based Learning)演習では、企業・政策機関等で実際に行われているデータ分析に関わり、社会科学とデータサイエンスの知識を融合する経験ができます。

PBLで連携が想定されている企業・機関としては、三菱地所、三菱総研、損保ジャパン、日本郵船、トヨタ自動車、freee、世界銀行、財務省、ESRI(内閣府経済社会総合研究所)などで、たくさんの有名企業・機関があります。

PBLでは企業・公的機関と一緒に活動するという所が大きな特徴です。

企業によって内容がバラバラだと学生が得られる知識もバラバラになってしまうので、事前に全13回の授業のアウトラインが決められているなどの工夫がされているそうですよ。

ソーシャル・データサイエンス学部では3年次からゼミナールに所属することになりますが、その活動はゼミの先生の専門分野によります。

PBLではゼミでは経験できない、企業・公的機関と一緒に活動するという点が魅力といえますね。

【ソーシャル・データサイエンス学部の特徴】③データサイエンスと社会学の融合

文系大学である一橋大学がデータサイエンスを学部として新たに設けた理由が気になりますよね。

その理由の一つは、一橋大学ではデータサイエンスと社会科学の橋渡しができるからです。

データサイエンスは理系の研究に含まれていますが、データサイエンスは役に立って初めて意味をもつ実学的なものです。

よって理系で研究のための研究をするのではなく、社会の要望にあった研究を社会科学の見識を持った人が行う必要が生まれてきました。

そこで社会科学の総合大学である一橋大学が、データサイエンスと社会科学の融合をするというニーズに応える形で新たに学部を設けることになったという背景があります。

また、昨今世界中でデジタル化が進み、社会科学においてもデジタル的な手法を使った研究が主流になってきていて、実際にそのような最先端の研究を進めていることも一橋大学でSDS学部が新設された背景でしょう。

ソーシャル・データサイエンス学部の入試制度

次に、ソーシャル・データサイエンス学部の入試制度を紹介します。前期日程、後期日程、学校推薦型選抜の3つの制度があります。

また、一橋大学の既存四学部と同様に、全ての区分で共通テスト5教科受験が求められています。

ソーシャル・データサイエンス学部前期日程の入試制度の定員・配点・特徴

  • 定員:30名
  • 共通テスト:240点(各40点×5教科)
  • 2次試験:760点(英語230点、数学330点、国語100点、総合問題100点)

SDS学部の入試の前期日程では、総合問題の出題と、2次試験で地理歴史・公民が不要になる点が特徴的です。

総合問題は、社会において数理的なものの考え方を応用する力、情報技術の活用について自ら志向する姿勢を確認するための科目で、新しくSDS学部だけに出題されます。

また、既存四学部の前期日程では地理歴史・公民が必要ですが、SDS学部では出題されません。

ソーシャル・データサイエンス学部後期日程の入試制度の定員・配点・特徴

  • 定員:25名
  • 共通テスト:200点(各40点×5教科)
  • 2次試験:800点(英語300点、数学500点)

2次試験・後期日程の数学では、数学Ⅲの範囲の選択問題が出題されます。

経済学部の後期日程でも同様に、数学Ⅲが選択問題として出題されていましたが、SDS学部の後期日程の方が経済学部の後期日程に比べて配点が高くなっています。

理系・数学が得意な学生にはより有利な試験であるといえますね。

ソーシャル・データサイエンス学部学校推薦型選抜の定員・配点・特徴

  • 定員:5名
  • 共通テスト:250点(各50点×5教科)
  • 第2次試験:500点(小論文300点、面接150点、調査書・推薦書40点、自己推薦書10点)

学校推薦型に関しては、既存の4学部とあまり変わりません。アドミッションポリシーを理解して入学の意思をアピールすることが大事ですね。

一橋大学の試験についてはこちらの記事で詳しく解説しています!

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2022.11.15

高校生の代わりに、ソーシャル・データサイエンス学部の教授に聞いてみた!

SDS学部の教授である七丈先生に、高校生が特に気になる入試・授業・就職についてもお伺いしました!

①総合問題ってどんな問題ですか?

総合問題では統計的な概念データサイエンスに関するようなテーマを扱う問題を出題します。

総合問題の目的は、論理的な思考・算術的思考ができるのか、データサイエンスの基礎となるような素養があるかを確認することです。

数学・国語といった個別の科目では融合的な内容を出題しづらいため、あえて総合問題にしています。HPも参考にしてみてください(総合問題のサンプル問題はこちらから)。

「情報」科目とイメージ的には近いと思います。情報は融合的な分野であって、必ずしも数理だけでない部分がありますよね。

総合問題への対策方法は、まずは読解力・思考力を鍛え、さらに情報・統計に興味をもって触れていくことです。

基本的に、問題中の情報だけで解けることを問うているので、問題をしっかり読むことが重要ですよ。

また、ソーシャル・データサイエンス学部独自の問題なので、データサイエンス的・統計的な思考が問われる可能性があります。

そのため、「統計的思考(統計に基づく考え方)」に習熟しておくと有利である可能性があります。問題がどうなるかはまだ未定なので、あくまで可能性の話であることは注意してくださいね。

②1年次必修の「ソーシャル・データサイエンス入門」とは?

ソーシャル・データサイエンスがどのようなものか分からないと、どの授業を取っていいかわからないですよね。

この授業の目的としては、今後どのような科目を取ったらいいか、ソーシャル・データサイエンスの全体像が分かるようにすることです。

内容としては、SDSがどんなものか、演習も交えつつ具体例を通じて体得するというものです。

データサイエンス・社会科学のこれからについて考えたり、VRメタバースなど最新のテクノロジーに触れたりします。

③就職先はどのような所が想定されますか?

一橋大学が掲げている「Captains of Industry」という考えは変わらないので、企業のリーダシップを取れるような人を育成したいですね。

就職先はかなり幅広いと思います。

特にデータサイエンス系の知識を直接活用することができる就職先として、金融系の企業の専門的な技能を担う部署や研究機関(シンクタンク)、企業経営の手助けを行うコンサルティングファームなどがあると思いますよ。

行政でもデジタル庁を初めとしてDXを推進中のため、公務員などでもSDS学部で学んだ力が活用されるでしょう。

④どんな人がソーシャル・データサイエンス学部に向いていますか?

入試では、地歴公民が不要な分、配点を高くして数学力を重視しています。ある意味、理系っぽくなっている学部です。

数学を重視する姿勢はカリキュラムにも現れていて、例えば基礎数学が必修となっています。

よく他の学問の研究でも用いられる回帰分析などの基本的な統計手法を、ただ利用するだけなら数学の力は必要ありません。

しかしSDS学部でより高度な統計手法を用いるときには、微分積分線形代数の理解が不可欠であるという背景があります。

授業では先ほど紹介したPBL演習なども特徴的ですよね。

社会に対する関心を持っていて、数理的能力が高く、数学・プログラミングを面白がって勉強できる人がSDS学部に向いていると思います。

おわりに

ソーシャル・データサイエンス学部について理解が深まりましたか?

SDS学部に興味を持った人・最先端の学部で学んでみたい人・一橋大学を志望している人はぜひ前向きに受験を検討してみてくださいね!

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2020.08.29



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