【伊勢物語をわかりやすく】その①「初冠」

はじめに

平安時代の歌物語である「伊勢物語」をご存じですか?

この記事では、大学受験の古文の問題として出題されがちな「伊勢物語」について、成立した背景と和歌を含めた本文の解説をしていきます。

キュンキュンする恋から、どろどろした大人の愛まで、さまざまな恋愛模様が魅力の「伊勢物語」を一緒に読み解いていきませんか。

伊勢物語についてのおおまかなご紹介

伊勢物語が成立したのは平安時代

平安時代の大きな特徴は遣唐使が廃止され、日本独自の文化が花開いたことです。

十二単や寝殿造りなど、いわゆる「和風」でイメージされる雅やかなものが形作られました

そんな平安時代に成立した伊勢物語は、和歌を主題にした歌物として、当時の日本文化を存分に表しています。

伊勢物語は作者不詳

在原業平とみられる男が多く登場するため、彼に近い人物が作者ではないかといわれています。

しかし、現在に至るまで真相は不明で、後世の人々が加筆したと考えられる部分もあります。 

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 「初冠」に登場する古典常識 

初冠

元服して初めて冠をつけることを初冠といいます。

元服は男子の成人の儀式で、女子の成人の儀式は裳着

垣間見

男性が女性を塀の隙間から覗き見することをいいます。

垣間見をきっかけに一目ぼれをすることで恋が進行していきました。

和歌のやりとり

この時代の人々にとって、和歌でのやりとりは大切なコミュニケーションでした。

特に恋愛において重要な役割を果たし、和歌の巧拙は重要なポイントであったといえます。

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伊勢物語「初冠」

今回は成人の儀式をしたばかりの若い「男」が地方で思いがけず美人姉妹に出会ってテンションが上がっちゃう『初冠』をご紹介します。

「初冠」の流れ

昔、ある男が元服して、縁のある春日という地方に鷹狩をしに行った。

その里にとても美しい姉妹が住んでいた。

男は覗き見てしまった。

田舎にいるとは思えないほど美しい人だったので、男は心が乱れてしまった。

田舎の人には失礼な言い草ですが、この当時は「都にあるもの=とても素晴らしいもの」という考え方でした。

そこで男は、着ていた狩衣の裾を切って歌を書いて送る

着ていた服を切って和歌を送るのが平安のスタンダード、というわけではありません。成人したての男の子が背伸びして「粋なこと」をしようとしている感じです。

その男はしのぶずりの狩衣を身に着けていた。

「しのぶずり」は模様の一種で、現代のマーブルやタイダイ柄のイメージに近いです。

 

(和歌)春日の若い紫でそめた狩衣のしのぶずりの乱れた模様のように あなたがたを恋しくしのぶ私の心の乱れは限りない

狩衣の裾にしたためた一句。柄とリンクしていてしゃれています。

(作者から男への一言)正直、男も自分でいい歌を贈れたと思ってるよね?

(姉妹→男への和歌)陸奥の国のしのぶずりの乱れ模様のように私の心は誰のせいで乱れはじめたのか 私のせいではないのに

「乱れたのは私のせいではない=あなたのせい」という意味を含んだ返歌です。

(作者によるまとめの一言)昔の人はこのように乱暴な風流をしたものである 

 

「乱暴な風流」は若さゆえに張り切って、強引に風流なことをしているという雰囲気です。

 おわりに

いかがでしたか?

この記事では「伊勢物語」全体について「初冠」の解説をしました。

雰囲気を掴みとって、古文の勉強に活かしてみてください!




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