はじめにー進学選択(進振り)って?
東大を受験する時、志望先は学部ではなく科類ですよね?
これは入学時点では学部は決定せず、大学に入って2年間(厳密には、入学から進学選択を行うまでの1年半)一般教養を学ぶ中で勉強したい学問を決めてほしいという東大の方針なのです。
高校3年生の時点では自分が何をしたいのか、将来何になりたいのか、まだ分からないと悩む学生が多いため、これは東大の売りでもあります。
では3年生から進学する学部はどのようにして決められるのでしょうか?
そこで登場するのが進学選択(旧進学振り分け)、通称進振り!
これは各科類に所属する学生を法学部から医学部までの10の学部に振り分ける制度です。
実は受験する科類によって、進振りの有利不利も大きく変わるんだとか。
そこで今回はこの進振りの仕組みについて現役東大生が解説します!
目次
東大の進振り制度の流れ(2年生以降)
進振りの手続きはやや複雑です。
手続きが始まるのは2年生の6月後半の第一段階志望登録から。
それまでに成績と照らし合わせて自分の進学したい学部を決めておかなければなりません。
その助けになるのが4月後半から5月半ばにかけて実施される学部ガイダンスです。
その学部にはどんな学科があるのか、どんな教授がいるのか、卒業論文やカリキュラムはどういう風なのかが説明されます。
そして第一段階の志望登録をむかえます。
第一段階では全体の7割の学生の進学先が決まります。
志望集計発表を随時確認し、行きたい学部の底点に自分の成績が達しているかどうかを判断して志望登録先を変更したりと調節します。
つまりそれに漏れてしまうと内定できない、つまり進学先が決まらないということになってしまい、最悪降年することになる可能性もあります(詳しくは後述)。
ですので、底点を調べてそこに自分が内定できそうかを常にリサーチし、時には進学先を変更することだって必要なのです。
もし第一段階で自分の志望する学部に進学が決定しなかった場合、第二段階に進みます。
学部によっては第二段階で志望動機書などを求めるところもあるので登録する学部のホームページを確認しておく必要があります。
第二段階でも進学が決まらなければ第三段階に進み、第三段階でもあぶれてしまうと、定員割れした学部に振り分けられる再志望を望むかどうかの選択が迫られます。
再志望に参加しなければ降年。
強制的に1年生に戻されてしまいます。
行きたい学部にどうしても進みたい。でも点数が全然足りない!という人は一年生からやり直しってことですね。
各学部の底点一覧・進学に必要な得点の目安
それでは、それぞれの学部には具体的に何点取れば行くことができるのでしょうか?
さっそく文系学部から見ていきましょう!
文一(第一段階/第二段階) | 文二(第一段階/第二段階) | 文三(第一段階/第二段階) | 理科(第一段階/第二段階) | |
---|---|---|---|---|
法学部 | 70.5/39.2(定員割れ) | 83.5/82.4 | 83.5/82.4 | 81.7/64.2 |
経済学部 | 76.4/68.9 | 73.6/68.9 | 80.0/文三規制 | 76.4/68.9 |
文学部(心理学専修) | 75.1/70.1 | 75.1/70.1 | 65.6/65.3 | 75.1/70.1 |
文学部(社会学専修) | 73.2/70.5 | 73.2/70.5 | 73.2/70.5 | 73.2/70.5 |
教育学部(基礎教育学コース) | 68.3/66.4 | 68.3/66.4 | 68.3/66.4 | 68.3/66.4 |
教育学部(教育実践・政策学コース)※2015年度 | 77.4/74.4(定員割れ) | 77.4/74.4(定員割れ) | 77.4/74.4(定員割れ) | 77.4/74.4(定員割れ) |
教養学部(総合社会科学分科) | 83.5/81.2 | 83.5/81.2 | 83.5/81.2 | 83.5/81.2 |
例年、底点に大きな変動はみられないのですが、これは2016年度の底点一覧ですので、あくまで目安として考えてください。
第一段階と第二段階の点数が表示してあります。
法学部は文一生の中で年々人気が下がっていて、底点も右肩下がりになっています。
しかし文二・文三からは高い得点が必要になります。
それと同じぐらい高得点がいるのが、後期教養学部の総合社会科学分科。
国際関係について学ぶところです。
世界情勢に興味がある人は入学後も努力しなければなりません。
この年はたまたま底点がどの科類からも同じですが、例年は文一・二の底点が文三の底点を10点前後下回ります。
難関の学部に進むにはやはり文一・二に進学するのが有利なようですね。
では理系学部はどうでしょうか?
理一(第一段階/第二段階) | 理二(第一段階/第二段階) | 理三(第一段階/第二段階) | 文科(第一段階/第二段階) | |
---|---|---|---|---|
教養学部(認知行動科学コース) | 83.3/82.8 | 83.3/82.8 | 83.3/82.8 | 87.3/71.6 |
工学部(航空宇宙工学科) | 80.8/77.5 | 0(定員割れ)/79.3 | 0(定員割れ)/79.3 | × |
工学部(応用化学科) | 72.7/67/6 | 81.9/76.3 | 81.9/76.3 | × |
理学部(物理学科) | 83.0/80.8 | 83.0/80.8 | 83.0/80.8 | 83.0/80.8 |
理学部(化学科)※2015年度 | 70.4/62.1(定員割れ) | 66.8/62.1(定員割れ) | 66.8/62.1(定員割れ) | 70.4/62.1(定員割れ) |
薬学部 | 79.6/78.3 | 82.1/78.3 | 79.6/78.3 | 82.1/× |
農学部(農業・資源経済学専修) | 70.0/66.7 | 70.0/66.7 | 70.0/66.7 | 77.5/75.5 |
医学部(医学科) | 92.4/× | 90.3/× | 73.0/60.9 | 92.4/× |
やはり目を引くのは医学部医学科ですね。
底点が90点を超えるのはこの学部だけです。
しかしそれでも理三からでは70点ちょっとでいけてしまうんです。
日本のトップ100人は違いますね……!
理系の学部には学科がたくさんあるため、一言で工学部と言っても、底点が高い人気学科もあれば、低い学科もあるのが特徴です。
また、理科各類の進学先の主な枠組みは、理一:工学部・理学部、理二:農学部・薬学部、理三:医学部、となっているので、例えば理二(三)から工学部への定員は理一のそれに比べて少ないといった傾向があり、その分底点も上がりやすくなります。
自分の点数と自分の興味関心分野を照らし合わせて、学科を選ぶことが進振りレースで勝つポイントですね。
東大で人気の進学先ってどの学部?
進振りにおいて、どこが人気かということとどこの底点が高いかということは紙一重です。
人気があるということは優秀な学生が多く志望することになるからです。
そこで底点の高い学部を取り上げていきたいと思います!
文系学部では法学部や経済学部など実学を学ぶ学部が一定の人気を誇っています。
またこの学部を卒業していれば箔がつくというのも、駒場生の進学モチベーションを上げるのでしょう。
逆に文学部など、思想や文化について学ぶ、実学から離れた学問をやる学科では底点が下がります。
「文学部に行って将来何になるの?」という漠然とした不安がこの傾向を強めるようですね。
先述したように、理系学部では理一では工学部・理学部、理二では農学部・薬学部、理三では医学部が受け皿となっていますが、実際、理一からはほとんどの人が工学部に進学します。
その工学部の中でも底点が高いのが、航空宇宙工学科や機械情報工学科。
THE工学部のイメージだからか、人気があります。
一方理学部では、物理学科が底点の高さを誇っています。
ここはたくさんのノーベル物理学賞受賞者の出身学科になっており、学科に進学してから求められる知識量も膨大……。
底点が高いということはなめた気持ちで志望するなということも意味しているのかもしれませんね。
薬学部はそもそもの枠が少なく限られた人数しか進学できないため底点は毎年80点前後になっています(理二の成績上位層が進学するというイメージ)。
医学部の底点については「言うまでもない」って感じです(笑)
東大のそれぞれの科類や学部について詳しく知りたい方は以下の記事からどうぞ!
東大理系の学部紹介
東大文系の学部紹介
最後に
いかがだったでしょうか?
東大の進振り制度について少しは理解できたのではないでしょうか。
東大生はたとえ入学できたとしても、2年間はどこの学部に進学するかわからないため「入学した後も受験勉強をしている」などといわれることもあります。
ですが、大学で自分の新たな興味・得意分野を発見することも多々あるため、2年間どこに進学できるかじっくり考えることができる点は東大の画期的なシステムと言えるでしょう。
東大生として言えることは、東大に入学して遊んでばかりいた結果、底点が低いところしか行けなくなったというようなことはして欲しくないということです。
ぜひ、進振りの制度を正しく理解した上で自分が本当に学びたい学部に進学できるように勉強しましょうね。