はじめに
数学は大学の入学試験では非常に大きなウェイトを占める科目です。
一問の配点が高い上、得意な人は点数を稼げるのに、苦手な人はまったく解けないということも少なくなく、点数差がつきやすいからです。
高1や高2の皆さんの中には、数学が苦手だけどどうしたら点が取れるようになるのかまったくわからないという人が少なくないでしょう。
数学が不得意だから理系をやめて文系に進もうかと考えている人さえいるかもしれません。
しかし、一つの科目が出来ないからといって進路を変えることは非常にもったいないことです。
大丈夫!数学は今から対策を練れば必ずできるようになる科目です。
というわけで、受験数学の攻略法をお教えしましょう!
数学の入試問題には3つのパターンがある
数学の入試問題を分類しようと思えば、たくさんの分類方法があります。
例えば単元ごとに分けてみたり、あるいは難易度で分けてみたり…。
しかし、ここでは次のようにわけてみます。
- 誰も見たことのない問題
- 基本問題
- 基本問題を組み合わせた問題
それぞれに分けてもっと詳しく説明したいと思います。
誰も見たことのない問題とは
「誰も見たことのない問題」とは、受験用の数学の問題集にはあまり取り上げられないような問題です。
例えば「素数は無限にあることを証明しなさい」というような問題など。
このような問題は普通大学入試には出題されません。
解き方を知っているか知らないかだけが問われてしまうからです。
なので、このような問題への対処は考えなくてもよいでしょう。
東京大学2003年度の数学で「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」という問題が出たことがありますが、これは例外です。
ただ、数学の教科書には昔の人がどのように円周率を求めたかというようなコラムが載っていることが多いので、そのようなところをついてくるあたりが東大といえるかもしれませんね。
基本問題とは
「基本問題」とは、数学の問題を単元ごとに取り扱ってるような参考書(チャート式など)に載っているようは問題です。
このような問題も大学入試で出題されること少ないでしょう。
なぜなら、全員が解けてしまうので差がつかないからです。
このレベルの問題は、問題を見ただけで解法が思い浮かび、すぐに解けてしまうようになることが理想です。
言ってしまえば、受験数学の四則演算といってもいいでしょう。
こんなことを聞くとビックリしてしまうかもしれませんが、今から問題集を一通り学習すれば必ずできるようになります。このことについては後述します。
基本問題を組み合わせた問題とは
「基本問題を組み合わせた問題」ですが、受験数学ではここが勝負の分かれ目になります。
基本問題を組み合わせることで、数学の基礎知識が身についているか、思考力はあるかなど様々な力を見ることができるので、大学側は出題したいのです。
つまり、受験数学で点を取るには、この「基本問題を組み合わせた問題」をいかにして解くかがポイントになってきます。
数学で高得点を取るために必要なこととは?
さて、以上のことを踏まえたうえで、数学で点数を取るために必要な能力とは何かを話していきましょう。
基本問題に対する解法パターンのストック
「基本問題を組み合わせた問題」を解くためには、基本問題の解法をある程度覚えておく必要があります。
基本問題を組み合わせてあるということは、その一つ一つの解法を組み合わせて答案を作っていくということですから、典型的なパターンの問題を見て瞬時に「あ、この問題はこうやって解けばいいんだ!」と気づくことができれば、解答する戦略を立てやすくなります。
まずは、基本問題の解法をストックしていきましょう。
大事なのは、問題集の解答を丸暗記するだけでは不十分だということです。
時間が無いと、解答を丸暗記するだけで学習を終えてしまいがちです。
実際そのやり方でも、問題集の2周目に入ったときにスイスイ問題が解けてしまうので、学力が上がったと勘違いしやすいのですが、それでは応用が利きません。
解法のストックを戦力にするためには、「何を求めるのが目的なのか」「与えられた条件は何か」「なぜその解法で解答が得られるのか」を理解しながら学習することが重要です。
ここを押さえていることで、実際の入試のレベルの問題でも解答を組み立てやすくなります。
また、「なぜその解法で解答が得られるのか」を理解することで解法を忘れにくくなります。
解法パターンのストックを蓄えるためには、とにかく問題集をコツコツと学習してくことが大切です。
王道としては『チャート式数学』があります。
高校1年生の皆さんなら今から予定を立てて取り組んでいけば、十分な基礎力が身につくことでしょう。
高2の皆さんも同様ですが、若干量が多いので、もし他の科目との兼ね合いで時間が無いようであれば他の参考書を使ってみてもいいかもしれません。
学習の仕方は人それぞれなので、自分が一番やりやすいやり方でやればいいでしょう。
実際に問題を解いてみるのが王道でしょうが、問題を眺めて解答を読むだけでも頭に入る、という人はそれでも構いません。
数学に限らず、自分に合った勉強法を見つけ出して実践することが受験勉強では大切です。
基本問題の解法を組み立てる能力
最初に述べたように受験で典型問題が合否を左右することは少ないのですから、基本問題の解法をストックしただけでは合格できません。
基本問題の解法を2つ3つ使うことで初めて入試問題の解答を導くことができます。
そのためには何が必要なのか。
まず一つ目には、与えられた問題における条件は何か?求めるものは何か?を十分に把握する能力です。
数学ができないことの一つの理由には、これらのことを十分に把握できず、「とりあえず2次関数があるから平方完成してみよう」「とりあえず微分してみよう」などと、解答にはまったく関係ない作業をしてかえって問題を難しくしてしまい、わけがわからなくなるということがあります。
求めるものは方程式の解なのか、それとも式の形で解答するのか、はたまた曲線の通過領域なのか……。
そういったところを把握しておかないと効率よく解答を作ることができません。
次に必要なのが、この基本問題は何がわかっているときに使えて何を求めることができるのか、を把握していることです。
これを頭の中に叩き込んでおくことで、実際に解答を作るときに、「あの基本問題の解法が使えるんじゃないか!」と反応することができます。
この能力は、大学の過去問題集を解く中で身につけていきましょう。
まずは問題を見たときに、何が与えられて何を求める問題なのかを把握する訓練をしましょう。
慣れないうちは書き出してもいいかもしれません。書くことで、状況を整理して解答に臨むことができます。
それから、「考え方のポイントノート」などを作ってみてもよいでしょう。
筆者の場合、数学の問題を解くノートと、問題を解いたときに気づいたことを書くノートの2つを作っていました。
問題を解いたときに気づいたこと、例えば「高次方程式を見たら因数分解を試みよう」「対称式を見たらu.vに置き換えよう。変域条件を忘れずに」などと、とにかくこれはポイントだと思ったことをノートに書いておくのです。
これを積み重ねることで、どんな条件が与えられたときにどんなことをすれば解答に近づくのかを知ることができます。
数学の問題を最後まで解くための計算力
単純ですが非常に大事な能力です。
これまでのようなことが完璧にできたとしても、計算ミスひとつで何もできない人と同じ点数になってしまいます。
計算力の向上は日頃から心がけておきましょう。
この力は日々の数学の学習の中で意識していくことが重要です。
一つの問題を解く中でも絶対に計算ミスをしないよう心がけることで、計算力を向上させていきましょう。
特に受験前の時間が無い時期に計算練習をすることは非常にもったいないです。
問題演習の中で意識付けして学習していきましょう。
ただ、どうしても計算ミスが直らないようなら、一日15分でも時間を取り、基本問題の演習を時間を計ってやるなどして計算ミスを減らしていきましょう。
数学を得意科目にするための勉強法
自分の弱点を補強する
先に先に勉強を進めたい、もしくは面倒だと思って、苦手としている問題、苦手としている分野をほったらかしにしていないでしょうか?
そんなときは、自分の弱点を補強することに特化して勉強をしてみましょう。
まず模試などの機会や添削指導を通じて自分のつまずいたところを確認し、自分がいま弱点としている分野・問題を見つけます。
次に、その例題や類似問題を使っている参考書から見つけて、繰り返し解いてみてください。
自分の弱点を補強する勉強ができれば、数学の成績アップは確実です。
解法を身につける
これは先ほども述べました。
数学の勉強に関して、一見効率的に見えて実は非効率な勉強法が丸暗記型の勉強です。
もちろん数学の問題を解くのには公式の暗記は必須ですが、その公式の使い方、つまり解法を身に付けていなければ意味がありません。
公式を覚えるのと同時に、その公式を使った問題の解法も同時に身につけるようにしてみましょう。
解法を身につける上で有効な勉強法を1つご紹介します。
それは、「問題を見て、解法を思いついたらそのまま解答を見る」という勉強法です。
まず手を動かさず、頭だけで考えて行う勉強法なので、短い時間で行うことができますし、解法を考える訓練にもなるのでおすすめです。
例題を何度も利用する
最後に、数学の例題を活用してみましょう。
効率よく数学の成績を上げるのに役立つのが教科書や問題集の例題です。
例題には問題を解くためのエッセンスが凝縮されているので、例題を何度も解いて完璧にすれば解ける問題は一気に広がります。
学校の定期試験だけでなく予備校の模試やセンター試験でも、教科書の例題の知識だけで解ける問題が出題されることは多いです。
例題を実践的ではないと見限らずに、何度も繰り返し解くことは数学の成績アップへの近道と言えるでしょう。
数学の問題の全体像を把握する
全体像とは、入試で出る問題の傾向のことです。
例えば、「実数の定義は?」みたいな問題は、大学受験では出ないのでその勉強をすることが直接得点に結びつくことはありません。
私は入試本番でどんな問題が出るのか知らなかったために、無駄な勉強をたくさんしていました。
入試本番で、例えば数学の二次関数の問題がどんなかんじで出るのかわかれば、それを解くためにはどんな問題を解けばいいのかわかってきます。
ということで、入試本番の問題がどういう形で出るのかを知ってしまえばいいと思い、授業で1つの単元を終えたところでその単元の何年分かのセンター過去問を解くことにしました。
数学の場合は大問ごとに1つの単元なので1年、2年のうちから解くことができますね。
まだ3年生じゃないからセンターは私には早いなんていうことはありません。
これで自分が受ける試験では、その単元のどの部分が出やすいかという傾向をつかめるようになり、数学に対する不安や無駄な苦手意識がなくなりました。
例えば二次関数の問題だと、頂点を求めるのは絶対に必要なスキルだということがわかります。
この勉強法で、高2の11月のセンター模試では7割強まで点数が伸びるようになりました。
間違えた時はどこで間違えたかを確認する
解けたと思った問題の答えが違うときがありますよね。
その時は必ず間違いの原因を突き止めましょう。
その原因が計算ミスかもしれない、問題文の読み間違いかもしれない、根本的な勘違いかもしれない、場合分けミスかもしれない、と原因は様々ですが、その原因を取り除けば正解に辿り着いていた、となるまで突き止めることが重要です。
先程の解けない問題を解く場合とは対照的に、この作業には時間をかけて大丈夫です。この作業をせずに「正しい」解法を覚える、ということをしてしまうと、解法は知っているが自分が犯しやすい誤りを知らないために、いくら解法を覚えても、誤りを犯し続けてしまう、ということが起きてしまいます。
どんな問題があるのかを知るのと共に自分を知ることも大事です。
また、最後まで解けなかったときも同様です。自分がどこまで解けて、そしてどこで詰まったのかを認識しましょう。
解答にここまで解けた、と書くのも復習するときに参考になっていいですね。
間違えた問題には日付と評価を書いて復習しやすくしよう
以上のことを実践して問題を解いたとします。
いつか必ず復習する時が来ます。
復習は新しい問題を解くわけではないので意味がないように感じてしまいがちですが、復習をしなければ折角勉強したことも忘れてしまうので、必ず復習しましょう。
このとき、解いた日付と評価(○×で解けたかどうか)を問題文の横に書いておくことで復習効率を上げることができます。
まず、日付があることで意識的に時間を空けて問題に取り組むことが出来るので定着率があがります。次に評価が書いてあることで間違えた問題だけを優先的に解くことができます。
副次的な効果としては、問題を解く度に日付と評価を書くことで達成感を得ることができます。また一度解けた問題でも何ヶ月か時間を空けて解けるかどうかを確認することで確実な学力を手に入れることができます。
問題演習で実践してみよう
さて、今までの話だけではイメージがわかないと思うので、実際に問題を見て、方針を立てていくところやってみましょう。
なお、ここからは知らないことも書かれていると思いますが心配しないで下さい。
学習を進めていけば必ず習得することばかりです。雰囲気だけ掴んでもらえればいいと思っています。
では、こんな問題を考えてみましょう。
問題(東京大学2006年度(文系)第4問)
\(θ\)は\(0°<θ<45°\)の範囲の角度を表す定数とする。
\(-1≦x≦1\)の範囲で、関数\(f(x)=3|x+1|+3|x-cos2θ|+3|x-1|\)が最小値を取るときの変数\(x\)の値を、\(cosθ\)で表せ。
問題の解説
問題の意味はわかりましたか?
まずは「時間を把握」することが大事なんでしたね?
\(θ\)は「定数」なので、とあるθがあったときに一つの関数が定義され、そのときに最小値があるだろうから、それを求めろという問題です。
逆に考えれば、\(θ\)が変われば関数も変わるので最小値もかわってしまうでしょう。
どうやら\(θ\)について「場合分け」が必要なようですね。
また、式の中には\(cos2θ\)があるのに、要求は「\(cosθ\)で表せ」となっています。
どこかのタイミングで「倍角の定理」を使って\(cosθ\)で式を書き直すことが必要のようです。
更に、絶対値は面倒なので外したいのですが、\(-1≦x≦1\)なので2つは簡単に外すことができます。
なんだ!ただの飾りだったんだ!ということですね。
残りの一つが厄介なので、それに手間を取られそうです。
後は、最小値の問題なんだから「微分」してやれば解答が求まるんじゃないか?というところでしょうか。
方針をまとめるとこんな感じになりそうです。
- \(θ\)の値を場合分けして、各々の最小値を見つけよう!
- \(cosθ\)で表すのを忘れないようにしよう!
- 絶対値は\(|x-cos2θ|\)が厄介。これには注意しよう。
- 最後に微分して最小値を求めよう!
最後に
いかがだったでしょうか。
数学の見通しは立ったでしょうか?
数学は解けなければつまらない科目ですが、少し解けるようになってくるとパズルのように楽しめる科目です。
しっかりと計画を立てて取り組み、数学を得点源にしてしまいましょう!